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.政治  投稿日:2021/3/9

「いざという時、県民の命を守る」千葉県知事選熊谷俊人候補


安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

【まとめ】

・千葉県知事選熊谷俊人候補が我孫子駅前で演説。

・無所属水野ゆうき県議が応援演説、立憲民主党国政選挙候補予定者登場で現場が混乱。

・熊谷候補「県民党」を打ち出すも「今ひとつわかりにくい」との声も。

 

3月7日選挙サンデーの午後に我孫子入りした関まさゆき候補に続き、翌日8日(月)の昼前という誰がどう考えても、もっとも人が集まらない時間帯に熊谷俊人候補が我孫子駅前にて演説した。

昨日、日曜日の午後にも関わらず、関候補の演説会にはあまり聴衆が集まらなかったので、いくら熊谷氏がSNSで人気でも月曜の午前、しかも雨の中、人は集まらないだろう、と思ったら、実際我孫子駅前は人の山で、最終的には100人近く集まった。

 野党色を払しょくできるか

この日は完全無所属を標ぼうする千葉県議会議員・水野ゆうき氏との街頭演説ということで我孫子市の水野氏支持者らが大勢集まった。

立憲民主党が熊谷氏を支持しているとの報道も多いが、熊谷氏自身は、政党色を打ち出していない。「無所属」が看板である水野氏と熊谷氏のポスターは、水野氏が熊谷氏支持を表明した早い段階から我孫子市内に貼られている。

他の市で、熊谷氏と立憲民主党の野田佳彦元総理の二連ポスターが貼られていたりするのとは一線を画している。なにせ、水野氏は我孫子市では立憲民主党が支援している候補と過去激しい選挙戦を繰り広げ、勝利してきているのだ。

したがって、今日の我孫子市での熊谷・水野両氏の街頭演説は、立憲民主党の色は全く出ないだろうと思っていた。ところが・・・

我孫子駅には自民党・桜田義孝衆議院議員の対立候補になるであろう立憲民主党の衆議院議員立候補予定者がすでに聴衆に挨拶をしていた。「県知事選候補者ではないのでなぜ?」といぶかる我孫子市民もいた。

そうこうしているうちに熊谷氏と水野氏を乗せたガラス張り街宣車が登場。演説会が開始かと思いきや、その立憲民主党の立候補予定者がマイクを握り、演説を始めた。「頑張れー」という声もあったが、もともと無所属の水野氏の応援演説を聞きに来た市民も多く、ヤジが飛ぶ一場面もあった。

水野氏は、「誤解がある。熊谷氏は県民党である。それぞれの勢力がそれぞれで支援している。政党政治ではない。特定政党におもねるような政治を熊谷氏はしないことを約束する」と訴え、無所属や維新などの我孫子市議会議員を紹介した。無所属で選挙に勝ち上がってきた意地を演説で見せつけた格好だ。

実は、熊谷氏の立憲色を気にする有権者は少なくない。そのために投票を躊躇しているという声はSNS上で見かける。

「県民党」を標榜する熊谷氏ももちろんそれは気にしているようだ。熊谷氏は一貫して「与野党対立構造ではない」と話しているが、有権者には今ひとつわかりにくいのかも知れない。

▲写真 我孫子駅前に集まった市民ら Ⓒ武山雅樹

 「遠い県政・知事を身近に」対話主義を強調

熊谷氏は千葉市長時代に300回以上も市民と対話を重ねたことを強調した。歴代の市長が訪れたこともないような地域にも足を運び、市民の知恵やアイディアを活用してきたことなど、千葉市での取り組みを紹介。

また、選挙の時だけでなく、自ら我孫子市など東葛北部に足を運ぶことで地域の課題を解決するとフットワークの軽さをアピール。その場にいた市民に話を聞いたら、「森田知事は選挙ですら見たことがない」と話していた。現場に足を運ぶというのは前日の関候補も主張していたが、熊谷候補は、「県民目線の千葉県政をつくっていく、開かれた県政をつくっていくことが大切」と述べた。

実際に我孫子市に足を運んできた熊谷候補の話はそれなりに説得力があった。しかし、「県知事になったら公務があるし、実際県内54市町村をまわれるものなの?」と疑問を口にしていた人もいたことにはいたが。

■ 今、千葉県政に求められているのは危機管理

熊谷候補の政策チラシには「防災県」のことが書かれている。演説の中でも新型コロナウイルス感染症や災害時の対応は「知事の危機管理が重要だ」と話した。熊谷氏は阪神淡路大震災の被災者も交えて、地方政治に関わったきっかけについて話した。

森田知事が台風の際に、自宅を見に行ったことは有名な話である。「千葉県民として防災対策はしっかり進めていただきたい」との声も市民の間から聞こえた。

■ 森田県政を変える

コロナ対策について熊谷候補は、「千葉県の病床使用率がなかなか下がらないのはなぜか?」というマスコミの問いに対し、森田知事が「わからない、私が聞きたい」と答えたというエピソードを紹介。千葉県は介護施設や医療機関のクラスターが他県より多いということだ。

確かに、千葉県の感染者数はなかなか減らないということに対して筆者も疑問に思っていた。熊谷氏は、「持病を持っている人が多く、なかなか退院できないために病床があかない」と説明した。そのうえで、大きなクラスターになる前に、介護施設などで定期的にPCR検査をしていく必要性を強調した。

「一人のリーダーで変えることはできないが、多くの人がリーダーと同じ方向を向けば変えることができる」と語り、森田県政の継承を掲げている関候補との違いをアピールした。

最後に児童虐待の問題。一時保護所の環境改善や児童福祉士や児童心理司など、働く人を充実させていくことが大事だとした。千葉県には児童虐待案件が相次いで発生している。一時保護所で過ごす時間が長くなっている状況を変えるために、出口の拡充をしていくことを訴え、演説会は終了した。

演説後、選挙カーへ乗り込む熊谷候補に意気込みを聞いた。

「いざというときにしっかりと県民の命と暮らしを守る県にしたい」

演説を聞いていた市民の中には、「話がわかりやすかった」、「森田さんを変えてもらわないといけない」と話す人がいた一方、「県民党がなんなのかわからない」という声もあった。いずれにしても、重要なことは、政党政治の枠組みだけで県知事選をみるのではなく、各候補の政策をじっくりと比較することだろう。国会議員を選ぶのではなく、あくまでも自分たちの住む県のリーダーを選ぶのだから。

トップ写真:演説する熊谷俊人候補と水野ゆうき県議 Ⓒ武山雅樹




この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。

1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。

1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。

2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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