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.国際  投稿日:2022/3/24

ロシア経済と距離を取りつつある中国


澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)

【まとめ】

・CNNビジネスによると、北京はモスクワと距離を取ろうとしている。

・ウクライナ侵攻に対し直接的な批判は控えつつ、支援には踏み切らない。

・モスクワが人民元で保有する900億米ドル相当の外貨準備によって、ロシア経済の行き詰まりを救うことができる。

 

 今年(2022年)2月24日、ロシアのウクライナ侵攻と共に、中国の動向が注目されている。果たして、北京は、モスクワを支援するのだろうか。それとも、“中立的”な立場を維持するのだろうか。

 

  米『CNNビジネス』が「中国がロシアを静かに苦しめている4つの方法 」(2022年3月17日付)という興味深い記事(a)を掲載した。もし、中国がこれらを“故意”に行っているとすれば、北京はモスクワと距離を取ろうとしている姿勢が窺えよう。

 

以下、その概略を披露したい。

 

今、ロシアは世界中から経済制裁を受けている。だが、中国はロシア経済から静かに距離を置いているようだ。

 

北京は、ロシアのウクライナ侵攻への非難を避けている。他方、北京は、西側のロシアへの経済制裁の影響を受けないよう努めている。アナリストによれば、習近平政権はロシアを美辞麗句で支持しつつも、米国をこれ以上、中国に敵対させてはまずいとして、微妙なバランスを取ろうとしているという。

 

北京とモスクワは、西側諸国に挑戦するという戦略的な利害関係を共有する。しかし、中国の銀行は米ドルへのアクセスを失うわけにはいかない。

 

中国はロシアにとって第1位の貿易相手国だが、両国間の貿易は中国総貿易量のわずか2%に過ぎない。昨年の中国税関統計によると、EUや米国の方がはるかに大きなシェアを占めている。

 

北京がロシア経済から距離を置くために、この数週間で採った措置を紹介する。

 

第1に、ルーブルの下落放置である。

 

人民元は、中国人民銀行の当局者が設定した範囲の中で動いている。先週、中国人民銀行はルーブルの取引幅を2倍に拡大し、ロシアの通貨がより速く下落するようにした。

 

ロシア・ウクライナ戦争が始まって以来、ルーブルは米ドルとユーロに対してすでに20%以上、値を下げている。北京は人民元に対してロシアの通貨を下落させることで、モスクワに不利益をもたらした。

 

そのため、ロシア人はスマートフォンや自動車などの中国産輸入品に対し、更に多くのルーブルを支払わなければならない。ロシアではシャオミファーウェイなど中国の携帯電話が大人気である。

 

また、長城汽車や吉利汽車などの中国自動車メーカーは、ロシア市場の7%を占め、昨年は11万5000台以上を販売している。長城汽車は為替レートの変動が原因で、ロシアのディーラーへの新車供給を停止した。なお、現在、中ロ貿易のうち約250億米ドルは人民元建てで行われている。

 

第2に、外貨準備の上に胡坐をかき、何もしない

 

中国がロシアに提供できる最も重要な支援は、モスクワが人民元で保有する900億米ドル相当の外貨準備だという。欧米諸国がロシア中央銀行との取引を禁止しているため、その制裁によりロシアの外貨準備高、約3150億米ドル相当、つまり全体の約半分が凍結されている。

 

ロシアが米ドルとユーロへのアクセスを遮断された後、モスクワは人民元建て外貨準備を利用したいと表明したという。もし中国がモスクワの人民元建て外貨準備を米ドルやユーロに交換することを認めれば、ロシア経済の行き詰まりを救うことになる。だが、中国人民銀行は、今のところ、外貨準備に関する立場について何のコメントも出していない。

 

第3に、航空機部品の差し止めである。

 

米国とEUによる制裁措置により、世界の2大航空機メーカーであるボーイングとエアバスは、ロシアの航空会社に対してスペアパーツの供給やメンテナンスサポートを行うことができなくなった。ジェットエンジンメーカーも同様である。

 

そこで、ロシアの航空会社は数週間のうちに部品を使い果たすか、安全な運航のために必要な部品を交換しないまま飛行機を運行する事になるだろう。

 

3月初め、ロシア政府高官は、代替供給先の中国がロシアへの航空機部品の送付を拒否していると語った。ロシアは、中国からの部品調達に失敗した後、トルコやインド等の国々から調達しようとしている。

 

ちなみに、中国とロシアは2017年に民間航空合弁会社を設立した。そして、両国はボーイングとエアバスの2強に対抗すべく、新しい長距離用ワイドボディ旅客機を製造している。そのCR929の生産は開始されたが、目下、サプライヤーをめぐる意見の相違から、顧客への販売遅延となっているという。

 

第4に、インフラ投資の凍結である。

 

世界銀行は、ロシアによるウクライナ侵攻を受け、ロシアとベラルーシのプログラムをすべて停止した。同銀行は、2014年以降、ロシアに対し新たな融資や投資を一切承認していない。

▲写真 中国北京の金融街にあるアジアインフラ投資銀行(AIIB)の様子 出典:Photo by Emmanuel Wong/Getty Images

 

実は、北京に本拠を置くアジアインフラ投資銀行(AIIB)が同じ決断をしている。今月上旬の声明で、ロシア・ウクライナ戦争に伴い、ロシアとベラルーシに関連するすべての活動を停止すると発表した。

 

AIIBがロシアでの活動停止を決定したことで、同国の道路・鉄道網の改善を目的とした11億米ドルの融資が保留されている。

 

 

 

(注a) 中国がロシアを静かに苦しめている4つの方法

 

 

 

 

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