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.国際  投稿日:2021/1/4

崖っ淵に立つ日本の決断


古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)

「古森義久の内外透視」

【まとめ】

・世界の天下大動乱は、中国共産党政権に問題の本質がある。

・中国共産党政権は数十年間、自由民主主義世界への敵対性をもちつづける。

・中国へ巨額の政府開発援助供与は日本外交にとって歴史的失態。

令和3年、2021年の冒頭に立って、わが日本を国際的にみると、まさにこの国は崖っ淵に立ったようにみえる。

その日本を取り巻くいまの世界を見渡せば、古い表現だが、まさに天下大動乱である。

アメリカと中国との衝突が全世界を揺さぶる。軍事や経済のパワーという点で世界第一の大国と第二の大国とが正面から対決するのだ。

しかもその対決に新型コロナウイルスのアメリカはじめ全世界での大感染という歴史的な異変がからみ、米中激突をさらにエスカレートさせる。

その激突の巨大なうねりは全世界の既成の秩序を根幹から変える地殻変動のようである。その地殻変動は日本にいったいなにを意味するのか。

そのあたりを気鋭のジャーナリストの門田隆将氏と多角的に意見を交わして、一冊の本にまとめた。PHP研究所刊『崖っ淵に立つ日本の決断』という書である。

わが日本がいま現在、どんな国際情勢の真っただ中にあり、どんな脅威に襲われ、どんな課題に迫られているのか。こうした諸点の解説のために、拙著の内容の一部を紹介させていただくとしよう。

この書の対談の相手の門田氏は言うまでもなくベストセラーの『疫病2020(産経新聞出版刊)などの著者として知られる世界や日本についての傑出した考察者である。

さてこの書の主題とした日本のおかれた国際環境とはなんなのか。

日本にとってもっとも巨大な影響を及ぼすアメリカと中国という二つの国が激突する。その谷間での日本の身の処し方には国運がかかっている。激しく対立するアメリカと中国のどちらに身を寄せるのか、という日本の課題はいまや従来の「等距離」とか「橋渡し」などという定型の外交パターンでは乗り切れない

それでなくても日本には中国の軍事脅威が迫ってきた。日本の固有の領土の尖閣諸島を中国は軍事力を使ってでも奪取しようと、連日のように攻勢をかけてくる。尖閣諸島に対する日本の主権や施政権を骨抜きにする中国の軍事攻勢が目前に迫ったのである。この事態だけでも日本の国難だといえる。

本書では門田氏とともに、こうした世界の天下大動乱、日本の国難を引き起こした張本人は中華人民共和国の共産党政権であることを多数の実例をあげて、立証したつもりである。むろんアメリカや日本がその中国のいまの国際秩序を侵し、崩そうとする動きを誘発するような原因をつくったという事例も多々あった。

だが問題の核心はやはり中国共産党政権の本質だといえよう。国内で弾圧し、国際規範を犯し、軍事力で脅し、経済力で圧する。既成の世界の秩序を覆そうとする。

中国の自由民主主義世界へのこうした敵対性を私が初めて実感したのは1997年夏だった。そのとき駐在していたアメリカのワシントンから中国への返還が決まった香港に出かけて、その歴史的な返還のドラマを取材して、報道したのだった。

その時点で私はすでに20数年の国際報道の経験を積んでいたが、中華圏での取材活動は初めてだった。香港での3ヵ月ほど、イギリスから中国への香港返還に関する新聞記事は無数に書いたが、総括としての長い雑誌論文として「日中友好という幻想」という論考をまとめた。

当時は日本側でも中国に関してはとにかく「友好」という言葉があふれていた。中国政府への批判的な言辞は日本では官民ともに皆無に近かった。

だが私は香港での多数の人たちとの意思疎通で中国のあり方に日本やアメリカへの敵対性の本質を感知せざるを得なかったのだ。

ちなみに「日中友好という幻想」という論文は当時の台湾総統だった李登輝氏の目にとまり、「このテーマについて私も語りたいので台北にきませんか」と招きを受けた。もちろん私はそれに応じ、中華圏での取材活動を深めていった。

▲写真 蔡英文総統(真ん中)と李登輝氏(右) 出典:Flickr; 總統府

その翌年の1998年には産経新聞の北京駐在の初代中国総局長となったのだ。

それ以来の20数年、私は中国という主題と本格的に取り組むこととなった。中国の対外姿勢にとくに関心を払い、米中関係、日中関係の動きを追った。その体験での最大の要素も香港で感じた中国共産党政権が固有の本質とする自由民主主義世界への敵対性だった。                    

その敵対性を指摘する私の報道や論評は日本では「反中」というレッテルと貼られることもあった。アメリカの首都ワシントンでも関与政策の名の下での対中融和の流れにそぐわないこともあった。

だがアメリカでも日本でもその後、中国に対する態度は硬化していった。中国共産党政権自身の内外での敵対的な言動が自然な反発を生んでいったのだ。中国政権の外部世界への敵対性という現実が重みを発揮したといえよう。

だからいまの米中激突、そして中国vs民主主義世界の対立という現状は私には自分自身の早い時期の感知が不正確ではなかったことへのひそかな満足を与えてくれるのである。

日中関係についてはなおさら、そんな自己満足を覚えてしまうことを自画自賛の愚を承知のうえで、述べておこう。

日本の戦後の対中政策は日本外交でも最大級の歴史的な失態だった。巨額の政府開発援助(ODA)を中国に供与することで、日本を敵視する軍事独裁大国の中国の現出にみずから力を貸したのだった。日本国民の血税である約4兆円ものその中国への援助は中国の軍事力増強を助け、民主主義の弾圧をも支える結果となった。日本側が当初に期待した中国側の対日友好の促進にはなんの役にも立たなかった。

私はこのあたりの日本の対中援助の失敗を『ODA幻想』(海竜社)という本にまとめた。

中国に対する私のこうした一貫した認識は現代日本のジャーナリズムの先頭を走る門田氏によっても本書全体を通じて認知されたことは望外の喜びだった。

こうした失態をも経てきたわが日本がいまや最大の脅威、最大の懸念の根源となる中国にどう対応すべきか、その日本のいまの立場こそ「崖っ淵に立つ日本の決断」なのである。 

▲図 「崖っ淵に立つ日本の決断」古森義久/門田隆将 著 PHP研究所刊

トップ写真:習近平主席 出典:ロシア大統領府




この記事を書いた人
古森義久ジャーナリスト

産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授。1963年慶應大学卒、ワシントン大学留学、毎日新聞社会部、政治部、ベトナム、ワシントン両特派員、米国カーネギー国際平和財団上級研究員、産経新聞中国総局長、ワシントン支局長などを歴任。ベトナム報道でボーン国際記者賞、ライシャワー核持込発言報道で日本新聞協会賞、日米関係など報道で日本記者クラブ賞、著書「ベトナム報道1300日」で講談社ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。著書は「ODA幻想」「韓国の奈落」「米中激突と日本の針路」「新型コロナウイルスが世界を滅ぼす」など多数。

古森義久

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