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.政治  投稿日:2020/9/29

東京一極集中問題の解決を【菅政権に問う】 その1


西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)

【まとめ】

・日本はwith コロナの新しい国づくりが期待されている。

・東京は人口、移動の面で「ストレスフル社会」となっている。

・震災や天災のリスクに弱い半面、大きな企業は東京に集中。

 

新型コロナウイルスの状況も変化し、人が街に戻ってきた。飲食店も再開しつつあり、だんだんと都市機能が復活してきた。それに伴い、混雑も増えている。ちょっとした少しの混雑に違和感を感じる人も多いだろう。

こうした中、東京一極集中是正のため、菅首相が総務相に実態調査と対策を指示したそうだ(参考記事)。新型コロナウイルスを契機に総裁選の政策テーマにもなり、ようやく政府が本格的に取り組んでいきそうだ。withコロナの新しい日本の国づくりが始まりそうだ。期待しかない。

これまで東京の一極集中の弊害を公言し、内閣府の地方創生において、行政機関の地方移転業務にかかわっていたものとして、菅政権の方向性を強く支持したい。とはいえ、その行く手を阻む問題も数多く存在する。

 

東京はストレスフル社会

首都圏は人口も日本全国の30%を占めている。都心はマンションがきらめく一方、景観は、あまりに目まぐるしい変化に、心理的安らぎも感じることはできない。地方出張から帰るたびに、東京の混雑には辟易する。故郷である東京の変貌が、マンションの建設により変わっていく。高層マンションが立ち並び、景観が一変する。

他方、地方は人口が流失し、高齢化・少子化は一層深刻で、駅前の中心市街地を歩く人も少なく、沈滞ムードが広がる。地方都市の衰退を目の当たりにするが、若者に聞けば「仕事があれば残りたい」というケースも多い。

まずはその認識であるが、東京をはじめとする東京首都圏は「ストレスフル社会」であることは説明する前でもないだろう。東京は過剰である。特徴を数字で現状を見てみよう。

▲表 【出典】筆者作成

まずは、移動面。主要31区間ピーク時の平均の混雑率は163%である。この意味するところは肩が触れ合う程度で、新聞は楽に読めるレベル(150%)と体が触れ合うが、新聞は読めるレベル(180%)の間くらいになる。

ただし、これは平均であって、地下鉄東西線では、体が触れ合い、相当な圧迫感があるが、週刊誌なら何とか読めるレベル(199%)という状況である。極度の緊張状態の通勤を迫られている(現在は新型コロナで改善しているだろうが)。通勤にかかる住民のストレス・健康負担は相当のモノである。次に、渋滞レベル(交通渋滞で余分に要した運転時間)は、41%と交通渋滞がなくスムーズに進めば時間が効率化できる。

▲写真 JR中野駅(イメージ) 出典:Quentin

政治経済で見ると、スイス・リー社ランキング「洪水・嵐・高潮・地震・津波により影響を受ける可能性のある人々が多い都市圏(東京・横浜)」では世界1「荒川右岸低地氾濫の場合、浸水世帯数約51万世帯、死者約2,000人」とここでも書いたが、震災や天災のリスクに非常に弱い。なのに、政治経済社会文化の中心でいるのだ。

経済面では、主要都市圏のGDPが各国全体のGDPに占める割合はなんと33.1%。通信放送業企業数も数多く、ほぼ多くの大手メディアの本社は東京にある。社会文化の中心である。100人以上の事業所の所在地(東京圏)が46.9%であるように企業も多く立地し、雇用も多い。公務員数にしても(東京都)約 35 万人と国家・地方公務員数が非常に多い。

企業経営で見ると、フォーチュングローバル500都市別グローバル企業本社所在数占有率(東京都)は73.1%。大企業が多いため、そうすると法人税は東京に集中することになる。資本金100億円以上企業数比率も50.8%と大きな企業は東京に集中している。

また、「東京圏在住者の約半数が、地方圏での暮らしに関心あり」という内閣府の調査はあるが、細かく見ていくとそんなに簡単に地方移住ができるほど甘くはない(詳細は次回以降で解説する)。実際どのくらいだろうか。そもそも東京に今後も「住みたい」比率は78%となっており、年々増加している。都市の魅力、いろいろな経験ができ、多様な出会いがあり、プライバシーが確保されるなどなど、その魅力の強さは強力である。

暮らしを見てみよう。一人当たり県民所得では534万円と国内でも圧倒的である。全国321万円と比較しても高い。住民当たりの公園面積と4.29㎡と憩いの場は少ない。安らぎの場が確保できない。住宅面積100㎡以上の割合も15.2%と少ない。人口密度は6,247人/kと高く、詰込み状態。自分の家は狭く、外に出ても街がごみごみしているし、狭いというところだ。

 

新しい時代の国づくりを

このように問題は明らかなのだだ。あとはこの問題を解決するために、やるか、やらないか。

菅新総理が進める新しい時代の国づくりにとって、東京一極集中の解消は大事なテーマである。東京都市圏のみ栄えるというのは、日本社会にとってかなりバランスが悪い。明治時代以降、高度成長で一気に進んだ流れを逆転させ、都市機能を分散させ、東京を富や権力や影響力の集中爆発から「解放」することができるはずだ。

これから数回に分けて政策分析・提言を行っていきたい。

(続く)

トップ写真:東京 出典:Pixabay; tristanlai1220


この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者

NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、ターンアラウンド研究所共同代表・人財育成コンサルタント、事業創造大学院大学国際公共政策研究所研究員・ディレクターなど。


慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、組織改革、人材育成コンサルティング、政策分析、メディア企画、ソーシャル・イノベーション活動を進めている。


専門は、公共政策と社会心理。近年は、中国の先端技術、世界のスマートシティ、人工知能などテクノロジーと社会への影響、個人情報保護と民主主義の在り方、企業の利益相反、健康医療・福祉政策などをテーマに研究や執筆を進めている。

西村健

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