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.政治  投稿日:2021/6/24

「ネットワーク生かし現場の声を都政に届ける」公明党東京都本部代表高木陽介衆議院議員


安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

Japan In-depth編集部(阿部翔太郎)

編集長が聞く!

まとめ】

・都民ファーストとの信頼関係は完全に崩れた。

・公明党独自のネットワークをいかし、現場の声を都政に届けていく。

・オリンピックについては、国内外の様々なデータを踏まえた丁寧な説明が必要。

 

都議選の告示まで一週間余り。前回の都議選では「都民ファーストの会」と選挙協力を結んだ公明党だが、今回は再び自民党との協力体制に戻る。

各種調査では公明党苦戦の向きも伝えられる中、どのような戦略で都議選に臨むのか。公明党東京都本部代表高木陽介衆議院議員に話を聞いた。

■ 公明党苦戦が予想される中、現在の手応えは

安倍: 自民党やマスコミの調査、また公明党自身の発表でも今回の都議選では苦戦が予想されるが、党としての実感はどうなのか。

高木氏: 実際かなり厳しい面はあります。自民党は前回大きく負けたから、今回は保守系の団体や業界を固めているのでかなり堅実です。一方で東京都市部は内閣支持率が低く、その受け皿が立憲や共産になっています。都民ファーストの会の支持率が下がるかと思いきや、小池さんの支持率は未だに6割と高く、各政党とも運動量が少ない中で、(小池知事との)2連ポスターに小池さんが載っている都民ファーストの会はなかなか落ちてこないんです。

一方うちの党は、組織選挙、対面選挙、動員力でこれまでやってきたが、コロナでこうした動きが止まってしまっています。もちろんオンラインだとか様々なものを駆使してはいるのですが、これまでに比べると全然少なくかなり厳しい状況です。僕もいろいろ回っている中で、多くの方が「公明党さんは大丈夫、いつも勝つじゃない」おっしゃいますが今回は違うんです。これまでは厳しい中で頑張ってなんとか滑り込んできたんですが、今回は頑張っても滑り込めるかどうかというところです。

■ 前回選挙協力を結んだ都民ファーストとの関係

安倍: 公明党は前回の都議選で都民ファーストの会と組んでいたが、今回再び自公の協力体制に戻ることになった。この背景には都民ファーストの会との信頼関係が崩れたということなのか。

高木氏: 信頼関係は崩れましたね。少し詳しく経緯をお話ししますと、4年前は都議選の1年前に都知事選があり、そこで僕らは自公で増田さんを立てて負けました。これを受けて公明党としては、それも都民の選択だから小池都知事とは是々非々でという姿勢で構えたのですが、自民党はもう全部反対、予算まで反対するという姿勢を取りました。これによって、それまでのように自公で連携を取るということができなくなったのです。我々としては誰が知事であろうが都政を前に進めた方がいい考えだったので、都民ファーストの会とまず政策協定を結び、政策協力をやりましょうという前提のもとで、では選挙協力もしましょうということになったんです。政策協定を結んだ項目については実現したものも多くあります。例えばうちが主張した、私立高校の無償化などは実現させることができました。

しかしこの4年の間に、都民ファーストの会が政党としてのガバナンスがしっかりしてないということがあらわになってきました。小池さんは前回の都議選が終わってすぐ希望の党に行ってしまいましたし、これまでに離党者が8人もいます。またこれまで様々な協議の中で、幹事長同士で合意したのに持ち帰ってみると自分の党内でそれがまとまらないということが繰り返され、政党してどうなのかという印象が強くなってきました。

最終的にこの3月に議会でコロナ条例を都民ファーストの会が出してきたのですが、中身を見ると私たちが提言をしてすでに東京都が実施している項目ばっかりだったのです。パフォーマンスで実績作りをしたいと言うのが見え見えだったので、それは意味のないことですよと忠告もしたのですが、こともあろうにこれまでずっと小池さんを批判してきた共産党と組んでこの条例を成立させました。これはいったいどういう政党なんですかということで、都民ファーストとは協議さえできないという段階に陥っています。

一方で自民党は最初こそ全面反対という姿勢だったのですが、この4年の間に都政を進めるために知事とも是々非々で行かなければならないという姿勢に変わってきて、この1年間予算も賛成をするようになりました。こういう状況の中で昨年来から公明党としっかり協議をしたいという話があり、話し合いを進めて政策協定をまず3月に結んで、これをこの4年間しっかりやりましょうという前提のもとで、では選挙協力もしましょうということになりました。

安倍: 都民ファーストの会は、唯一小池さんに直接ものが言えることが我々の1番の強みだとおっしゃっている。この点はどう見ているか。

高木氏: 知事にものを言えるというが、例えばオリパラに関して都民ファーストの会は無観客だと言っていたのに採用されませんでしたよね。本当に繋がっているなら実現するわけで、都民ファーストの会自体は確かに小池さんが作ったけれども、知事は知事、議会は議会という是々非々の関係の中で、逆に都民ファーストの会自体が小池知事との距離感があるんじゃないかという風にも感じています。

安倍: 自民党都連会長の鴨下さんは自公で過半数を取れると自信を見せているが、過半数を取れた場合小池さんとの関係はどうなっていくのか。

高木氏: 自民党で単独過半数は行かないと思うので、自公でなんとか過半数とりましょうという所です。その中で小池さんをしっかり支えていくという姿勢になると思います。小池さんが都政をちゃんと前に進める一方で、こちらはこちらで現場の声をしっかり聞いていきます。

特に公明党の場合はネットワークがありますから、23区と30の多摩の市町村、そして島嶼部、それぞれの議員がしっかりと現場の声を吸い上げて、今東京に何が必要なのか、何が大事なのかということについて、自民党とも協議をしながらそれを実現していきたいと思います。当然それを小池さんとも協力をしながらやっていくということです

▲写真 ⒸJapan In-depth編集部

■ オリンピックについて

安倍: 都民の多くはオリンピック、そしてこれまでのコロナ対策に必ずしも満足していないと思われるが、7月4日の都議選で自公で過半数をとった場合オリンピックはどのように進めていくお考えか。

高木氏: 昨日の段階で開催する、そして観客を入れるという方針が決まったわけですから、基本的には、いかに安心安全を確保するかというのが何より大切だと思います。多くの都民、あるいは国民が抱える、開催をしたら感染が広まるんじゃないかという漠然とした不安に対して、具体的に何がリスクなのかということを示した上で、このリスクについてはこうやって手を打っているんだということを、しっかりと関係5者が発信し理解を得ていくことが必要です。もちろんそこで足りない部分は私たちもしっかりと発信していきます。今ある課題についてしっかりとみんなで議論をして、国民、都民に理解をしてもらうために努力をし続けるというのが一番重要だと我々は考えています。

安倍: しかし、専門家会議が無観客と提言を出しているにも関わらず1万人の観客を入れ、場合によっては20万人くらいの人が動くかもしれないということが連日報道されている。このような状況では都民、国民に不安になるなという方が難しいとも思えるが。

高木氏: 関係5者がしっかりと説明していないのが問題だと思います。例えば東大の仲田泰祐准教授をはじめとするチームの試算では、ワクチンを打った選手団また関係者が入ってくることによるリスクはあまりなく、感染拡大にはあまり結びつかない、というデータが公表されています。

それよりも、まだワクチンが多くの人に打たれてない中で、東京1300万人、首都圏3000万人が平気で通勤通学して、ご飯を食べたり買い物をしたりしていることの方がリスクがあるわけです。ところがそういうことがちゃんと説明されていません。

また海外では、ワクチンが行き渡ってだいぶ規制を緩和したイギリスで感染者が増えて、一日1万人近くになっています。日本で言えば1日2万人感染者が出ている計算です。それでもこれからウィンブルドンが始まります。また全仏オープンを開催した当時も、フランスでは一日1万人の感染者が出ていました。大阪なおみ選手が棄権したことはニュースになりましたが、この感染状況の中で観客を入れてやっていたということは全く報道されていません。アメリカもまだ1日1万人から2万人出ていますが、大リーグは観客制限が無くなったりしています。こういった海外の事例としっかり比較をすべきです。

一方、プロ野球とJリーグも、去年から色々とデータを取りながら開催していますが、ここでの感染はほぼないという結果も出ています。もちろん、「だからやっていい」という話ではなくて、日本だけのデータじゃなくて世界とも比較して、こういうデータがあるということをしっかりと説明していく必要があるんです。

ところが現時点では、感染者数だけでいろいろな話が出てきてしまっています。専門家の方々が一番心配しているのは感染者が増えるということではなく、感染者とともに重症者が増えて、重症病棟がいっぱいになって医療が逼迫し、救える命が救えないということです。これもまだエビデンスははっきりしていませんが、高齢者のワクチンが5割を超えてかなり進んできたことによって、高齢者内での感染のリスクは今後さらに減っていきますから、オリンピックを迎えた時に重症者率は下がるということも考えられます。それを踏まえて病床使用率がどうなるのかということも説明しないといけないでしょう。

もちろんデルタ株などの変異株の流行も確認され、不安もあると思います。しかし感染が増えたのは確かですが、これも海外との比較で言ったら桁が違います。だからIOCのバッハさんやコーツさんから見れば、日本はヨーロッパに比べれば安全に見えるという面もあると思います。

もちろん日本の一人一人の国民の命が一番重要ですが、このコロナの場合はただそれを不安、雰囲気、空気だけで考えるのではなく、しっかりとしたデータに基づいて、海外のこの場合はこう、スポーツイベントはこう、そういう中でどうやっていくべきかという説明をしていくことが必要です。しかしそれを関係5者がなかなかやっていないので、そこに私も不満を持っています。

■ ネットワークを使い現場の声を都政に届けていく

安倍: そういった説明責任が誰にあるのかが曖昧になっており、小池都知事もはっきりとした説明をしていないように思える。自公が都議選後力を持つようになれば、小池さんや都に対して厳しい姿勢で臨むことも必要だと思えるが、この点はどうお考えか。

高木氏: 知事は知事で都民が選ぶ。議会は議会で都民が選ぶという二元代表制なので、当然お互いにチェック機能があるわけですから、もちろん1から10まで賛成、という話ではなく、問題点は指摘をし、チェックをし、提言をしていきます。ちなみに既にこの1年のコロナ禍の中で、公明党は49回にわたって397項目を提言してきました。これはやはりネットワークを使いつつ、「現場でこういうこと困ってますよ」、「病床がこうですから専用病床作ってください」、「高齢者の施設はPCRを積極的にやってください」という現場の声を拾ってきました。これまでだいたい週に1回こういった提言をしてきたんです。逆に言えば、もし我々が提言をしなければ、東京都はやってなかったかもしれないということです。だから東京都がやろうとしていることにイエスと言うだけではなく、都が至らないところを指摘をし、やらせていくというのが議会の責任であり、公明党はこれからもネットワークを使ってそれをやっていこうと考えています。

一方、申し訳ないが都民ファーストの会はそうしたネットワークがないわけです。今8人やめて40数名ですが、1300万の都民の声をどうやって吸い上げているのでしょうか。もちろん最近はSNSなども使えますが、やはり現場の声、現場の状況がわからないとどうしようもない。だから協力金が入っていないという東京都の問題などについても、我々公明党は現場の声を吸い上げて何度も申し入れをしてきましたが、非常に対応が遅れていました。ようやく4月の段階で人員を増強したようですが遅すぎます。

例えば国で去年持続化給付金の配布をやった時には、批判も受けましたけれども外注をしたわけです。外注をして、審査もかなり緩和したことによってかなり迅速に行うことができたんです。こういう事例を東京都はもっと学んでもよかったと思います。東京都は先進的にやってる部分と、逆にワクチンの接種券の配布など遅れている部分が混在しているのは確かですから、もちろん今までも公明党としてやってきたつもりですが、今後はより一層、都の至らない部分をどんどん指摘し、チェックをしていこうと考えています。

■ 都議選に向けて

安倍: 自公で過半数が取れなかった場合には、議会運営はどうするのか?

高木氏: それはその時になってみないとわからないことですが、政治ですからその時の状況に応じて話し合いをし、合意できることに関しては合意していくことは必要だと思います。他党と会派を組むというよりも、テーマごとに話し合いを詰めていくことが大切でしょう。ただまだ選挙前ですから、今はそういうことを前提に考えるのではなく、あくまでも私たちは候補者23名全員当選をなんとか頑張っていきたいし、自民党との選挙協力もしているわけですから、自公で過半数を取りたいと考えています。自公で過半数は取れると思いますが、公明党の23名全員当選というのは本当に厳しいというのが今の実感です。

安倍: 秋に総選挙があり今回の都議選は前哨戦という位置付けになると思うが、党としてどう考えているか。

高木氏: 本来都議選は、東京の問題や東京の政策課題で議論して選挙をやるべきですが、多くの都民はこれは東京の問題、これは国の問題というように分けて考えているわけではなくて、政治全般がどうなんだという風に考えていると思います。やはり次の衆議院選挙を戦う上で、一つの重要な試金石になるのは確かだなと考えています。だからこそ、今回の都議選は絶対に勝ち抜いていかなければいけないと自覚しております。

(了)

トップ写真:ⓒJapan In-depth編集部




この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。

1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。

1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。

2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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