[山田厚俊]<安倍首相が仕掛ける法人税減税>党内の反対を押し切るための“外圧頼み”政治は成功するか?
山田厚俊(ジャーナリスト)
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「ストレス解消は、ゴルフと外遊」と揶揄されるほど、寸暇を惜しんで外遊する安倍晋三首相。このGW期間中も欧州6カ国を歴訪中だ(帰国は5月8日)。
これまでの安倍外交の特徴は、外国で発信し、それを“手形”にして国会運営をリードしてきたことにある。国内世論より先に、海外公約を盾に推し進めてきたといっていいだろう。原発輸出は最たる例だ。
その安倍外交がまたしても“仕掛けて”きた。
今度のターゲットは「法人税減税」だ。 5月1日午前(日本時間同日夜)、英・ロンドンの金融街シティで行われた歓迎晩餐会での講演で、「法人税改革を一層進める」と語った。国内の株価動向をにらみ、外国人投資家の関心の高い法人税減税に言及した格好だ。
単なるリップサービスではない。安倍首相は今年1月、スイスで行われた世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で、4月からの法人減税に触れたうえで「今年、さらなる法人税改革に着手する」と表明していた。つまり、「法人税減税に反対する財務省や党内の財政規律派を無視し、勝手に国際公約してきた」(自民党中堅衆院議員)のである。
4月、首相の諮問機関である政府税調は、特定業界に限って法人税を優遇する「政策減税(租税特別措置)」を見直す方針を固めた。ところが、財務省内では依然として反対は根強く、与党内でも自民党税制調査会(会長・野田毅衆院議員)などで財源の手当てが難しいとして慎重論が根強い。
そのため、安倍首相が思い切った減税に踏み切るには「相当な覚悟がいる」(前出・自民党議員)と見られている。 そうしたなかでの安倍首相のシティ講演。
この意味するところは、諸外国の支持を得てアベノミクスを推し進める、その上で欠かせない施策ということで党内の反対を押し切ろうというものだ。安倍首相の“外圧頼み”政治、今回もうまくいくのだろうか。
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