[一色ふみ]<健康そうにみえるスポーツ選手に貧血が多い?>大量の汗をかくことが通常よりも鉄分を多く外に排出する!
(一色ふみ・食育インストラクター/ジュニア・アスリートフードマイスター)
「貧血」と聞くとどういうイメージが浮かびますか?食が細くて体の弱い人や栄養不足の人に起きる症状をイメージするかもしれません。しかし実はスポーツ選手に貧血が多いことはあまり知られていないのでは・・・?ではなぜ一般の人よりも健康そうにみえるスポーツ選手に貧血が多いのでしょうか?
まず「貧血」は、食事バランスの崩れや偏食によって鉄分が十分に摂れていないことなどが原因で起きます。また、女性の月経や病気などの出血による損失も原因となります。このように血液中の鉄分が不足しておきる貧血を「鉄欠乏性貧血」と呼びます。
一方それとは別の理由のものが、スポーツ選手に多い「溶血性貧血」といわれる貧血です。
マラソンや剣道、バスケなどの選手は、トレーニングで足の裏を繰り返し打ち付けます。そうすると、足裏を通過する血液中の赤血球が血管内で破壊されます。これを繰り返すことによって脳や筋肉に酸素を運ぶ赤血球の量が減り、その結果貧血が起きやすくなるわけです。
また、スポーツ選手は大量の汗をかきます。汗の中には鉄分も含まれているので、大量の汗をかくということは通常よりも鉄分を多く外に排出しているということになります。スポーツ選手に貧血が多いことにはこうした理由があります。別名「スポーツ性貧血」とも言います。
鉄分を意識していないと、トレーニング量が増えるほど貧血は起きやすくなり、酸素がうまく脳や筋肉に運ばれなくなるため、パフォーマンスが落ちます。スポーツ選手こそ貧血対策は重要で、普段の食事からしっかり鉄分を摂取しなければならないのです。
・・・というわけで、強靭そうなアスリートに意外にも多い「貧血」のお話でした。
ところで、カフェやレストランでご飯を食べると食後にコーヒーや紅茶がセットになっていることがありますよね。実は食後すぐのコーヒーや紅茶は食事からせっかく摂った鉄分の吸収を妨げています。コーヒーや紅茶に含まれる「タンニン」という成分が鉄と結びつきやすく、小腸での吸収を邪魔してしまうからです。
食事の際の飲み物はできるだけ水にして、コーヒーや紅茶は時間をおいてから飲むようにすると鉄分の吸収を邪魔せず効率よく取り込むことができます。貧血気味の方は意識してみてはいかがでしょうか?
体作りは長期戦。今日食べた食事が数ヵ月後の体を作ります。どのような体を作っていったらいいか、普段から意識しながら”食“を見直すことが大切です。そのための参考となる知識をアスリートフードマイスターの立場から提供できればと思います。
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【プロフィール・一色ふみ】
皮革メーカーの職人としてデザイン製作の仕事を経て、2009年に青年海外協力隊に参加。エチオピアで皮革の指導をし、二年間の活動後に帰国。
帰国後は皮革業界から離れ、食育インストラクターとジュニア・アスリートフードマイスターの資格を取得。
現在はトレイルランナーの夫をサポートしつつ、アスリートフードマイスター資格取得講座のアテンドスタッフをしている。