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.政治  投稿日:2020/11/11

東京一極集中問題の解決を【菅政権に問う】その3


西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表) 

【まとめ】

・東京一極集中問題、「首都機能移転」は進まず。

・企業の本社移転促進として「地方拠点強化税制」も結果出ず。

・内閣府のロジックは正しいが、「取組の方向性」では不十分。

東京一極集中問題、菅新首相ならやり遂げてくれると期待している。東京一極集中の解決こそ、令和時代の日本を考えることの第1歩であるので、令和おじさんに期待したい!ところである。

筆者は石破さんが地方創生大臣の時に、政策の推進にかかわった人間として思うところがあるので、その反省も込めて一極集中について考えていきたい。

■考えられる政策的方向性

一極集中のための、政策方向性は以下のようになる。

▲表 【出典】筆者作成

20世紀後半に叫ばれた「首都機能移転」に関連する政策は見る影もない。過去、国会決議までされたが、首都機能移転については、動きがなくなってしまった。2011年、国土交通省は夏に予定されている組織再編に伴い、国土計画局の担当部署「首都機能移転企画課」廃止を内定したほど。廃止後は別の部署が首都機能移転問題を取り扱うことになるが、その規模は大幅に縮小された。

省庁の機能分散、つまり省庁の部局の地方移転においては文化庁、消費者庁、総務省統計局などは一部地方移転が結実した。しかし、それ以外はなかなか進まない。次回にこのことは深く考えたい。

■企業の本社移転も進まず・・・

企業の本社移転促進として「地方拠点強化税制」を実施。具体的には泰一に「設備投資減税(オフィス減税)」といって、建物等の取得価額に対して、特別償却25%や税額控除が7%されるなどのメリットを得れるもの。第二に「雇用促進税制」といって、地方の本社機能で雇用者増加数1人あたり最大90万円などの支援を受けられるものを用意した。しかし、「設備投資減税(オフィス減税)」の件数は391件であった。これも結果が出なかった。

地方への定住促進は、内閣府も各自治体も様々な取り組みを行った「東京圏から地方への転出4万人増加」という目標を掲げたが、難しかったのが現実だ。2018年の検証時点で、23年連続で東京圏への転入超過の状況。直近の 2018年の転入超過数は日本人移動者で見て 13.6万人であった。転出超過にならないどころか逆の状況である。

■ロジックは正しい

とはいえ内閣府が考える「単に地方に仕事をつくるだけでなく、就職したいと思えるような、やりがいがあり、自分の関心とマッチする魅力あふれる働く場をつくることが重要である」という問題認識は正しい。それをどう作るか、が問題なのだ。

▲図 【出典】内閣府資料「東京一極集中に影響を及ぼす可能性のある要因例」

基本的なロジックは上記のようなものであり、論理的である。

問題は、この赤字の「取組の方向性」では不十分であることだ。こうした難易度の高い問題に対応するにはよほどの構造改革しかない。そもそも企業やビジネスが都心に集まってくる現状、集積のメリットがあることを考えるとよほど大々的な政策を打ち出さないとこの構造を変えられない。

新たな対策を打っていただきたい。菅首相に期待したい。

(続く。同シリーズ

トップ写真:東京 ラッシュ時間帯の駅 出典:Wikimedia Commons; Chris 73




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