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.政治  投稿日:2021/9/16

総裁選「最大のテーマは社会保障改革」河野太郎行政改革担当大臣


Japan In-depth編集部(石田桃子)

【まとめ】

・河野太郎行政改革担当相、16日報道各社のインタビューに答えた。

・様々な政策課題に対し、国民とキャッチポールしながら解決していく姿勢強調。

・国民の皆様にきちんとメッセージを出し、支援頂くことが大事と述べた。

 

自民党総裁選告示日を9月17日に控え、河野太郎行政改革担当大臣は16日午前、衆議院議員会館で報道各社のインタビューに答えた。会場には約40人の記者が集まった。

〇新型コロナウイルス感染症への対応

「抗原検査キットを大量に生産してコストが安くなって検査期間が短くなれば、いろんな場面でこれを活用して経済を元へ戻すところに使えるようになる」。

イベント、学校、飲食店などで抗原検査を実施すれば、感染症拡大防止に資するとの考えだ。

「そうやっていろんな活用ができるものなのに、制約がかかって、規制がかかってできていないというのは、ワクチンの時もありました」。

ワクチン製造工場に対する認証や、ワクチンの有効期限に関する日本独自の制約が、速やかで安定的なワクチン確保を困難にしたと指摘した。

「おかしな流儀をまず撤廃しなきゃいけないというのが、大至急やりたいと思っています」。

ワクチン2回の接種後でも「ブレークスルー感染」する可能性についても触れた。

「やはり検査をするというのがすごく大事。そのために、早くできる検査を安いコストでたくさん提供する。これを日本の製造業に頑張ってもらいたいと思います。そのために、必要な設備投資を国が支援することは、当然やるべきこと」。

デジタル化によるコロナ対応策も提示した。

一つは、新しいデジタル製品を用いた自宅療養者支援の仕組みづくり。

「今日夕方、視察に参りますけれども、腕時計型のパルスオキシメーターというのがある」。

一定時間ごとに装着者の血中酸素濃度を自動で測定し、一定の数値を下回ると警報を発し、即座に患者を酸素センターや臨時病院へ送るような仕組みが想定できるという。

自宅療養者に対する抗体カクテル療法の使用についても、酸素センター・臨時病院・自宅での投与を即座に予約するシステム構想を示した。

もう一つは、支援金の申請手続きの効率化。

「いまだに手書きの申請書で、申請してから何ヶ月もかかって支援金が入る。もう第5波になっているわけですから、本来なら飲食店は最初に全部登録してデジタル化しておいて、次からは、ボタンを押したらその場で口座に支援金が入力されるというシステムが立ち上がっていなければおかしいはず」。

国・都道府県・市町村という複数の窓口からの通知に対応する煩雑さについても、改善すべきとした。

「デジタル能力を最大限活用した支援策と言うのをやはりどんどん入れていかなくてはいけないと思います」。

〇総裁選の争点

「自由民主党が国民に耳を傾ける政党であり続けるのか、国民の声よりも何か余計に耳を傾けなければいけないものがあるのか。それが一番問われてしまっているのではないか」。

個別の政策については、「国民の皆さまからの社会保障改革に対する要望があるにもかかわらず、なかなかそれに対応できてこなかった」と批判。

従来の政策を見直し、

・「日本の人口構成をなんとか釣鐘型に戻していく」ような子育て支援

・「年金制度ではなくて、将来の年金生活」を守る年金改革

・レセプトの電子化を最大限活用した「医療の適正化、医療費の適正化」

を実現することの必要性を訴えた。

年金、医療、介護、子育て、社会保障分野の改革をしっかりやるというのが私にとって最大のテーマ」。

〇年金制度

「少なくとも最低保証部分は最低保証されなければならない。ということは、保険料をもらってやるのではなく、税でやるしかない。ただし、最低保証が必要ない方には税からは払わなくても良い。そこはフローバックさせてもらって、不必要な支払いが起きないように」。

この方法であれば、最低保証の金額と消費税とが一対一対応で決まる考え方で、「議論がしやすい」という。また「応分に能力のある人にはその分を負担していただく」考えからも望ましいという。

二階部分については、所得に応じて「自分が拠出した分プラス金利が、リタイアした時の平均余命で戻ってくる。平均余命より早く亡くなってしまった場合にはそこで打ち止めにさせてもらって、それをつかって平均余命よりも長生きした人にその分きちんと手当てをする」。

「二重の負担を解消するには、短期間でやるとその世代だけに負担が出ますから、なるべく長い年月をかけて少しずつ解消すればいいと思っています。厚労省は『そんなの非現実的だ』と言いますけれど、私は今の、先どうなるかわからない年金制度を維持していく方が非現実的ではないかと思います」。

「自分たちの将来を若い世代にも考えてもらうという意味で、いろんな考え方をオープンにして、『どうですか』と、国民とのキャッチボールをしながら決めていきたい」。

拉致問題

「早期解決するには、やはりトップ会談しかない」。「最大限そのための努力を外交的にしていきたい」。

〇北朝鮮による弾道ミサイル

「一つは情報収集能力を高める必要がある」。

対北朝鮮に限らず、他の分野でも重要だと指摘した。日本がファイブアイズに加わり「シックスアイズになるところまで」高めることが「ベスト」だとした。

「北朝鮮の核やミサイル、中国の軍事能力の拡大、一方的な現状変更の試みともとられかねない動き。東アジアではかなり、安全保障に関しては緊張した状況がこれからも続くだろうと思います。そういう中で、きちんと優先順位をつけて、どう対応していくのかという、総合的な戦略を作るというのが大事」。

ただし、中国の軍事予算が日本の防衛予算を大きく上回る現状に、「同じことをやっているのでは勝てない」と危機感をにじませた。「ゲームチェンジになるような戦略、技術というのは何なのか、それにしっかりと投資できる、予算を付けられる、そういう枠組みのことを考えていかなければいけない」。

〇安倍・菅政権

「例えば2050年カーボンニュートラル、行政のデジタル化はしっかり続けていかなければいけないと思います。領土問題を解決して、日露平和条約を締結するという安倍内閣の方針はこのままやっていきたい」。

菅政権については、「非常に密度の濃い一年だった」と述べた。

「2050年カーボンニュートラルということを総理が最初に打ち出して、日本も気候変動・気候危機の対応に当たるぞという意思表示が世界に向けて発信され、日本もそういう議論のテーブルつくことができるようになりました。エネルギー基本計画で再生可能エネルギー最優先の原則というのがうちだされ、カーボンニュートラルに向けて、また、再生エネルギー産業という新しい産業の育成に向けて大きな一歩を踏み出したことになりました。デジタル庁の打ち上げということで、行政のデジタル化にむけて扉を開いた」。

デジタル化は、プッシュ型の子育て世帯支援金の給付、規制改革、ワクチン接種管理、の後押しになったとした。また、高齢者のワクチン接種目標達成、バイデン大統領との首脳会談についても評価した。

ただし、「背中で語るようなところがあった」「(国民に対して)もう少し丁寧に説明をして、キャッチボールをして、賛成して頂けるかどうかは別として『意図はよくわかった』というところまでもっていけばよかった」と述べた。

〇北方領土問題

「日本として日露関係というのは非常に大事」。

安倍・プーチン間の、領土問題解決・日露平和条約締結という方針での合意について、「日露両国において大事」と評価。「今度はトップ(会談)でやりましょうということができたら」と述べた。

「交渉の中身について申し上げるのは適切ではないと思いますが、日本の国益に最大限沿ったことをやっていくというのは当然」と述べた。

〇安全保障

「コロナ禍で国際秩序の中の分断が少し加速しているような気がしています。自由主義・民主主義・法の支配・基本的人権といった共通の価値観を共有する部分と、いわば独裁・監視社会と言ってもいい部分との間が少しずつ亀裂ができているような気がしています」。

「私は、自由民主主義・法の支配・基本的人権といったような基本的価値というのはしっかりこれからも守っていかなければいけない部分というふうに思っています。日本一国ではできません。多くの価値観を共有する国々との連携でやっていかなければいけない」。

米英豪がインド太平洋地域の安全保障枠組みを創設することについて、「3か国との連携は日本にとっても非常に重要」と述べた。

「中国の軍事拡大が続くということであるならば、日本としても様々なことを考えていかなければいけない」。

3か国がメンバーである「ファイブアイズ」との連携の重要さを再び強調した。

〇森友・加計問題

河野氏は今月10日、森友問題に関して再調査は「必要ない」との見解を示していた。今日も「再調査については先日申し上げた通り」と述べた。

「再調査といっても誰がどういう権限でやるのかよくわからないこともあるし、司法が色々と判断をしているところもありますから、そこは先日申し上げた通り」。

「この件で心を痛めていらっしゃる方を放ったらかしにするのではなく、気持ちを受け止めるというのが大事なところではないか」とも述べた。

〇日本学術会議問題

「科学技術について意見を述べるところが政府から独立してあるというのは大事だと思いますが、そこがどういう人たちを代表しているのか、どうやってメンバーが選ばれるのか、そこはもう少し国民に分かりやすくしていく必要があるのだろうと思います」。

「最近の防衛技術というのは、軍事技術と民生技術がはっきり分かれているわけではありません。むしろ、民生技術で開発されたものを防衛でも使うということが必要になっている時代」とし、

「防衛省の予算を使って研究するのは軍事研究だからだめだ、みたいな短絡的なことではないようにやってもらわなければいけない」と述べた。

会員候補6人の任命拒否については「一度きちんと政府の中で任命されなかった理由を聞いてみて、それから考えていきたい」と述べた。

〇多様性

選択的夫婦別姓・同性婚について、「いずれも賛成」と述べた。「ただ同性婚については、憲法上の問題をどうするのかというところは当然あるだろうと思う」

「こういう価値観が問われる問題については、私は、国会で党議拘束をやめてご議論頂くのが良いのではないか」。「国会というのはやはり国民の声を代表してそこで決めるわけですから、国会でしっかり議論をして頂いて結論を出すというのが大事なことだと思います」。

自民党内の女性議員の比率については、「少しずつ女性議員を増やしていく努力というのはしていかなくてはいけないのだろうと思います」「女性が手を挙げられるような環境を作るというのも大事なことだ」とした。「今の段階で一気に数字でクオータを決めますというのが良いかどうかは、私は疑問を持っています」とも述べた。

▲写真 ⒸJapan In-depth編集部

再生可能エネルギー

バックアップ電源として火力発電を重視する考え方について、「今すぐバックアップなしというのはできない」と断り、蓄電池など「様々バックアップのやり方が出ている中で、将来的にどう考えるかという中長期戦略が必要」とした。

「国がきちんとした方針を示して、今後必要になってくる部分にきちんと投資が行われるような政策的なリーダーシップをとっていくのが大事。これから火力発電、石炭・石油は衰退していく。カーボンニュートラルを考えれば、天然ガスにも終わりが来るわけで。今あるものを『さっさと明日つぶせ』というつもりはありませんけれども、『この分野はこれから伸びるんだからこの分野に投資をしてください』と伝わるようなメッセージの出し方をしないと、古いもの、衰退するものを守って新しいものはよその国にとられる、ということにこれまでなってきた。だから太陽光も風力も日本からなくなってしまった。あの過ちを繰り返してはならない」。

〇経済・金融政策

アベノミクスについては、「金融・財政、最初の2本の矢で経済を再起動させ、三本目の成長戦略につなげるところでありましたけれど、残念ながら成長戦略の部分が完全に点火しきれなかったのではないか」と評価した。

「もう一つは、円安で企業の利益が非常に大きく膨らみましたが、それが内部留保にとどまって、なかなか賃金に波及してこなかったというのがはっきりしています。労働分配率を高めたところは法人税の特例を設けるとか。今でも制度はあるけれど実際には使われていないところもあります。積極的に、目指すは賃金だというところをはっきりしていかなければいけない」。

経済対策の規模について問われると、「大事なのは中身ではないか」と述べて「数字ありき」の考え方を批判した。

「じゃあどこに焦点をあてるのか。『コロナ前に戻ります』ということではなくて、まず『前へ進めるために必要なものはこういうメニューだよね』というところを議論したうえで、『規模としてはこんな感じだ』というのを組み合わせていくのが良い」。

「これからの未来への投資というのを考えたときに、必要なものはこういうことだと、しっかり検討して出せれば規模はおのずと決まってくる」。

〇政治とカネ問題

「党員の皆様に党費の使い方がきちんとお伝えできるというのは大事なことだと思っています。党のガバナンスをしっかりと規定していく必要がある」。

〇会議体の整理

「決まっていることを承認するだけの会議はもうやめた方がいい」。

「各省庁から官邸だったり内閣官房だったり内閣府だったりに、けっこう人が寄せられている。会議体を減らすことで各省に戻してあげないと、働き方改革というときに人材・人数が足りないところもありますから。会議体のために寄せたものは権限と一緒に戻してあげる」。

〇党員票獲得の戦略

「党員と国会議員の合計票数が同じという総裁選挙なので、党員票は非常に大事。国民の一員である党員の絶大なる支援を得て総裁選に勝つというのは非常に重要なこと。国民の皆様の絶大なる支援を頂いて国のリーダーとして日本を引っ張っていくというのが大事。『政治は広く国民のもの』という立党宣言を考えれば、党員であれなかれ国民の皆様にきちんとメッセージをお出して国民の皆様の支援を頂くことが大事だと思います」。

〇核燃料サイクル

原発設置区域の住民に対しては、「まずきちんとご説明をして、将来展望が描けるというのが何よりも大事なこと」と述べた。

「地域の社会経済、将来的にどう発展させていくのか、使用済み核燃料をどういうふうに処理していくのか、様々解決しなければいけない問題があります。それを一つ一つご納得いただくプロセスが大事だと思います。もちろん電力会社の財務上の問題などもありますから、そういう問題をクリアしていくというのは、容易なことではない」。

「本来核燃料サイクルが描いていた高速増殖炉が結局開発できなくなってしまったということで、プルトニウムの処理をしていく。また、再処理を進めればプルトニウムの量が増えていく。その一方、使用済み核燃料プール、再稼働するとかなり速いペースでいっぱいになってしまう。そういう喫緊の課題もある中で、やはり核燃料サイクルが成り立たなくなった原子力発電を、どういうふうに今後やっていくのかということを、きちんと議論する必要があるんだろうと思っています。使用済み核燃料の処分地をどうするかということにもかかわってくる話ですから、広く国民の皆様にこの問題を理解をしていただいて、まず青森県六ケ所村の皆様が、将来展望をなるほどと思って頂けるような状況にしていかなければならないと思います」。

直接処分について問われると、

「直接処分についても以前から、そういう選択肢もあるということを経産省、エネ庁、滲み出させています。核ごみをどう処分するのかというのは、日本全体で既に原子力発電をやっていますから、出てきている核のごみもある。あるいは今後ウラン燃料を燃やせば出てくる使用済み核燃料というのは当然出てきます。あるいは再処理工場、いつか廃炉になった時にこれを解体した時にどう処分するのか。もうすでに解決しなければいけない問題があるわけですから、それをどうやって行くのかというところはしっかり考える必要があると思います。

「今いずれにしろ十万年果たして人類が責任をもって処分できるのかという議論があると思います。これを科学技術の力で少なくとも数百年単位まで短くすることができれば、もう少し現実的な処理期間にできるのではないか(という見解がある)。これはこれで、しっかりチャレンジすれば良いだろうと思います」。

「プルトニウムをどう処分するのかというのは、核兵器の材料にもなりますし、テロリストの狙っているものの一つでもあると思いますから、かなり厳重に考えていかなければいけない。日本単独でできないのであるならば、各国にも相談をしなければならないのだろうと思います」。

「やらなければならないことはかなりたくさんあります。ですから原子力について今抱えている問題を世の中にきちんとお示ししてきちんと議論をしていく、正しい理解をしていただいたうえで議論をしながら、一つずつ問題を解決していくことが大事だと思います。これまで国策に協力を頂いたみなさんにご迷惑を改めてかけるようなことはしたくないと思っておりますので、地域の皆さんとは真摯にいろんなことをご相談申し上げていきたい」。

トップ写真:ⒸJapan In-depth編集部




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