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.政治  投稿日:2023/1/21

特定空き家」独自の判断基準で 【高岡発ニッポン再興】その49


出町譲(高岡市議会議員・作家)

【まとめ】

・空き家対策特別措置法では「特定空き家」に指定すれば所有者に取り壊しなどの命令ができる。

・市中心部に深刻な空き家があるが、市は建物が老朽化していないため「特定空き家」に指定せず。

・空き家は放置すればどんどん増える。自治体が自ら判断基準持つことが大事。

 

高岡市内を歩いていても、今にも解体しそうな空き家を見かけます。今後、こうした建物はどんどん増えていきそうです。空き家大国ニッポンの大問題です。

2015年5月にある法律が施行されました。空き家対策の切り札とも言われた、空き家対策特別措置法です。行政は、危険性のある「特定空き家」に指定すれば、所有者に取り壊しや、修繕などの命令ができるのです。所有者が従わない場合、行政代執行も可能となります。

この法律が施行されて、最初に具体的に動いたのは、神奈川県の横須賀市でした。2015年10月、老朽化した「特定空き家」を取り壊したのです。空き家対策特別法に基づき、行政代執行で取り壊したのは、横須賀市は全国初でした。

当時、私はテレビ朝日のニュース番組の責任者。取り壊しの一部始終を映像で取材できるとあって、部下に現地に行ってもらい、大きくニュース展開しました。

業者の作業員が窓を外し、取り壊し作業を行っている映像はインパクトがありました。国民の関心が高いからか、視聴率も良かったのです。このころほかの自治体でも行政代執行による解体が相次ぎ、ニュースにしていました。

私は今、高岡市議会議員として空き家問題に直面しています。多くの住民から、対策を求められています。そして、この空き家対策特別措置法について、改めて考えていました。この法律も全国に普及しています。自治体に立ち入り調査権を認めたこの法律は施行から8年経ちました。高岡市では、どんな運用がされているのでしょうか。

高岡市では、現在「特定空き家」に指定されているのは1件だけです。これまで5件特定空き家に指定されましたが、所有者が解体するなどしたため、1件だけとなっています。行政代執行はありません。高岡市では、「特定空き家」になるような空き家が少ないのでしょうか。

高岡市では、国のガイドラインに沿って、指定していますが、独自に基準を設けているのは、千葉県香取市です。

人口はおよそ7万人ですが、11の判定基準を設けて、2つ以上基準で「有」になれば、「特定空き家」になるのです。令和3年5月までは1つの「有」でも、そうなっていました。建物倒壊の危険性のほか、屋根の瓦が落ちてきそうな状況雑草が放置されていることなども基準となっています。

危険な空き家を減らすため、幅広く「特定空き家」にしているのです。香取市では、21年度までに特定空き家に指定したのは450件です。そのうち、行政処分である「命令」を出した件数は39件で、全国トップ。行政代執行で、解体や部分解体したのは、17件です。こちらも全国1位です。香取市の都市整備課は「かかった費用は市が負担しますが、後から所有者に請求しています」

その成果も出ています。空き家の撤去や修繕、活用が進み、特定空き家は82件まで減ったのです。

さて、高岡市です。深刻な現場があります。高岡市福岡の中心部です。空き家の瓦が落ちたことから、道路が1年半ほど通行止めされています。住民にとっては大迷惑です。高岡市は、建物自体はそれほど老朽化していないため、「特定空き家」にはしていないとしています。持ち主に連絡をとっていますが、相手からは何の返事がないそうです。「打つ手なし」の状態なのです。

しかし、香取市の判定基準では、この空き家は「特定空き家」に指定することができます。そうすれば、行政は、所有者を「指導」しても改善しない場合、「勧告」、さらには「命令」することができます。こうした強硬姿勢について、国が法律でお墨付きを与えているのです。

私は、それぞれの自治体がみずから、判断基準を持つことが大事だと考えています。空き家は放置すれば、どんどん増えます。2025年には、持ち家率の高い、団塊の世代が後期高齢者になります。空き家が一気に増える可能性があるのです。高岡市も待ったなしなのです。




この記事を書いた人
出町譲高岡市議会議員・作家

1964年富山県高岡市生まれ。

富山県立高岡高校、早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。


90年時事通信社入社。ニューヨーク特派員などを経て、2001年テレビ朝日入社。経済部で、内閣府や財界などを担当した。その後は、「報道ステーション」や「グッド!モーニング」など報道番組のデスクを務めた。

テレビ朝日に勤務しながら、11年の東日本大震災をきっかけに執筆活動を開始。『清貧と復興 土光敏夫100の言葉』(2011年、文藝春秋)はベストセラーに。

その後も、『母の力 土光敏夫をつくった100の言葉』(2013年、文藝春秋)、『九転十起 事業の鬼・浅野総一郎』(2013年、幻冬舎)、『景気を仕掛けた男 「丸井」創業者・青井忠治』(2015年、幻冬舎)、『日本への遺言 地域再生の神様《豊重哲郎》が起した奇跡』(2017年、幻冬舎)『現場発! ニッポン再興』(2019年、晶文社)などを出版した。

21年1月 故郷高岡の再興を目指して帰郷。

同年7月 高岡市長選に出馬。19,445票の信任を得るも志叶わず。

同年10月 高岡市議会議員選挙に立候補し、候補者29人中2位で当選。8,656票の得票数は、トップ当選の嶋川武秀氏(11,604票)と共に高岡市議会議員選挙の最高得票数を上回った。

出町譲

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