[為末大]<計れる事、計れない事>アスリートが自問する「この練習に効果はあるか?」の計り方
為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)
アスリートにずっと付いてまわる問いは「この練習は効果があるのか」という事。時間に限りがある以上、どのトレーニングに時間と労力を割り振るのかが重要になる。良い時はあまり考えないけれど、特に調子が悪い時は「本当にこれでいいのか?」と悩む。
「この練習には効果があるか、どうか」を私は二つの方法で計っていた。
一つは、実際に数字で計る事。1ヶ月その練習をやっていて、数字が変化したかどうか(立五段跳び、坂道50mなど)で効果を計っていた。もう一つは自分の体感。
計れなければ効果があるかどうかが検証できず、意味の無い練習を続ける事になる。陸上は試合があるからある程度数字に出やすいけれど、それでも効果が出るまでに1年以上かかるものもあるし、たくさんの事を同時進行で行うので、どれが効果があったかはわかりにくい。
特にトップ選手は仮に数字を出しても、「その数字がパフォーマンスにどの程度影響するか?」などを計る事が極めて難しい領域でやっている。だからつい練習の効果があるかどうかを、体感的に辛かったかどうかで計ってしまう事になる。
体感で「この練習には効果がある」と理解する時に大事だったのは、目指す方向に合致しているかどうか、感触がいいかどうか。20代に入っていくら辛い事をやっても伸びなくなって、方向性とやり方を考えるようになった。数字と感覚の両方で練習効果を検証した。
計れなければ何に効果があるのかがわからない。けれどもスポーツは簡単にKPI(重要業績評価指標)を絞り込めるような世界ではなくて、感覚と数字に表せるものの両方から「効果がある練習かどうか」を一つ一つ検証しながらトレーニングをしていた。
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