「給食費無償化を実現したい」千葉県議関政幸氏
安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)
Japan In-depth 編集部(岡崎智洋)
【まとめ】
・千葉県知事選自民党推薦候補、関政幸県議会議員。千葉を良くしたい、と動機語る。
・熊谷候補との違いは、弁護士として「法の扱いによる実現力」だとした。
・給食費の無償化を実現し、子育て支援策や、地産地消を推進したい。
注目の千葉県知事選挙、3月4日告示、21日投開票だ。先日の熊谷俊人候補のインタビューに続き、自民党推薦の関政幸候補(県議会議員3期目)に話を聞いた。
■ 県知事選出馬の動機
はじめに関氏に、県知事選への出馬を決意した理由を聞いた。
関氏は「政治的な後押しもあったが、千葉県を愛しているから良くしていきたいというのが一番の理由だ。やって後悔するより、やらないで後悔したほうが後に残る。何事にも挑戦するべきだと考え、飛び込んだ」とその決意を述べた。
また、「千葉県議を10年やってきて、千葉県の様々な魅力が見えてきた。海もあり山もあり、田園風景も都市部もあり、農林水産も盛ん、さらに成田空港もある。千葉県にはいろいろな意味で可能性がある。もっと県が54市町村とタッグを組んでいけば、千葉県を今よりもっと素晴らしい県にしていくことができる。そういう思いが強かった」と出馬の動機を語った。
■ 千葉県の課題
次に千葉県の課題について聞いた。
関氏は「弁護士としての経験から、千葉県のルール作りに携わりながら、森田健作県知事の行政を見てきた。役所には優秀な人間が揃っていて、決められた仕事はきっちりとこなす。しかし行政の縦割りを超えて、法の規律がない場所にも踏み込んで出来ることはなかったか。もっとやれることはなかったのか(と、感じた)。職員の方々にはもっと挑戦してほしい」と述べた。
また危機管理の面では、「千葉県は今まで大きな災害の被害に遭わず、恵まれてきた。机上で災害対策はしているが、有事の際には走りながら判断をしていかなければならない。一昨年前の台風では、対応がスムーズに進まず、反省点を作ってしまった。有事の際にもっとサポートをする策が必要だ」と述べた。
また新型コロナウイルス対策についても、「昨年4月に緊急事態宣言が出た時、病院のベッドをどのように増やしていくのかという議論になったが、もっと早くから対策を練ることができたのではないかと思っている。一昨年前の台風被害から学び、この先新しい感染症が出てきた時に活かしていくべきだ」と述べた。
これからも新型コロナウイルスには様々な対策が必要になるが、これまでどのような対策を取ってきたか聞いた。
関氏は「第一波の時には、二~三歩先を見て、病床の確保と併行して、感染爆発に備えた臨時の医療施設の準備を進めた。結果として感染拡大が落ち着いたので、開設に至らなかったが、そこから修正し、現在の第三波での対策に繋がっている(2月5日、県がんセンター旧病棟が臨時の医療施設として開設)」と述べた。
一方で「PCR検査の拡充が進んでいないのではないかと意見も多かった。財源の問題があるため、国との連携をもっと進めていく必要がある。臨時の医療施設の協力要請もそうだが、もっと県が強く情報を発信していき、県民が納得した状態で(国に)協力を仰ぐことが必要だ」と述べた。
次にこれからの防災対策、再生可能エネルギーについて関氏自身の意見を聞いた。
関氏は「防災対策については一昨年の台風から反省点を見つけ、見直していくべきだ。当時私は自民党の議員として将来の災害対策について89の意見を知事に申し入れ、実行してもらっている」と述べた。
「例えばヘリをどのように飛ばすのかや、ドローンの活用、避難所での女性の過ごしやすい環境づくり、グローバル化が進んでいるため外国人の対応についてなどだ。時代に合わせた新しいものをたくさん取り入れていくことが必要になる」
再生可能エネルギーについて関氏は「千葉県もゼロカーボンを表明し、向かっていきたい。県は太陽光もそうだが、銚子沖など洋上風力発電も可能性がある。それを進めることが地域経済の活性化にも繋がっていく。再生可能エネルギーを進めながら新しい産業やビジネスが生まれる仕組みを作っていきたい」と述べた。
■ 成田空港
次に成田空港を中心にした経済施策について聞いた。
関氏は「まさに今、第三滑走路も進めているし、成田は貨物関係が強いため、物流に関してはこれからも伸びしろがある。もともと成田空港は首都圏に近く、千葉県はこれから道路ネットワークも構築していくため物流のニーズはかなり大きい」と話し、「ICT(情報通信技術)やAI(人工知能)などの新しい産業も、成田空港は呼び込んでいける。そういう意味で成田空港は千葉県の産業の原動力であり、市町村もそれを期待しているはずだ。しっかりと市町村と連携していくことが必要だ」と述べた。
■ 熊谷候補との対立軸
関候補は今回の県知事選に自民党推薦で挑む。現千葉市長であり無所属で立候補している熊谷俊人氏との対立軸について聞いた。
関氏は「法の扱いによる実現力」とした。行政マンは法の中で仕事をしているため、法から外れることは躊躇してしまう。関氏は「弁護士としての経験から自分で法を解釈し、場合によっては法を作ることも出来る。それが私にしかできない強みだ」と述べた。
さらに熊谷氏が言っている千葉市での政策を(他の市町村に)横展開していく、との考え方に対しては、「千葉市が先行してやっていたことはあるかもしれないが、そのやり方が他の53市町村にあてはまるとは限らない。地域性があるし、それぞれのニーズを理解して方策を考えていくべきだ」と述べた。
▲写真 関政幸候補 出典:Japan In-depth編集部
■ 「与野党対決」との見方について
現千葉市長の熊谷俊人候補は実質立憲民主党の県議団が「支持」という形で応援している。これをもって、関候補との熊谷候補与野党対決とメディアは報じている。これについて聞いた。
関氏は、「どう評価するのは県民が決めること。私がどうこういえることではない。支援するメンバーがそれぞれ分かれているのは事実。それを与野党対決の構造とみるのはいたしかたない」と述べた。
また「私は自民党の推薦を得ているが、自民党以外の県議会議員の先生方との付き合いもある。(他党の人達とも)協働してやっていける。それを自民党対(野党)、と見られるなら仕方ない。今コロナ禍だからこそ、しっかり(自分のキャリアを)生かし、千葉県に必要な支援を国と連携してやるべきだ」と述べた。
また、熊谷候補が立憲民主党の推薦は受けていないが、同党の支持を得ていることに対し、「正直(熊谷候補は)元々民主党の市議会議員で、民主党の国会議員の支援を得て、市長に当選した。その後、無所属としてだが、しっかり連携して、こういうときに都合良く隠してというのは失礼なんじゃないか。自分を支えてくれた国会議員の先生、県議、市町村議の先生がいるわけで。今の状況からすると、それをおかしいなと感じる人は多いんじゃないかなぁ」と述べた(1月29日時点)。
■ 給食費の無償化
関氏は、給食費の無償化に並々ならぬ情熱を持っている。子育て支援策としてもそうだが、地産地消の推進を合わせていきたい、とその熱い思いを述べた。
「千葉県には美味しい食材があふれている。子供たちに千葉の恵みを堪能してもらい、千葉についてより詳しく知ってほしい。そして将来の消費者、後継者に繋げていきたい」と語った。さらに地産地消は、地場産業を発展させるとともに、学校の先生の給食費徴収の事務的負担を減らすことに繋がる、と述べた。
「給食費の無償化は複合的な政策を可能にする力がある。実現のために国との連携を深めたい」と強調した。
■ インタビューを終えて
熊谷候補と関候補の対立軸は何か、それぞれに聞いてみたが、熊谷氏は「実行力」、関氏は「法の扱いによる実現力」と述べた。
政策面では二人に大きな違いは見られなかった。千葉市長として3期目、知名度を誇る熊谷候補と、県議として同じく3期目の関候補。大学も一緒、年齢もほぼ同じ40代前半だ。ただ、熊谷候補は首長として行政を、関候補は県議として議会での活動を行ってきた点が異なる。
それぞれ与野党の支援を得て選挙戦を行っていることは事実であるが、それをもって候補者を選ぶのではなく、それぞれの政策を良く聞き、実績をよく見て判断するべきであろう。過去の県知事選は約31%とかなり低い。千葉県をより災害に強く、より将来性のある、魅力的な県にする為に、次のリーダーを誰にするか。有権者の覚悟が問われている。
(インタビューは2021年1月29日に実施)
トップ写真:関政幸候補 ⒸJapan In-depth編集部