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.政治  投稿日:2021/6/29

都議選公約分析「都民ファーストの会」その1 勘違いはあれど、改革実績は確か


西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)

【まとめ】

議員報酬2割カットの4年間継続、不要な公用車の大幅削減、政務活動費による飲食への支出禁止など、それなりに改革はできた。

・新型コロナ対策を正しい実績とみているところは「勘違い」。

・「条例を作ること」が実績ではなく、条例が正しく運用されて、社会問題が解決することが本当の「成果」。

 

▲画像 【出典】都民ファーストの会政策集2021:重点版

都議選恒例公約分析。これから、各党の公約を分析していく。まずは「都民ファーストの会」。

都民ファーストの会は、知事与党として活動してきた党であり、自己を「改革路線・多様性の尊重・政権担当能力を持つ唯一の政党」と位置付けている。与党の立場なので、基本は業績評価を行ったうえで公約評価を行うということになるので、今回は実績評価になる。

一言でいうと勘違いは甚だしいが、改革実績を残したことも事実であるのだ。特徴から述べていこう。

■それなりに改革はできた!

 ●議員報酬2割カットの4年間継続、不要な公用車の大幅削減、政務活動費による飲食への支出禁止など、一連の改革により議会関係で27億円以上の削減効果

 ●ムダのないメリハリの効いた支出を徹底。事業評価の強化により4年間で約3,900億円の新規財源を確保しました。

専門家的には色々とツッコミどころ満載ではあるが、改革はできたことも事実である。過去の都政より「まだまし」にはなった。

また、それ以外の成果で見てみよう。

 ◆受動喫煙対策

 ◆「賢い支出」の徹底

 ・4年間で合計約3,900億円の財源確保・更新費用2,328億円の工業用水道の廃止

 ・オリパラ大会組織委員会の経費・文書管理強化

 ◆人権尊重条例

 ◆東京都迷惑防止条例の一部改正:悪質なつきまとい行為に対応するための改正

 ◆「選択的夫婦別姓制度」の法制化を求める意見書の提出に関する請願

かなりリベラルな政策を実施したことも事実であろう。

■【勘違い1】コロナを誤解

第一に、新型コロナ対策を正しい実績とみている点である。

▲画像 【出典】都民ファーストの会政策集2021

新型コロナ対策が成功していたとは言えないはずだ。病床確保も最善を尽くしたとは言えるが、それで十分だったのか。専門病院も作れない、1年も余裕があったのに、だ。飲食店ビジネスの苦境、スタッフの雇用低下、自殺者数増加など様々な影響を踏まえると成功とはいえるのだろうか。

■【勘違い2】成果を誤解

第二に、成果への勘違いもはなはだしい。「条例を作ること」が実績でいいのだろうか。条例が正しく運用されて、社会問題が解決することが本当の「成果」である。

・議会活力度ランキング(日経グローカル):45位(全国47都道府県中ワースト3位)→8位に上昇

・2018年「マニフェスト大賞優秀賞」受賞

は素晴らしいが、他人・外部の指標に頼っている。自分たちで問題設定をして、その問題解決度を測定することすらできないというのは公党としては力不足であると言わざるを得ない。

■今後への期待

過去の与党よりはましでもあったことも事実である。そして、都民ファーストの会の素晴らしさは、未来志向であることである。

▲画像 【出典】都民ファーストの会政策集2021

正しい自己認識もしている。その点はさすがと言える。これまで過去の団体とは違って、公約の進捗状況を中間状況も公表してきた。

しかし、議員報酬を2割カットしても、平均賃金を越えている「高額の議員報酬」であることも確かである。一層の頑張りを期待したい。

トップ写真:荒木ちはる都民ファーストの会会長と小池百合子都知事 出典:荒木ちはる 東京都議会議員 Facebook




この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者

経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家


NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。


慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。


専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。

西村健

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