<金融がヤバいのは中国だけではない>日本で長期金利が1%上昇すれば地銀だけで数兆円の評価損が出る
Japan In-Depth副編集長(国際・外交担当)
藤田正美(ジャーナリスト)
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中国経済のリスクについては先週書いた。英紙フィナンシャルタイムズが連載記事「シャドーバンキングの研究」を始めたのも、中国が世界経済にとってのリスクであると考えているからだ。
もっとも金融の世界では中国だけが「やばい」わけではない。順調に回復しているかに見えるアメリカ経済もリスクを抱えている。
それは何と言っても、超金融緩和の縮小→金融の正常化→金利の上昇→債券相場の下落→金融機関の含み損、という流れをどう乗り切るかということだ。もちろんこうした流れは通常でも存在する。しかし人類の歴史上、これだけの規模で金融が緩和され、資金があふれている状態だったことはない。
金利が上昇する見通しになれば、2008年以来じゃぶじゃぶになっていた市場から資金が逃げ出すことになる。機関投資家が逃げ出せば債券相場は暴落することになりかねない。そうなれば長期金利が上昇して、さらに債券相場に下押し圧力が働くことになる。超金融緩和から正常な状態にソフトランディングさせることは、簡単なことではないのである。
もちろん日本も同じことだ。だからこそメガバンクは、保有する国債の平均償還期限をどんどん短くしてきた。残存期間が長い国債を売り、短い者に入れ替えてきたのである。しかし地銀などはそれがなかなか進まない。入れ替えは収益力を落とすことにつながるし、債券運用の利益減を相殺できるような収入源がないからだ。
その結果、もし日本で長期金利が1%上昇するようなことがあれば地銀だけで数兆円の評価損が出る。評価損はすぐに与信を減らすことにつながる。自己資本が毀損すれば与信を減らさざるをえないのが銀行のルールだ。
金利上昇が時間をかけてゆっくり進めば、それほど心配はない。銀行は評価孫を何とか吸収しながら、貸出で収益を上げることができるからだ。しかし金利が急上昇すれば、そのショックは大きい。
果たして日銀の黒田総裁が言うように、インフレ率が2%になっても、長期金利を抑え込んでおけるのかどうか。異次元の金融緩和であるだけに、その異次元分をどうやって正常な状態に戻すのかが大問題だと思う。
景気回復で一歩先を行き、年内には量的緩和を終了する予定のアメリカがどう動くのか、そこに日本の近未来が見えるかもしれない。
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