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.政治  投稿日:2023/6/30

「高岡発ニッポン再興」その86   宮田さんと役所の素晴らしい連携、でも今後は・・・


出町譲(高岡市議会議員・作家)

【まとめ】

・高岡市はコミュニティハウスを運営する宮田隼氏と連携、福祉政策の強化に乗り出す。

・生活困窮者への住居の提供や就労の支援等の成果を収めた。

・しかし金銭面などの課題も存在、今後は国との連携が鍵。

 

私は高岡市議会6月定例会で、「優しい高岡」と「美しい高岡」を取り戻す必要があると強調しました。

「優しい高岡」実現のためには、孤立対策も大事です。私は定塚町1丁目の自治会長を務めています。今年に入って、一人暮らしの高齢者が亡くなっていました。電話しても、出ないので、不思議に思った息子さんが死亡しているのを発見しました。また、私の町内ではないのですが、50代の女性が栄養失調で倒れていました。

孤立をどう防ぐか。政府も孤独・孤立担当大臣を置き、対策を強化しています。私は政治や行政の役割は、光の当たらない人に目を向けることだと思っています。挑戦しようにも挑戦できない人が数多くいるのです。

そんな中、私が注目しているのは、高岡市内にあるコミュニティハウス「ひとのま」です。運営しているのは、宮田隼さん(41歳)です。ここは誰でも訪れることのできる一軒家。福岡県出身の宮田さんが家を借り、2011年から開放してきました。

当初は、不登校や引きこもりの子どもたちが訪れていました。その後は、刑務所から出てきた人、夫の暴力で家出をした妻、障がい者、生活困窮者などさまざまな背景を持つ人たちがやってきました。

特定の人をターゲットにした場所ではなく、「誰でもいつでもどうぞ」と開け続けてきたのです。

写真)宮田隼さん 筆者提供)

私が注目しているのは宮田さんと福祉連携推進室の動きです。住まいを見つけるのが困難な方々が市役所に行くと、宮田さんにつないでもらうケースがあります。そして、宮田さんが借り上げている住居にしばらく過ごして、住所や仕事を見つけているのです。

その際、役割分担が明確です。例えば、生活保護の申請や就職の手助けには市の福祉連携推進室、住居を見つける際の不動産会社との交渉は宮田さんが担っています。福祉連携推進室が手を取り合って、「優しい高岡」の実現に汗をかいています。宮田さんによれば、令和3年度に福祉連携推進室ができてから、連携がスムーズになったといいます。それまでは、市役所経由でやってくる人の世話を宮田さんが一人でこなしていたのです。

さらに、令和4年度から、社会福祉課福祉連携推進室において、「一時生活支援事業」を開始しました。それは、一定の住居を持たず、生活に困窮している方を対象として、一定期間、宿泊場所や食事などを速やかに提供する事業です。

高岡市はこの事業について、宮田さんに委託して実施。委託料45万円を支払っています。福祉連携推進室が宮田さんと連携しながら、住まいの確保や就労につなげる支援を行っています。令和4年度においては6人が本事業を利用しました。

私は、この政策を評価しています。しかし、金額的にまだまだ不十分です。それに国の支援も受けるべきです。国土交通省には「居住支援法人」という補助制度があります。居住相談を引き受けている事業者に、国が直接補助する制度です。上限1000万円出ます。指定するのは県で、これまで7つの事業者が指定されました。

私は、富山県や国土交通省住宅局の人に宮田さんのことを伝えると、十分要件にあっているとのことでした。さらに国には「居住支援協議会」という仕組みもあります。これは、市町村レベルで設置し、国土交通省から補助金が出ます。いわば“ハコ”のようなものです。不動産や医療・福祉・住居に関する官民の団体がメンバーとなります。

私は宮田さんと福祉連携推進室の動きを評価しながらも、個人に依存するのは、限界があると考えています。国土交通省の居住支援の政策も活用して、居住支援を強化したほうがいいと考えています。高岡版の居住支援を全国に発信したいと思っています。「優しい高岡」は、大きなセールスポイントになります。

その85の続き。その87に続く)

トップ写真:宮田隼さん(帽子を被っている方) )筆者提供










この記事を書いた人
出町譲高岡市議会議員・作家

1964年富山県高岡市生まれ。

富山県立高岡高校、早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。


90年時事通信社入社。ニューヨーク特派員などを経て、2001年テレビ朝日入社。経済部で、内閣府や財界などを担当した。その後は、「報道ステーション」や「グッド!モーニング」など報道番組のデスクを務めた。


テレビ朝日に勤務しながら、11年の東日本大震災をきっかけに執筆活動を開始。『清貧と復興 土光敏夫100の言葉』(2011年、文藝春秋)はベストセラーに。


その後も、『母の力 土光敏夫をつくった100の言葉』(2013年、文藝春秋)、『九転十起 事業の鬼・浅野総一郎』(2013年、幻冬舎)、『景気を仕掛けた男 「丸井」創業者・青井忠治』(2015年、幻冬舎)、『日本への遺言 地域再生の神様《豊重哲郎》が起した奇跡』(2017年、幻冬舎)『現場発! ニッポン再興』(2019年、晶文社)などを出版した。


21年1月 故郷高岡の再興を目指して帰郷。

同年7月 高岡市長選に出馬。19,445票の信任を得るも志叶わず。

同年10月 高岡市議会議員選挙に立候補し、候補者29人中2位で当選。8,656票の得票数は、トップ当選の嶋川武秀氏(11,604票)と共に高岡市議会議員選挙の最高得票数を上回った。

出町譲

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