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.国際  投稿日:2021/2/19

米副報道官、記者脅迫で解任


古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)

「古森義久の内外透視」

【まとめ】

・バイデン政権のダクロ副報道官がセクハラ発言により解任。

・自分の女性関係を取材していた他メディアの女性記者を脅した。

・バイデン政権にとり初めて重要な立場の人物のスキャンダル。

 

アメリカ・バイデン大統領の特別補佐官の副報道官が女性記者に対してセクハラとみなされる脅しやののしりの言動をとったことを理由に事実上の解任となった。バイデン政権中枢部での初めてのスキャンダルとして波紋を広げている。

ホワイトハウスのサキ大統領報道官は2月16日の記者会見で副報道官のT・J・ダクロ氏の動向について「彼はもうバイデン政権のホワイトハウスには雇用されていない。そのことが彼の言動についてのホワイトハウス側の判断を物語る」と述べた。

ダクロ副報道官はワシントンを拠点とする政治新聞の「ポリティコ」の女性記者タラ・パルメリ氏に対して「お前をめちゃめちゃにしてやるぞ」などと脅したとして文化総合月刊雑誌の「バニティフェア」の2月12日発行の最新号で報道された。

▲写真 ポリティコのタラ・パルメリ記者 2013年 出典:Gary Gershoff / Getty Images for Housing Works

その後はポリティコを含む他のニュースメディアにより、同じ内容が報道された。

同報道によると、ダクロ氏はホワイトハウスを担当する他の女性記者と愛人関係にあり、癒着の疑惑があることが明らかとなって、パルメリ記者がそのことを追跡報道する目的でダクロ氏に取材のため接触して質問をすると、同氏はそんな記事は書くなと脅しをかけ、女性蔑視の下品で暴力的なセクハラ発言を繰り返したという。

ホワイトハウスはバニティフェアの記事が出た12日にダクロ氏に対して懲罰のための1週間の停職という措置を発表した。だがこの措置が寛容すぎるという批判が多方面から起きていた。

翌13日にはダクロ氏自身もセクハラの言動をとったことを認め、公開の場で謝罪を述べた。同氏は同時に暫定的に職務を辞任する意向を表明した。

▲写真 ホワイトハウス報道官 ジェン・サキ氏 出典:Getty Images/Drew Angerer

その後、ダクロ氏の確実な職務の状態が不明のまま同氏のセクハラ発言の報道は一気に多くのメディアで伝えられた。サキ大統領報道官の16日の言明はこの不確実な状況に終止符を打ち、ダクロ氏がバイデン政権から正式に離れたことを明確にした。

しかしサキ報道官は同時に「バイデン大統領が就任直後にホワイトハウスなどのスタッフたちに対して『必ずお互いに尊敬や丁寧な気持ちを保つという態度で接することを求め、もしその要請に応じない事例があればその当事者を即時に解任する』との通達を出したことを想起してほしい」と言明した。

サキ報道官のこの言明はダクロ副報道官がその大統領の通達に違反して、実際の解任という措置を受けたことを意味するとみられる。

ダクロ氏はいま32歳の若手だが、ジャーナリスト経験のある民主党政治活動家として2020年の大統領選ではバイデン陣営に加わり、広報や宣伝を担当して高い評価を受けたという。その結果、バイデン政権では1月20日の出発の時点から大統領の特別補佐官という地位を与えられ、同時にサキ報道官を助ける副報道官にも任命されていた。

ダクロ氏はメディアではNBSテレビやMSNBCテレビに所属して、政治報道やその企画、調整などにあたってきた。

この騒ぎはバイデン政権にとって初めての大統領特別補佐官という枢要な立場の人物のスキャンダルということとなる。

トップ写真:バイデン米大統領 2021年2月10日 出典:Alex Wong / Getty Images




この記事を書いた人
古森義久ジャーナリスト

産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授。1963年慶應大学卒、ワシントン大学留学、毎日新聞社会部、政治部、ベトナム、ワシントン両特派員、米国カーネギー国際平和財団上級研究員、産経新聞中国総局長、ワシントン支局長などを歴任。ベトナム報道でボーン国際記者賞、ライシャワー核持込発言報道で日本新聞協会賞、日米関係など報道で日本記者クラブ賞、著書「ベトナム報道1300日」で講談社ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。著書は「ODA幻想」「韓国の奈落」「米中激突と日本の針路」「新型コロナウイルスが世界を滅ぼす」など多数。

古森義久

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