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.経済  投稿日:2023/2/9

渋谷・桜丘再開発 新施設は「Shibuya Sakura Stage」


Japan In-depth編集部横塚愛実

【まとめ】

渋谷の新たなランドマークとなる新施設名は「Shibuya Sakura Stage」。

・エリア全体の国際競争力を強化し、多様な世代が住み訪れる活力のあるまちを目指す。

・新施設の竣工は今年11月30日、まちびらきは来年夏を目指す。

 

日本有数のターミナル駅、渋谷の再開発が加速している。

桜丘(さくらがおか)地区と呼ばれるJR東日本渋谷駅南西部に広がる施工面積2.6ヘクタールの敷地に、ライフスタイルの全てがシームレスに繋がるまちを目指した新しい大規模施設が誕生する。

東急不動産株式会社が組合員として参画し、渋谷駅桜丘口地区市街地再開発組合が推進するプロジェクト「渋谷駅桜丘口地区第一種市街地再開発事業」において、渋谷の新たなランドマークとなる新施設名が「Shibuya Sakura Stage」に決まったと9日、発表された。施設名称には、桜を愛して皆で楽しむ日本人の心を大事にしたいという想いが込められているという。

今年11月30日に竣工予定で、その後順次開業し、店舗等がおおむね開業する2024年夏には、まちびらきのイベントを実施する予定です。渋谷駅周辺においてこの再開発事業は100年に一度とも言われる規模だ。

この施設は「働く・遊ぶ・住む」を兼ね備えた大規模複合施設で、様々な企業がフレキシブルに入居できるオフィスや、最先端のトレンドやカルチャーを創出する商業施設、渋谷駅中心地区では唯一の住宅を整備している。

また、国際競争力を強化するため、外国人ビジネスパーソンなどに対応した、中長期滞在者向けサービスアパートメント子育て支援施設、それに国際医療施設などが設立される。

会見に臨んだ、東急不動産株式会社 代表取締役社長岡田正志氏は、今回の再開発の経緯について「25年の歳月を経て、地権者の方々と合意形成を図りながら事業を推進してきた」ことを強調した。

▲写真 「Shibuya Sakjura Stage」の縮尺モデルを紹介する東急不動産株式会社 代表取締役社長 岡田正志氏 ⓒJapan In-depth編集部

渋谷は谷地形のこともあり、今まで駅と市街地を結ぶ歩行者ネットワークが脆弱だという問題があったが、駅周辺の回遊性の向上を図るため、駅や周辺地区を結ぶ多層の歩行者ネットワークを整備し、渋谷のまち全体のさらなる魅力を向上させる。

「桜丘地区を渋谷の新たな玄関口にすることを目指し、そこから多様な文化を生み出すことを目指したい」と岡田氏は語った。

次に登壇した、東急不動産取締役常務執行役員 都市事業ユニット長 榎戸明子氏は、「今まで落ち着きと賑わいが融合する桜丘エリアは独自の文化を育んできた。今回の再開発で渋谷駅の桜丘口を開通することで、桜丘地区と周辺地区のつながりを復活させ、めぐり歩いて楽しいまちを花咲かせる」と述べた。

そのためにも交通基盤を拡充させ、他街区との回遊性の強化や地形の高低差および鉄道と国道246号による地域の分断を解消する必要性があったという。

▲写真 東急不動産取締役常務執行役員 都市事業ユニット長 榎戸明子氏 ⓒJapan In-depth編集部

また、榎戸氏は「グローバルニーズに応えたエリア全体の国際競争力を強化することを含め、さまざまな機能を整備することで、多様な世代が住み、訪れる活力のあるまちを目指す」と語った。

施設内に設置されているオフィスは大規模な企業からスタートアップ企業まで、多様なレイアウトでフレキシブルに入居できるのが特徴だ。

▲写真 オフィス内部イメージ 提供:東急不動産

商業施設では、体験価値の創出が重視されている。デジタルサイネージやイベントスペースが設置され、新たなカルチャーの聖地となることを目指す。

SAKURAタワーの16-30階は渋谷駅中心地区で唯一整備される住宅である「ブランズ渋谷桜丘」になる。

東急不動産の分譲マンションブランド「BRANZ」は、持続可能な心地よい暮らしと環境貢献実現のために新たな発想や仕組みを取り入れた「環境先進マンション」を提供している。

そして、SAKURAタワーの6階ー16階には、旅先でも「住むように滞在する」ことができるサービスアパートメントになっており、世界を代表するグローバル拠点を目指す。中長期滞在が可能で、レストランやフィットネスを兼ね備えている。

渋谷で暮らすという非日常を日常に変える新たな体験を提供する試みだ。

他にも、オフィスワーカーや中長期滞在者、周辺住居者向けのグローバル対応の子育て支援施設が整備される。

トップフロアの38階には新たなビジネス創出の場となる起業支援施設もあり、渋谷エリアのビジネスの発展に貢献していくという。

エリアの魅力を強化するソフト施策として、価値創造力の強化、発信力の強化、多様性の強化を循環させることで広域渋谷圏の魅力を向上させるとしている。

そして今回の再開発では、グローバルな視点を含めた「多様性」が一つの大きなテーマになっている。「若者のまち」というイメージがある渋谷を、バリアフリーで様々な世代の人に楽しんでもらえる生活基盤にすることが目標だ。

総事業規模約2000億円、東急不動産単体としては過去最大規模のプロジェクトであり意気込みが伝わってくる。

コロナ禍で定着したテレワークにより、都内のオフィス需要も場所によっては軟調なところも見受けられる。加えて再開発によりビルが大量供給される「2023年問題」も取りざたされる中、本物件のオフィスの内定率は既に6割に達しており、1年半後の街開きまでには満室にできると岡田氏は自信を示した。

渋谷に限っていえば、オフィス需要は堅調であり、賃料も下がっていないという。これまでオフィスビルが足りなかった同地区において、駅チカのビルの利便性がテナントに高く評価されているようだ。

次々と高層ビルが建ち、渋谷駅ターミナルも大規模工事が続いている。それに伴い駅周辺の歩行者の動線は絶えず変更され、バス乗り場などもめまぐるしく移動する。沿線の住民ですら戸惑うほどだ。こうした状態がまだ何年も続く。

将来の利便性のためというのは理解していても、高齢者や社会的弱者、それにインバウンド=訪日外国人観光客にやさしいまちとは現状、とても言えない。彼らが迷うことなく目的地にたどり着けるようなサービスや仕組みが必要だと感じる。

「多様な世代が住み、訪れる活力のあるまち」に必要なのはなにもハードだけではない。開発事業者や公共交通機関各社、自治体には、渋谷を訪れる人がストレスなく回遊できるためのアプリ開発などを期待したい。

▲図 プロジェクト地区平面図 提供:東急不動産

▲図 プロジェクト地区断面図 提供:東急不動産

■「Shibuya Sakura Stage」ティザーサイト 2月9日(木)より公開。

トップ写真:外観イメージ 提供:東急不動産




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