高さ日本一ビル「麻布台ヒルズ」森ビルの都市作りを体現
Japan In-depth編集部(西潟瑞葵)
【まとめ】
・11月24日「麻布台ヒルズ」が開業。
・35年前から進めていた大規模開発事業で、六本木ヒルズに匹敵するスケール。
・「Green&Wellness」を体現。
森ビルが開発を進めてきた大型複合施設「麻布台ヒルズ」が11月24日に開業。11月20日に開かれたメディア内覧会に取材に行ってきた。以前の記事「日本一超高層タワー「麻布台ヒルズ」11月開業 都市の磁力とは」でも紹介したが、今回はいろいろな施設を見ることができたので、それをリポートする。
麻布台ヒルズは、森JPタワー、2つのレジデンス棟、ガーデンプラザA~D、中央広場で構成される。商業施設は、11月24日に94店舗がオープン。その後順次開業し、エリア全体で計150店舗の展開となる。
▲写真 今後の開業スケジュール 出典:森ビル株式会社
▲写真 タワープラザ ©Japan In-depth編集部
▲写真 ガーデンプラザ商業施設イメージ 出典:森ビル株式会社
・麻布台ヒルズプロジェクト
森ビルの都市再開発の手法はご多聞に漏れず、長い年月をかけ、住民との協議を重ねてまちづくりをおこなうもの。
「麻布台ヒルズプロジェクト」も、1989年の街づくり協議会設立から35年もの時間をかけ、進めてきた。開発前は木造住宅やビルが密集し、建物老朽化も進むなど、防災上の懸念があった地域であり、地区内の道路及び歩行者ネットワーク整備が求められていた。
同区域の総面積は8.1haに及び、2.4haの緑地、1400戸の住戸を備える。六本木ヒルズにも匹敵するスケールとインパクトを持つ街が誕生する。「Green&Wellness」を標ぼうするだけあり、街全体を見渡すと確かに広場の植栽だけでなく、施設の屋上緑化なども多く、「緑」の街という印象を強く抱く。
▲写真 中央広場外観 出典:森ビル株式会社
・多様な都市機能が複合したコンパクトシティ
オフィス、住宅、商業エリアに加えて、アマンの姉妹ブランド「ジャヌ(Janu)」の世界初となるホテル「ジャヌ東京」、都心最大規模のインターナショナルスクール「ブリティッシュ・スクール・イン 東京」、「慶應義塾大学予防医療センター」を展開している。東京で働くエクスパッツ(Expats:海外企業の日本支社で働く外国人)の要望に応えたものであり、虎ノ門ヒルズ同様、国際都市東京にふさわしい設備仕様を整えた。
▲写真 ホテルジャヌ東京 出典:森ビル株式会社
▲写真 インターナショナルスクールBST外観 出典:ⒸHeatherwick Studio
・「Green&Wellness」
麻布台ヒルズのコンセプトは、「緑に包まれ、人と人をつなぐ広場のような街‐Modern Urban Village」。大型複合施設における従来の「箱」から発想を転換。ガーデンプラザを低層に仕上げ、「広場」や「街」のイメージでシームレスにつながるようデザインされている。
▲写真 緑と水がつながるランドスケープ 出典:森ビル株式会社
コンセプトを支える二つの柱として「Green&Wellness」が掲げられている。2.4haの緑地が整備され、建物屋上を活用した果樹園・菜園が広がっている。
▲写真 果樹園 出典:森ビル株式会社
「Wellness」面を支えるのは、信濃町から拡張移転した「慶應義塾大学予防医療センター」。最新の医療機器をそろえ、個々人の健康課題や目標に応じた予防医療を提供し、人々の健康寿命を延ばして行くことを目指す。森ビルと慶應が提携し、予防医療とウェルネスをテーマにした共同研究講座の開設も行う。
▲写真 慶應義塾大学予防医療センター 出典:慶應義塾
・街[ヒルズ]で働く
麻布台ヒルズのオフィスフロアは全体で214,500㎡、約2万人の就業者数を抱えることとなる。森JPタワーの33,34階には企業の垣根を超えてワーカーが集う会員制ウェルビーイング施設「ヒルズハウス」がある。
会員はテナント企業がメインで、その従業員は自由にこの施設を使える。会費は低めに抑えたという。森ビルによるとこうした施設はヒルズでは初だということだ。
▲写真 オフィスエントランス 出典:森ビル株式会社
33階の「メンバーズラウンジ」には、健康的な食事メニューを提供するカフェテリアがあり、会員は栄養バランスの整った食事を良心的な値段で楽しむことができる。
▲写真 カフェテリア食事メニューの一例 ©Japan In-depth編集部
担当者に話を聞くと、ワーカーの健康面をサポートする食事メニューの開発に力を入れたという。利益重視ではなく、コストパフォーマンスの高いサービスを提供していきたいと話していた。このカフェテリアは夜はバーラウンジとしてアルコールも提供している。柔軟に働くことのできるビジネスラウンジ、交流や学びの機会を提供する多用途スペースなども備えており、今後、さまざまなイベントなどを通して、入居している企業の従業員同士の交流を促進する場とする予定だという。
将来的に個人会員も検討するかもしれない、とのことで、会員フィー次第ではメンバーになりたいかも、と思ってしまった。
▲写真 カフェテリア内観。夜はバーラウンジとしても利用できる ©Japan In-depth編集部
34階にはミーティングや企業の貸し切り対応、パーティーなど、多様な目的に対応する大型ダイニングスペース「スカイルーム」がある。通常時はカフェ&バーを設置している。
▲写真 スカイルーム 出典:森ビル株式会社
・Dining33
そして圧巻だったのは、「ヒルズハウス」最上階の33階にある、フレンチの巨匠、三國清三シェフがプロデュースするグランビストロ「Dining33」だ。
大きな窓から望む、東京のベイエリアを背景に間近にそびえる東京タワーなど、東京を象徴するような眺望も魅力だ。コンセプトの柱の一つ、グリーンを基調にした内装となっており、伝統的な「江戸東京野菜」など、日本の食材にこだわったフレンチを楽しめる。
▲写真 Dining33 出典:森ビル株式会社
三國氏が長年推進しているウェルネスを意識した料理が提供される。
▲写真 Dining33ディナーメニュー ©Japan In-depth編集部
内覧会では三國氏に話を聞いた。内装からスタッフのコスチュームに至るまで全てを三國氏自らプロデュースしたという。席数は約200席、4つの個室を完備している大規模なフロアは、フレンチレストランというより、巨大なボールルームのようだ。
昼と夜で約1200食を提供する大規模なフロアで、一人一人にフレンチを提供するのは不可能なので、大皿で提供された料理をゲストが自由にシェアするスタイルを導入した、と三國氏は言う。氏自身にとって初の試みだ。シェアスタイルにするという逆転の発想で、高級フレンチレストランでは世界に例のない規模に挑戦する三國氏。「新しい挑戦をすることが大好きだ」と少年のように笑った。
初心にかえって食べる楽しさをお客様の目線で考え直したとのことで、「食育」活動やスローフードを推進してきたシェフのこだわりを垣間見ることができる。「Dining33」の開業は、森ビル元会長の森稔氏の想いを引き継いだ形で実現されたと三國氏が教えてくれた。
「森さんからの遺言なんで。『三國にやらせろ』って」。
森ビルの街づくりの思想が垣間見えた。
▲写真 三國氏(右)と安倍編集長(左) ©Japan In-depth編集部
トップ写真:麻布台ヒルズ施設外観 出典:森ビル株式会社