[宮家邦彦]<政治指導者の外遊のラッシュ>GWにならないと主要閣僚が外遊できない変な国・日本[外交・安保カレンダー(2014年4月28日-5月4日)]
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
世の中では既にゴールデンウイークが始まっている。日本の政治指導者たちにとってこの時期は外遊のラッシュ、一種の書入れ時だ。安倍首相は29日から5月8日まで欧州歴訪、仏、独、英、スペイン、ベルギー、ポルトガルの6か国を訪問する。
同時期に岸田外相はデンマーク、カメルーン、フランスを訪問。また、小野寺防衛相は28日からオーストラリア、マレーシアを、連休明けにはイタリアと南スーダン、ジブチの3カ国を歴訪する予定だという。皆様、ご苦労様なことだ。
更に、5月4-6日には自民党の高村副総裁が超党派の日中友好議員連盟代表団を率いて訪中するそうだ。それにしても、GWにならないと主要閣僚が外遊できないなんて実に変な国ではないか。どこかが間違っているとしか思えない。
先週のオバマ訪日の際の共同声明の内容には正直驚いた。米国が安保条約第五条の尖閣適用を明記したのは、安全保障面での日本側の取組が真摯で信頼に足るものと考えたからだろう。同時に、最近の中国の非妥協的な態度も理由の一つだろう。
30日にはイラクで国民議会の選挙がある。2004年から数えて3回目の総選挙であり、マリキ首相が選挙後も政権を維持できるかが焦点だ。最近マリキは独裁化が進んでいるとの批判も強いが、イラクにはマリキ以外に政治家がいないのだろうか。
今週、最も驚いたのは米国とフィリピンが新たな軍事協定を結んだことだ。これで米海軍はフィリピンのスービック基地を再び使えるようになるらしい。それにしても、フィリピンという国は一体どうなっているのか。これまでの経緯を見てみよう。
そもそも1992年に米海軍をスービックから追い出し、現在の南シナ海危機を作り出したのはフィリピン上院だった。その直後に中国は領海法を制定し、南シナ海、東シナ海の島々を自国領だと宣言した。中国は米国とフィリピンの敵失を待っていたのだ。
振り返ってみればフィリピンの責任は重い。あれから22年経って、フィリピンはようやくその過ちに気付いたのだろう。いずれスービックでは米海軍艦船の巡回派遣と呼ばれる事実上の常駐が始まる。
そうなれば、南シナ海を中国艦船が我が物顔で航行する状況が相当程度改善するかもしれない。未だ手遅れではないことを祈るしかないだろう。
今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
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