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.政治  投稿日:2022/1/4

新会派「高岡愛」とカラス質問 富山県高岡市カラス問題その1


出町譲(高岡市議会議員・作家)

【まとめ】

・テレビ局員を辞め、38年ぶりに故郷に戻り市議に。かつて栄えた高岡市は空き家やシャッター街が急増。

・市議会ではカラス対策に絞り質問。カラスの大群は市民生活、観光、生態系などを脅かしている。

・カラス対策は故郷再生のカギ。功を奏せば、高岡市は変わる。

 

私は2021年11月から、生まれ故郷である富山県高岡市で市議会議員をさせていただいています。

この年の1月31日までテレビ朝日に勤めていました。大学を卒業後、時事通信に11年、テレビ朝日に19年。30年間のマスコミ生活を捨てて、地元で政治活動を始めています。

高岡市は人口16万7千人。県内第2の都市です。しかし、年々人口が1,000人ほど減少、空き家やシャッター街が急増しています。かつて商都として栄え、富山市とも匹敵する勢いがありましたが、見る影もない状況です。

▲写真 高岡駅前の様子(2014年7月) 出典:SLTc/flickr

私がなぜ、市議になったのか。それについては、後ほど詳しくお伝えします。いろいろ理由があり、じっくりお話したいからです。

ただ、テレビ局の社員から市議になるというのは、異例です。

テレビ朝日出身の政治家は何人もいます。オリンピック担当大臣などを歴任した参議院議員の丸川珠代さん、鹿児島県知事から衆議院議員になった三反園訓さん、同じく衆議院議員の笠浩史さん。いずれの方も、私にとって親しい同僚でした。世代的にも近い人たちです。

テレビ朝日など大手マスコミで、政治家に転身と言えば、国会議員、もしくは都議会議員への転身というパターンが多いのです。

なぜ市議を選んだか。その前に、私は市議としてどんな仕事をやっているのか。その報告から始めます。

高岡市の2021年12月定例会は、異様な盛り上がりを見せていました。特に14日は傍聴人が87人。今年最も多かったのです。

その理由は、私が属している会派「高岡愛」の3人が質問に立ったからです。「高岡愛」は12月定例会では、偶然にも13日に質問したのです。

この日の午後、熊木義城議員(26歳)、嶋川武秀議員(43歳)、私の順で質問しました。「高岡愛」は3人の会派で、いずれも新人です。自民党系ですが、1カ月半前に会派ができたばかりです。この会派になぜ、注目が集まっているのか。

市議会の定員は27人で、3人の会派と言えば、人数的には、弱小です。

しかし、嶋川議員と熊木議員、そして私と合わせると、有効得票数の26%を占めています。議員の数は少ないのですが、市民の民意からみれば、最大会派なのです。

私は57歳。最も年齢が上なので、「高岡愛」の会長に就任しました。

▲写真 嶋川武秀議員(真ん中)、筆者(右):筆者提供

私の質問のテーマはカラス対策一本に絞りました。住んでいる地元がカラスに悩まされており、住民の要請を受けて質問したのではありません。そんなちんけなことを考えてはいません。

この問題こそが、高岡市再生のカギになると考えたのです。

私は議場で、ヒッチコック監督の不朽の名作、『』という映画を引き合いに出しました。鳥が住民を襲い、町中がパニックになるというストーリーです。それに近い現実が高岡に忍び寄っているのではないかと感じたからです。

▲写真 映画『鳥』のヒッチコック監督(1899-1980) 出典:Photo by Hulton Archive/Getty Images

私は今年、38年ぶりに故郷、高岡市に戻ってきました。

夕方になると、無数のカラスが近くの電線にとまり、あたり一帯で激しい鳴き声が聞こえます。早朝もそうです。そして白い糞です。道路やクルマに糞が散乱しています。

住民は毎日、清掃しています。糞の悪臭も漂います。カラスに襲われたという住民もいます。郊外では、農作物被害も出ています。カラスは市民生活を脅かす存在になっています。

一方、私が住んでいるところは、高岡観光の中心です。市内屈指の観光地である古城公園と、高岡大仏に挟まれています。高岡市の玄関口といっても過言ではありません。この地がカラスに占拠されているのは、観光客の目からすれば、高岡市のイメージダウンにつながります。

▲写真 高岡大仏(2014年8月) 出典:Izu navi/flickr

コロナが一段落すれば、日本国内、さらには海外からの観光客を迎え入れる最大のチャンスです。しかし、カラスの大群がいるのに、観光客は来るでしょうか。

また、スズメが減ったのも、カラスが増加したためと言われています。カラスがスズメのひなや卵を捕獲しているのです。

市民生活、観光、生態系など、あらゆる側面から、カラス対策は待ったなしなのです。

私の肌感覚では、カラスの数は増えるばかりです。対策はされてきたのでしょうが、目に見える効果は表れていません。

私は冒頭でも申し上げましたが、カラス対策が功を奏せば、高岡市が変わると本気で思っています。

それは、30年ほどの取材活動で教えていただいたスモールサクセス(小さな成功)という言葉が理由です。次回はスモールサクセスの意味についてお伝えします。

(続く)

トップ写真:カラスの群れ(イメージ) 出典:iStock / Getty Images Plus

 

【訂正】2022年1月12日

本記事(初掲載日2022年1月4日)の本文中に間違いがありました。お詫びして訂正いたします。本文では既に訂正済みです。

誤:高岡市の2021年12月定例会は、異様な盛り上がりを見せていました。特に13日は傍聴人が87人。

正:高岡市の2021年12月定例会は、異様な盛り上がりを見せていました。特に14日は傍聴人が87人。




この記事を書いた人
出町譲高岡市議会議員・作家

1964年富山県高岡市生まれ。

富山県立高岡高校、早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。


90年時事通信社入社。ニューヨーク特派員などを経て、2001年テレビ朝日入社。経済部で、内閣府や財界などを担当した。その後は、「報道ステーション」や「グッド!モーニング」など報道番組のデスクを務めた。


テレビ朝日に勤務しながら、11年の東日本大震災をきっかけに執筆活動を開始。『清貧と復興 土光敏夫100の言葉』(2011年、文藝春秋)はベストセラーに。


その後も、『母の力 土光敏夫をつくった100の言葉』(2013年、文藝春秋)、『九転十起 事業の鬼・浅野総一郎』(2013年、幻冬舎)、『景気を仕掛けた男 「丸井」創業者・青井忠治』(2015年、幻冬舎)、『日本への遺言 地域再生の神様《豊重哲郎》が起した奇跡』(2017年、幻冬舎)『現場発! ニッポン再興』(2019年、晶文社)などを出版した。


21年1月 故郷高岡の再興を目指して帰郷。

同年7月 高岡市長選に出馬。19,445票の信任を得るも志叶わず。

同年10月 高岡市議会議員選挙に立候補し、候補者29人中2位で当選。8,656票の得票数は、トップ当選の嶋川武秀氏(11,604票)と共に高岡市議会議員選挙の最高得票数を上回った。

出町譲

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