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.政治  投稿日:2022/1/9

カラス対策とトップの熱意 富山県高岡市カラス問題その3


出町譲(高岡市議会議員・作家)

【まとめ】

・カラス対策にとって何より重要なのは、結果を求めるリーダーの情熱。

・富山市の森雅志元市長と東京都の石原慎太郎元知事はカラス対策で成果を上げた。

・2人は、「現状把握、対策、効果の検証」というシンプルな基本動作を行った。

 

カラス対策にとって何より、重要なのは、結果を求めるリーダーの情熱です。スモールサクセスを求めるかどうか。それが大切なのです。ほかの自治体の事例を見ても、リーダーが熱量をもって、動けば、カラス対策の効果は確実に出ます。

2人の著名首長が動きました。1人は、富山市で去年4月まで市長を務めていた森雅志さんです。もう1人は東京都の石原慎太郎さんです。

▲写真 森雅志氏 出典:森雅志ブログ&エッセイ

森さんと言えば、全国でいち早くコンパクトシティーを実現し、人口減少社会に先手を打った市長です。郊外にどんどんまちが広がっていく状況に危機感を抱いたのです。

私はかねがね森さんの手腕に関心を抱いていましたが、今回改めてカラス対策を調べ、驚きました。2007年度には1万1898羽いたカラスは、2020年度には1497羽まで減少しています。実に9割近く減っているのです。

何をやったのか。それはシンプルです。まずは、2005年度からカラスの生息数の調査を実施しました。ねぐらとなっている城址公園周辺が対象です。富山市では、そこで、この周辺に入ってくるカラスの数について調査しているのです。それは今も続いています。

さらに、カラス捕獲用のおりについては、城址公園内に6基、郊外に2基、ビルの屋上に5基の計13基あります。その結果、富山市ではおりに入るカラスは年間2000羽以上となっています。森雅史前市長は「やると決めて、とにかく個体数を減らした」と語っています。

また、富山市では城址公園にこんな立て看板も出しました。

「烏(カラス)ニ告グ ココデ餌ヲ食ウベカラズ――」

「カラス居座り禁止」

賢いカラスが文字を読めるのか。そう思う人がいるかもしれませんが、それは違います。カラスは、文字を理解できません。

しかし、追い払うのに、一定の効果があるのです。その理由は、この看板を見た人が、カラスに注目します。カラスはもともと、人の視線を嫌がる習性があるのです。その結果、カラスが逃げていくのです。

さらに、カラスへのエサやり禁止条例(正式名称:富山市カラス被害防止条例)もつくりました。

城址公園付近でエサやりをした人を想定した条例です。エサをやった人に対し、指導、勧告した上で命令に従わない場合は氏名を公表。さらに、警察に告発して5万円以下の罰金を科すことになるものです。

この条例制定後、餌やりはなくなりました。また、罰金になったケースはありません。罰則付きの条例には抑止効果が十分あるのです。

富山市はまた、カラスを捕獲した人に700円支払っています。

とにかく、なりふり構わず、次々にカラス対策の手を打っているのです。

東京都も、そうです。石原慎太郎元知事は、みずから陣頭指揮を執り、「カラス退治」を全面に打ち出しました。「カラス対策」プロジェクトチームをつくり、「捕獲器の設置」と「ゴミ集積場への防鳥ネットの配布」を実施したのです。

すぐに成果が現れました。2001年に3万6400羽いたカラスは、2年後の03年は2万3400羽に減り、2020年には1万1000羽にまで激減しているのです。

東京都は多い年には1万8000羽以上捕獲しました。

▲図 カラス生息数調査結果の推移 出典:東京都環境局自然環境部計画課

「個体数を減らす」。その原則は、富山市の森前市長と連なっています。

石原さんは「カラスのミートパイ」を東京名物として売り出そうとしました。

こうしたカラス対策に奔走した結果、都民のカラスに対する苦情も激減しました。都庁に寄せられる苦情の数は現在、ピーク時の90%減少しています。

私は30年以上東京で暮らしていましたが、カラスをすっかり見かけなくなりました。都市の風景が変わったのです。

現状把握、対策、効果の検証」。このシンプルな基本動作を行ったのが、森雅志さんと石原慎太郎さんです。科学的データをもとに、対策を実行する。しかも、さまざまな対策を波状攻撃のように打ち続ける。それが結果に結びついています。リーダーが、本気で対策を打ち出し、事態が大きく改善したのです。

私は今回の議会で、高岡市に対し、いっそうのカラス対策を求めました。次回は、私の質問に、市はどう答えたのか。お伝えします。

(その4に続く。その1その2

トップ写真:木々に集まるムクドリの群れ 2021年12月23日イギリス・ペンザンス(記事とは関係ありません) 出典:Photo by Hugh R Hastings/Getty Images

 

【訂正】2022年1月12日

本記事(初掲載日2022年1月9日)の本文中に間違いがありました。お詫びして訂正いたします。本文では既に訂正済みです。

誤:・富山市の森雅志元知事と東京都の石原慎太郎元知事はカラス対策で成果を上げた。

正:・富山市の森雅志元市長と東京都の石原慎太郎元知事はカラス対策で成果を上げた。




この記事を書いた人
出町譲高岡市議会議員・作家

1964年富山県高岡市生まれ。

富山県立高岡高校、早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。


90年時事通信社入社。ニューヨーク特派員などを経て、2001年テレビ朝日入社。経済部で、内閣府や財界などを担当した。その後は、「報道ステーション」や「グッド!モーニング」など報道番組のデスクを務めた。

テレビ朝日に勤務しながら、11年の東日本大震災をきっかけに執筆活動を開始。『清貧と復興 土光敏夫100の言葉』(2011年、文藝春秋)はベストセラーに。

その後も、『母の力 土光敏夫をつくった100の言葉』(2013年、文藝春秋)、『九転十起 事業の鬼・浅野総一郎』(2013年、幻冬舎)、『景気を仕掛けた男 「丸井」創業者・青井忠治』(2015年、幻冬舎)、『日本への遺言 地域再生の神様《豊重哲郎》が起した奇跡』(2017年、幻冬舎)『現場発! ニッポン再興』(2019年、晶文社)などを出版した。

21年1月 故郷高岡の再興を目指して帰郷。

同年7月 高岡市長選に出馬。19,445票の信任を得るも志叶わず。

同年10月 高岡市議会議員選挙に立候補し、候補者29人中2位で当選。8,656票の得票数は、トップ当選の嶋川武秀氏(11,604票)と共に高岡市議会議員選挙の最高得票数を上回った。

出町譲

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