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.政治  投稿日:2021/6/28

「都議選でアピールし、衆院選に繋げたい」東京維新の会代表柳ヶ瀬裕文参議院議員


安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

Japan In-depth編集部(坪井恵莉)

編集長が聞く!」

【まとめ】

・小池都政は、自民党時代の議会と首長による談合政治と変わらない。

・自公とは是々非々で、政策ごとに枠組みを決めていく。

・東京での認知度は上がってきている。都議選でアピールし、衆議院選に繋げたい。

 

安倍: 今回の都議選の戦略は?

柳ヶ瀬氏: 4年前の選挙では都民ファーストの大暴風が吹いた。でもその4年間で何が変わったのか、しっかりと総括をしなければならないと思います。今回も都民ファーストの会が(選挙に)臨んでますが、その4年前に公約に掲げた「東京大改革」がちゃんと実行されたのか、しっかりと都民の皆さんに説明をする必要があると思います。

維新の会は改革勢力という意味では都民ファーストと被っていると良く言われますが、私たちが違うのは大阪では多数の議席をいただいて、しっかりと実行してきたという実績があることです。都民ファーストの会はあれだけの期待をいただきながら、残念なことに尻すぼみになってしまった。

その前の自民党時代の都政は議会と首長が談合をして、ある一部の特定の利権の人たちに税金が投入されていた。それが駄目だということで都民ファーストの会が登場した。その頃に戻って良いのかいうことも私たちは投げかけたいと思っていますし、そこをしっかりと都民の皆さんに訴えていきたいと思います。

安倍: 現在議員は(私以外)1名だが、今回は候補者を多く擁立している。

柳ヶ瀬氏: 今13名ですね。全員当選はなかなか難しいと思いますが、「2桁を目指す」とは言ってきました。議案提出権があるのも11議席からなので、11は取りたい。ただその11もなかなか厳しいと分かっているので、少なくとも交渉会派になる可能性がある5議席とかこの辺の数字を目指していきたいと思っています。

安倍: 大阪では大きな勢力を保っているが、関東ではなかなか支持層が広がっていない中で、今回の都議選はチャンスになるのではないか。

柳ヶ瀬氏: 日本維新の会の立ち上げからずっとやってきているので、この政党でもう10年になります。都議選もこれで3回目になるんですが、その中で1回目は橋下さんの慰安婦発言があって大失速して、 2回目は都民ファーストの会が大躍進してということがありました。東京での支持率で言うと、かつてない高さになると思います

要因の一つに吉村フィーバーがあります。維新の会が橋下徹の政党だったのがその後松井代表になって、そこから吉村という形になってきた。吉村さんはやはり大阪の顔でもありますが、日本の顔にもなり得る人材だと思っていますし、東京の有権者の皆さんと話をしていても「吉村さんは良いよね」という声が非常に多い。維新の認知を向上させましたし、私たちが苦手としてきた女性層の取り込みにも効果は出ているのかなと思います。大阪で一定の成果を収めてきましたし、東京の方に実績もかなり伝わるようになったと感じています

安倍: 仮に自公も都民ファーストも過半数を獲得できなかった場合、キャスティングボート(第3党としての決定権)を握るのは維新の会になる。今後どのように都議の運営に関わっていくのか。

柳ヶ瀬氏: 私たちが多数の第1党になれるわけでもないですし、公明党くらいの票を取れるわけでもないと考えた時に、キャスティングボートをしっかりと握っていきたいという思いはあります私たちは小池都政に対してあくまで是々非々です。小池さんは良い事もやってきたし、駄目なところもたくさんある。都議会は極端で、選挙前になるとオール与党になって小池連携にあやかりたいとなる。自公と、都民ファーストでオール与党になっているわけですが、これはおかしいと思います。駄目なところは駄目だし、今の自粛要請のあり方にはおかしなところが沢山ある。駄目な所は駄目だと言っていく勢力がキャスティングボートを握ることが都政にとって大事なことだと思います。

安倍: 維新の会は五輪について「条件付き開催」と言う立場をとっているが、何故か。

柳ヶ瀬氏: もちろん感染が拡大する局面でオリンピックをやっていくわけではない。感染がある程度収束していれば、やるのは当然だと思っています。「ここまでだったらやる」と言う条件を決めれば良いのではないかとずっと言ってきた。立憲民主党や共産党は選挙の争点にしたいと言っていますが、7月4日投票ですからその時にはあると決まっていて、決して争点にはならないと思っています。共産党と立憲民主党は選挙で目立つためだけに主張していて、それは選挙ファーストの考え方なのでそれには与しない

安倍: 五輪が開催されれば、他県からの移動も発生する。五輪開催までにワクチン接種が間に合わないために、都民からは不安の声も上がってる。

柳ヶ瀬氏: そこはフレキシブルに考えるべきで、感染が微増している状況なら観客は絞るべきだし、そのような判断をある時点でして、人流を抑える事はやるべきだと思います。しかしだからといって(五輪を)辞めるということではなくて、どうしたらやれるのかをしっかりと考えていく。今の局面だったら問題はないと思っていますが、感染数がもっと上がっていけば、その時々に決めていけば良いのではないでしょうか。

安倍: 議会から行政に対してもっと強く色々なことを要求するべきだが、都議会は閉会が続いている。

柳ヶ瀬氏: 都議会議員選挙があるとは言え、都民の皆さんは不安に思っていて、もっと都政のことを突っ込んでほしいと思っている。それなのに、4月も5月も開かれなかった。それは議会と都知事が談合をしているからです。お金の配分を全て専決処分してきたこともありますし、これは議会と都知事が談合してきたことの証だと思います。国会も閉会したことも僕はおかしいと思っていますが、それでも16日まで総理と喧々諤々の議論をしてきた。

議会が開かれると何が起こるか分からないですし、色々と突っ込まれます。それは今の国を扱っている自民党にとって良くないし、都民ファーストは何も言えないし、都知事が傷を負うかもしれない。三方一両得のためには開かないとなったのではないでしょうか。明らかな選挙ファーストです。それをぶち破ると言ったのが小池さんであり、都民ファーストの会だったはずですが、やっている事は結局ブラックボックスで全部専決、談合。裏で全部決めていて都民には何も知らされていない。「この自粛要請のあり方はなぜか、エビデンスは」と聞いても誰も答えられない、という状況になっています。これが今の都政のおかしさだし、ずっとそうだった。私はここ10年間しか都議会にいませんでしたが、石原都政の時も猪瀬さん、舛添さんの時も結局そうだった。(小池氏と都民ファーストは)それをぶち破ると言ってきたが、それは実現しなかった。この罪は重たいと思います。

▲写真 ⓒJapan In-depth編集部

安倍: 飲食店経営者は1年以上も営業自粛を余儀なくされ、経済的にも困窮している。

コロナを正しく見ることが必要だと思います。人流を止めたことによって感染者が減っているのかと言ったら、私はその相関は極めて弱いと思っています。経済を止めれば人命を守れるのかと言う二者択一の話についてはエビデンスがない、ということをもっとしっかりと皆さんに知っていただく必要があると思うし、政治側の責任としてその発信をしていくべきだと思います。でなければ、本当に困難な状況にある人はマイノリティーだと切り捨てられています。

小池さんが重症病床の確保をこの1年間でやってくれば、この状況にはならなかったはずだと思います。それを結局医師会と話し合いの中で、できなかった。そこをしっかりとやるべきだったと思います。重症病床さえしっかりと確保できていればこんな緊急事態宣言を出すことはないわけです。

安倍: 飲食店への協力金の支払い遅れも問題になっている。

柳ヶ瀬氏: これは都だけではなくて、国の制度の不備でもあります。マイナンバーなど、国が個人に対してお金を紐付けして送れるようなシステムを個人情報の漏洩や個人が管理されてしまうという声の中で、政党としてとして実行できなかった不作為だと思います。

安倍: ワクチン接種についても、行政の対応の遅れが目立っている。

柳ヶ瀬氏: 今まできちんと分権をしてこなかった。国と都と区市町村の関係は極めて曖昧です。どこが責任を持つのか、今回のワクチンの接種に関してはどこが責任元で、誰が配分をするのか、国も都も責任を曖昧にしています。その方が都合が良いわけです。何かあったときに自分のせいではないと言うことができる。統治機構の問題として役割分担がしっかりとしてこなかった。本当は基礎自治体の役割だから、基礎自治体がきちんとやればいい。ワクチンの接種が遅れたのは国のせいかもしれないが、国の中でもまたワクチン担当大臣と厚生労働大臣がいることが問題だと思います。

安倍: 都議選後は自公とどのような協力体制を築いていくのか。

柳ヶ瀬氏: 自公と会派で組むことは多分ないと思います。これまでもそうだったんですが、私たちはあくまで政策ごとに、自民党と一緒に都知事に対して物申してきた時もありますし、逆に共産党と立憲民主党と一緒に条例提案をしたこともあります。自分たちの政策が実現できればそれで良いわけで、その度にあらゆる枠組みを考えていくことになります

安倍: 今回の都議選は秋の衆議院選の前哨戦としても位置付けられている。都議選で結果を出せば秋の衆議院戦での飛躍も期待できるのではないか。

やはり維新にとって今回の選挙は認知を上げるチャンスです。自公とは異なり我々はまだ認知が上がりきっていないし、どのような政党なのか良く分かってもらえていない。そこで我々は去年、一昨年の参議院選挙で2人の東京出身の議員ができたということは1つ大きなイベントでした。ここでしっかりとアピールをして、衆議院選挙につなげていきたいと思います。

(インタビューは2021年6月22日に実施)

トップ写真:ⓒJapan In-depth編集部




この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。

1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。

1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。

2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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