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.国際  投稿日:2024/11/24

ルビオ次期国務長官を注視しよう(上)単なる対中強硬派ではない


古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)

「古森義久の内外透視」

【まとめ】

・トランプ次期政権の国務長官にマルコ・ルビオ氏が任命された。

・ルビオ氏を単に「対中強硬派」というレッテルですますのは不適切.

・ルビオ氏は特に日中関係では日本への支持を一貫して明示してきた。

 

 アメリカのドナルド・トランプ次期大統領が次の政権の幹部の人事を次々に発表し始めた。第一期の試行錯誤のスタートと異なり、今回の新政権形成はスピード感にあふれる。任命する人材もトランプ氏自身の政策に合致する言動をとってきた男女ばかりだ。トランプ氏はなにしろアメリカ国民の多数派から政策面でも圧倒的な信任を得たのだから、その部下に自分の政策に沿った人材を登用することは当然だろう。政治指導者が民主的な選挙でその政策を国民多数派に支持されれば、その政策を民意に忠実に実行することは民主主義政治の根幹だろう。

 次期トランプ政権の新しい顔ぶれでは日本にとってもっとも注視すべきは国務長官に任命されたマルコ・ルビオ上院議員である。国務長官が政権の外交の主軸となることは当然だといえる。だがその新長官が日本に対しては特別の言動をとってきた実績は意味が大きい。トランプ新政権の対日政策にも反映される要因だからだ。 

 しかし日本の主要メディアはルビオ氏に対して「対中強硬派」という短絡なレッテルで済ませている。だがいまのアメリカ政界では共和党に限らず、民主党までも外交にかかわる主要な人物はみな中国に対しては強固な姿勢を保っている。あえて「対中強硬」という単純な形容を使うならば、みな対中強硬派なのだ。

 しかしマルコ・ルビオ上院議員を単に「対中強硬派」というレッテルだけですますのは不適切である。ルビオ氏の外交関与歴には重みがあり、中国に対しては長年の深い考察や鋭い分析を重ねてきたからだ。またルビオ氏はとくに日中関係では日本への支持を一貫して明示してきたのだ。

 ルビオ議員はこれまでの民主党バイデン政権下では上院外交委員会の東アジア太平洋問題小委員会の共和党側筆頭委員だった。つまり日本や中国について審議する上院小委員会の野党トップの議員だったのだ。現段階でもルビオ議員といえば、アメリカ政界全体でも注視される知名度と人気度の高い大物の政治家なのである。

 ルビオ氏は中国共産党政権の国内での人権弾圧を長年、一貫して調査し、その不法を糾弾するアメリカ議会としての対応策を法案として次々に提案してきた。アメリカと中国の対立については単に政治体制の異なりからの対峙ではなく、「文明の衝突」という用語をも使うようになった。

 いまのアメリカと中国の対立は共産主義の政権と自由民主主義の政治体制のぶつかりあいだけではなく、社会、文化、歴史、伝統など両国、そして両国民の間の広範な相違の衝突が主体なのだ、という考察だった。この一点だけをみても、「対中強硬派」というレッテルがあまりに浅薄だということがわかる。

 ルビオ氏の両親はキューバ国民だった。その両親は共産主義独裁のフィデロ・カストロ政権を嫌い、アメリカへ難民として脱出した。両親はフロリダ州に住み、マルコ氏を育てた。マルコ氏は貧しい家庭で苦労しながら、バーテンダーなどのアルバイトを重ね、高等教育を受けて、弁護士となった。弁護士としては成功し、2010年にフロリダ州から連邦議会の上院選挙に立って、当選した。この時点ではまだ39歳の若さだった。

 ルビオ氏は議会でも雄弁で明るいイメージで活躍し、知名度を高めた。2012年の大統領選挙では共和党の副大統領候補にも目された。2016年の大統領選では共和党側の有力候補の一人となり、トランプ氏とも激突した。要するに全国級の有力政治家なのだ。今回の大統領選挙ではトランプ氏に同調する姿勢となっていた。

(下につづく)

トップ写真:マルコ・ルビオ上院議員 2024年11 月 13 日 ワシントン DC

出典:Kevin Dietsch/Getty Images




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