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.国際  投稿日:2021/4/11

仏、高級レストランに闇営業疑惑


Ulala(著述家)

フランスUlalaの視点」

【まとめ】

・フランスは新型コロナウイルスの流行、第3波のピーク間近

・闇営業が疑われるレストランでのパーティー映像が流出。

・パリ検察は主催者を事情聴取、真相究明中。

 

フランスの4月9日の新型コロナウイルスの新規感染者数は41243人であり、日本の同日の3452人に比べれば約12倍だ。そして死亡者は301人であり、日本の同日の14人に比べれば約22倍である。現在、フランスは新型コロナウイルスの流行、第3波のピーク間近な状態となっている。フランス全体の集中治療室の占有率も113.82%となったのだ。

しかし、感染があまり広がっていないヌーベル・アキテーヌでは集中治療室の占有率は62.4%と、地方によってはまだ余裕があるのも確かで、フランス全体がひっ迫しているわけでもない。

一方、パリのあるイル・ド・フランスでは、集中治療室の占有率は現在150.5%とかなり深刻な状況だ。しかも、今回の第3波は、第1波の時のように、対応しきれない患者を他の地域に移送させる作戦がうまく機能しておらず、イル・ド・フランスの病院では第一波以上の苦難を強いられている。

だが、フランスのコロナの感染はまだまだ広がっており、特にパリの病院がそのように深刻な状況であるのにもかかわらず、なんと、パリ中心部にある高級イベント会場「パレ・ビビエンヌ」で豪華な夕食会が開かれたことがフランスの民放テレビM6で暴露され、違法ではないか、といまフランス国民の怒りの的になっている。

M6のツイッター

■ 暴かれた裕福層の集まる豪華な闇パーティー

4月2日に放送されたM6の番組では、隠しカメラによって秘密裏に行われていた豪華なパーティーの様子が映し出された。この映像では、スタッフも客もマスクを着用していない上、頬にキスをしあうなど、新型コロナの予防対策が強化されているようにはまったく見えない世界が映し出されていたのだ。しかも、背後にはお皿がならべられたテーブルが映し出されている。その様子は、完全に闇営業が行われている違法レストランの様相であった。

これに対して、主催者のピエールジャン・シャランソン氏は、「民主主義の元にいるのだから自分がしたいことをする」と述べるとともに、「あの会は、企業が会場の下見をしていただけ」、「エイプリルフールの大きな冗談だった」などと釈明していたのにもかかわらず、最終的には実際に会場では夕食会が開かれていたことが発覚したのだ。

▲写真 パレビビエンヌのレストラン「デュサロンエフェミア」に出席するピエールジャン・シャランソン氏2020年6月27日 出典:Foc Kan/WireImage

また、M6で放送された中で、シャランソン氏が「今週、2~3軒のいわば“違法レストラン”で、何人かの閣僚と一緒に食事をした」と語っていたことから、「#OnVeutLesNoms」「#OnVeutDesNoms」「#MangeonsLesRiches」というハッシュタグで、SNSでは政治家と裕福層に対する批判が高まった。

特にこの違法レストランで食事をしたとされる政治家の名前を暴こうという動きが高まり、SNSのコメントには、ギロチンやフランス革命への言及がされているものまで出てきた。

結果的には、シャランソン氏自身によって官僚がいたことは否定されたものの、他の番組にて匿名で「政治家がいた。グレーの髪色だった」という証言が放送されたため、SNS上では特定する動きがさらに活発化し何人かの政治家の名前が出されたものだから、疑われた本人が否定のコメントを出したり、メディアがファイクニュースであるかの検証に動くなどの大きな騒ぎになっていったのだ。

パリ検察は4月4日、報道を受けて、他者の命を危険にさらす行為をめぐり捜査を開始し、主催者のシャランソン氏と、食事を作ったとされるシェフのクリストフ・ルロワ氏の家宅捜索が行われた。その間、ルロワ氏の作成したと思われるメニューから、10月下旬から4月1日までに約15のイベントが開催されていたという疑惑も浮上し、両氏は、9日に警察に事情聴取に呼ばれて、現在、真相を究明しているところである。

■ 闇営業のレストランだった場合の処罰

シャランソン氏は、夕食会は開催しなかったという主張から一転し、夕食会はプライベートなものだったと主張しているが、今後の焦点は商売としてやっていたか本当にプライベートだったかに絞られてくる。

コロナ感染防止対策のため、現在、プライベートスペース外で6人以上で会ってはいけないという規則はあるが、自宅で6人以上が集まっていても罪に問うことはできない。

しかし、会費として220ユーロ(約3万円)払われた上、キャビアやシャンパンなどが含まれたメニューの価格は1人あたり160ユーロ(約2万円)から490ユーロ(約63000円)とされており、お金を払うことになっていたという報道が本当でれば、プライベートだったとは言えないだろうとする専門家もいる。

闇営業のレストランだった場合は、最大3年の懲役と45000ユーロの罰金が科せられる。また現在は、新型コロナウイルス拡大中のこともあり、他人を危険に晒したという理由でさらに15000ユーロの罰金、最大懲役1年が課せられる可能性があるのだ。ちなみに、参加者は、ディナーの場合、夜間外出禁止令違反で135ユーロとマスク義務違反で135ユーロ、合計270ユーロの罰金になる。

現在フランスでは、コロナ対策ですべての飲食店とカフェの店内営業禁止が続いている中、実は、シャランソン氏以外にも、闇営業しているレストランが告発されたりしているが、それはどちらかというと、レストランが経営できない困窮を訴えてのデモ的要素が大きい。

しかし、シャランソン氏の夕食会はまったく種類が違うものだ。多くのフランス国民が苦しい状況の中で規則を守っているのにもかかわらず、裕福層によって自分たちが楽しむための豪華絢爛な夕食会が開催されたのである。こういった身勝手な行為に対して規則を守り抑制した生活を送っている国民から大きな不満の声が高まり、現在も収まることがない。今後の捜査結果が待たれるところであるが、民主主義の元にいるからと、思うがままにしたいことをしたことに対する代償は大きくなりそうである。

-参考リンク-

Dîners clandestins à Paris : l’affaire des soirées organisées par Pierre-Jean Chalençon en six actes

(パリでの秘密のディナー:ピエールジャンシャレンソンが主催したパーティーの事件)

Dîners clandestins: de multiples cartons d’invitations compromettent Christophe Leroy

(秘密の夕食:複数の招待状がクリストフ・ルロワを危険にさらす)

Dîners clandestins. Que risquent vraiment organisateurs et participants ?

(秘密の夕食。 主催者と参加者は本当に危険にさらされていますか?)

トップ写真:パレ・ビビエンヌ内のレストラン「デュサロンエフェミア」(写真は記事中のパーティーとは関係ありません) 出典:Foc Kan/WireImage




この記事を書いた人
Ulalaライター・ブロガー

日本では大手メーカーでエンジニアとして勤務後、フランスに渡り、パリでWEB関係でプログラマー、システム管理者として勤務。現在は二人の子育ての傍ら、ブログの運営、著述家として活動中。ほとんど日本人がいない町で、フランス人社会にどっぷり入って生活している体験をふまえたフランスの生活、子育て、教育に関することを中心に書いてます。

Ulala

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