【ファクトチェック】共同通信「G7、インフラ投資81兆円」→正確
【まとめ】
・共同通信が「G7、インフラ投資81兆円」と題した記事を配信。
・G7が日本円で81兆円に相当する6千億ドルを、途上国のインフラ投資に回すことは事実。
・主語はあくまでG7であり、見出しの拠出額が日本円表記だからといって、日本が全額負担するかのような印象を与えるとまではいえない。よって「正確」と判断した。
共同通信が6月27日、「G7、インフラ投資81兆円 途上国支援、中国に対抗」と題した記事を配信した。
「バイデン米政権は26日、先進7カ国(G7)が連携して、発展途上国のインフラ整備に投資する新たな枠組みの創設を発表した。今後5年間で官民合わせて6千億ドル(約81兆円)の拠出を目指す。インド太平洋地域などで経済的な影響力を強める中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に対抗する。岸田文雄首相は日本として650億ドル以上を担う考えを表明した」
これに対し、Twitter上で以下の指摘があった。
「6000億ドルを拠出であって81兆円は拠出しない」
▲twitterリンク
今回は、この指摘についてファクトチェックする。
まず、記事前半部分に関して、ホワイトハウスの報告では、
「Today, President Biden will announce that the U.S. aims to mobilize $200 billion for PGII over the next 5 years through grants, Federal financing, and leveraging private sector investments. Together with G7 partners, we aim to mobilize $600 billion by 2027 in global infrastructure investments.」
※PGII:Partnership for Global Infrastructure
(本日、バイデン大統領は、米国が助成金、連邦政府の資金調達、および民間部門の投資の活用を通じて、今後5年間でPGIIに2,000億ドルを動員することを目指していることを発表する。 G7パートナーと協力して、2027年までに世界のインフラ投資に6,000億ドルを動員することを目指す)
と記されている。
つまり、アメリカが官民合わせて2千億ドル、G7の国々が協力して6千億ドルの拠出を目指すという内容である。
このことから、当該記事の前半部分については、誤りはないと言える。
また、今回発表されたG7の途上国のインフラ整備について、NHKでは、
「ドイツで開かれているG7サミット=主要7か国首脳会議の関連行事で、岸田総理大臣は、民間資金も含めて今後5年間で650億ドル以上を途上国のインフラ開発に投じる考えを明らかにしました」
と報じられており、共同通信記事の後半部分についても誤りはないものと見られる。
ただし、共同通信の記事タイトルは、「G7、インフラ投資81兆円 途上国支援、中国に対抗」となっている。今回のG7の決定では、G7が協力して6千億ドル(81兆円相当)を拠出することを目指すとされているが、このタイトルではその拠出額が日本円で表記されている。そのため、今回端緒となったツイートは、途上国のインフラ整備のために、日本が81兆円を拠出するという誤解を生む可能性があることを指摘したものと見られる。
しかし、この見出しの主語はあくまでG7だ。総額をドル表記ではなく、円表記にしたのは、読者に総額がイメージしやすいようにとの配慮からであり、ミスリードする意図はなかったものと思われる。この見出しから「日本が81兆円拠出する」と読み取るには無理がある。
以上、記事の本文に誤りはなく、見出しが読者の誤解を呼ぶほど不適切だとまでは言えないことから、当該記事は「正確」と判断する。
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トップ写真:G7エルマウ・サミットでの各国首脳(2022年6月26日 ドイツ エルマウ) 出典:首相官邸