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.政治  投稿日:2022/2/10

「石原イズム」を高岡で カラスと客引き「浄化作戦」を 富山県高岡市カラス問題 その5


出町譲(高岡市議会議員・作家)

【まとめ】

・石原慎太郎氏は筆者の「師匠」であり「ライバル」。

・ストレートな発言と実行力、強い信念とリーダーシップが重要。

・高岡市はカラスと客引きを退治すべき。石原イズムを引き継ぎたい。 

石原慎太郎さん死去は大きなニュースとなりました。お会いしたことはありませんが、心の中では師匠だと思っていました。その理由は、肩書です。

「政治家と作家」。2つの肩書は、私と同じです。

もちろん、石原さんは東京都知事で、ベストセラー作家。若い時に、芥川賞も取った堂々たる経歴の持ち主です。そして東京都知事としても、辣腕を振るいました。

一方、私は、遅出の市議会議員で、売れない作家。テレビ朝日に勤務していたころから、作家を名乗っていますが、ぱっとしていません。ただ、それでも胸を張りたい。「政治家兼作家」は共通点です。

政治家、作家としての力量は歴然としていますが、一度だけ、肩を並べたことがありました。2011年に同じ時期に本を出したのです。東日本大震災を経験し、やむにやまれぬ思いで筆をとったのは同じです。

「意気消沈した日本人よ、立ち直れ」。そんなメッセージを伝えたい。それは石原さんと共通していました。

私が出版したのが「清貧と復興 土光敏夫100の言葉」(文藝春秋)

私にとっては最初の著作で、唯一のベストセラーでした。土光敏夫と言えば、「メザシの土光さん」。国鉄民営化の際には第二臨調の会長。さらには、石川島播磨、東芝、経団連会長としてかじ取りをしました。私はこの土光敏夫の生き方、さらには生き方が刻み込まれた言葉を記すことで、震災で打ちひしがれた日本人を勇気づけようとしました。

一方で、石原さんは「新・堕落論ー我欲と天罰」(新潮社)

ある時期、紀伊国屋や三省堂では、ベストセラーで肩を並べたのです。

ずらっと平積みされた書店。

「石原慎太郎と出町譲」。

本屋で隣同士で、お互いの本が平積み。それを見ると、嬉しかったですね。

亡くなった妻はいつも書店回り。

「石原さんに負けないように本3冊買ったから」。

私の本をいつも買ってくれていました。

全国紙の売れ行きランキングでも、石原慎太郎と出町譲の名前が抜きつ抜かれつでした。出している出版社は、文藝春秋と新潮社というライバル。僕はひそかに、「ライバルは石原慎太郎」と考えていました。

石原さんの「新・堕落論」は、坂口安吾の「堕落論」の現代版。東日本大震災を踏まえて、日本人よ立ち直れ。アメリカ追従を脱しろ。そんなメッセージを記した本です。素晴らしい本です。皆さま、お読みになられたらいかがでしょうか。

政治家になってふと思います。石原さんは曖昧な言葉でなく、ストレートに発言。曖昧な言葉でその場を取り繕うことはなかったですね。今の高岡市でも、政治の世界ではあいまいな言葉が横行しています。高岡市議会の様子を見れば、石原さんは激怒するでしょう。

しかも、驚くのは石原さんの実行力歌舞伎町浄化作戦を打ち出したのも石原さんです。客引きによる店の呼び込みが一切禁止となり、無許可営業していた風俗店も姿を消しました。具体的には2005年から「東京都迷惑条例」が強化されたのです。暴力団風の人は見かけなくなり、まちの風景は変わりました。

写真)新宿区歌舞伎町

出典)Photo by fotoVoyager/Getty Images

石原さんは、スモールサクセス(小さな成功)を連発したのです。主要政策については、テレビや新聞でたくさん取り上げられるので、あえて書きませんが、石原さん、増え続けるカラス対策についても熱心でした。早い段階で、カラス退治を打ち上げました。捕獲とゴミ処理を徹底し、東京都からカラスを一掃しようとしたのです。

それは成功しました。2001年には、東京都には3万6400羽いましたが、そこから急減。2020年には1万1000羽に減少しています。多い年には1万8000羽も捕獲したのです。石原さん退任後も、東京都民は石原さんのおかげで、カラスの問題に悩まされていないのです。

さて翻って高岡です。カラスは根深い問題だと思います。来年度の予算で、カラス対策はどれだけ盛られるのか。わかりませんが、市当局はあまり積極的ではありません。さらに、高岡市の飲食店街を歩くと、いまだに数多くの客引きです。まったく野放図の状態です。

政治には強い信念とリーダーシップが必要だと思います。カラスと客引きを退治した石原さん。一方、わが故郷高岡には、カラスと客引きが絶えません。「高岡市浄化作戦」が必要なのです。

私は、高岡市で石原イズムを引き継ぎたいと思っています。改めて政治家として何をすべきか、考えています。

(つづく。その1その2その3その4

トップ画像)東京都知事として記者会見に臨む石原慎太郎氏(2009年1月13日)

出典)Photo by Kiyoshi Ota/Getty Image

 

 




この記事を書いた人
出町譲高岡市議会議員・作家

1964年富山県高岡市生まれ。

富山県立高岡高校、早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。


90年時事通信社入社。ニューヨーク特派員などを経て、2001年テレビ朝日入社。経済部で、内閣府や財界などを担当した。その後は、「報道ステーション」や「グッド!モーニング」など報道番組のデスクを務めた。


テレビ朝日に勤務しながら、11年の東日本大震災をきっかけに執筆活動を開始。『清貧と復興 土光敏夫100の言葉』(2011年、文藝春秋)はベストセラーに。


その後も、『母の力 土光敏夫をつくった100の言葉』(2013年、文藝春秋)、『九転十起 事業の鬼・浅野総一郎』(2013年、幻冬舎)、『景気を仕掛けた男 「丸井」創業者・青井忠治』(2015年、幻冬舎)、『日本への遺言 地域再生の神様《豊重哲郎》が起した奇跡』(2017年、幻冬舎)『現場発! ニッポン再興』(2019年、晶文社)などを出版した。


21年1月 故郷高岡の再興を目指して帰郷。

同年7月 高岡市長選に出馬。19,445票の信任を得るも志叶わず。

同年10月 高岡市議会議員選挙に立候補し、候補者29人中2位で当選。8,656票の得票数は、トップ当選の嶋川武秀氏(11,604票)と共に高岡市議会議員選挙の最高得票数を上回った。

出町譲

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