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.政治  投稿日:2023/11/20

「高岡発ニッポン再興」その111 産後うつ防止に「企業主導型両親学級」


出町譲(高岡市議会議員・作家)

【まとめ】

・人口を増やすポイントは、その都市で子育てがしやすいかどうか。

・コロナ禍で「3人に1人」に産後うつが疑われる。

・高橋由紀氏、「企業主導型両親学級」を開催。

 

高岡市の人口を増やす大事なポイントは、子育てがしやすいかどうかです。重要な視点は、外から高岡に移住してきた人です。高岡での子育てしにくかったら、ほかの市に移るかもしれません。私は高岡市議会議員として、子育て中のママやパパの話を聞きます。

「夫は富山県のほかの市で、私は県外出身。夫の転勤に伴って、いろいろな地域に住みましたが、結局は高岡市で家を建てました。高岡市が大好きだからです。でも、子育てする際はなかなか大変でした。両親が近くにいるわけでもなく、相談相手もいなかったからです。うつ状態になりそうでした」。

 高岡市内に住む、30代の女性の体験談です。彼女は両親学級を求めていましたが、高岡市では令和3年度と4年度は中止されていました。コロナ禍が要因です。しかし、同じコロナ禍でも、令和3年度、富山市では24回、射水市では11回開かれています。

 両親学級では、赤ちゃんのお世話の仕方などを教えてくれます。高岡市では今年度2回実施、来年度も3回開催する予定です。今年度、来年度ともに年間の予算は2万8000円です。講師代とチラシの費用です。一方、射水市では今年度12回開催します。予算は18万円9000円です。大人気で、予約待ちの状態です。

高岡市の出生数は1000人ほどで、県内で2番多いのです。それなのに、射水市に比べあまりに弱い態勢ですね。私は、市議会議員として、こうした状況を是正したいと思っています。

今、私が注目しているのは、2019年に富山県に移住してきた高橋由紀さんの活動です。高橋さんはヨガの第一人者。国内外に3000人の指導者を育成していますが、その本業とは別に、企業主導型の両親学級を主催しています。

「産後うつなると、赤ちゃんのお世話する気力がなくなり、ネガティブな感情が次々に出てくるのです。そして、2人目の出産をあきらめるケースも多いのです」。

産後うつとは、赤ちゃんを出産後に症状が出るうつ状態を指します。とりわけ近年のコロナ禍で、心理的な負担が増し、近畿大学の2021年の調査によれば、「3人に1人」に産後うつが疑われる状態でした。これまでの3倍と言われています。コロナ禍で、自治体主催の対面のパパママセミナーも中止、縮小となったことも一因です。

こうした状況を克服するため、高橋さんは「企業主導型両親学級」を開催しています。協賛企業を募り、県内各地で開いているのです。沐浴やおむつ替えだけでなく、抱っこやマッサージの仕方、産前産後の身体のケアなどを学ぶセミナーです。産婦人科医、栄養士、産後ヘルパーなどが講師となっています。今年は10月までに、富山県内7カ所で開き、344人の方が参加しました。参加者にとっては、育児不安を解消するとともに、相談できる友人や専門家とつながったりできます。

また、協賛企業にとっては子育て家庭に直接アプローチし、商品やサービスのPRができます。明治安田生命やトヨタモビリティ富山、などが協賛しています。高橋さんは「子育て環境の改善を図り、産後うつ、自殺、自動虐待を防止したい。また、社会全体で子供を育てるという意識を醸成したい」と語っています。私は使命感を抱く高橋さんに共鳴しました。高岡市内の企業の方、ぜひとも協力してください。民間発で、子育てしやすい高岡をつくりたいと考えています。

トップ写真:高橋由紀さんが主催する両親学級(執筆者提供)




この記事を書いた人
出町譲高岡市議会議員・作家

1964年富山県高岡市生まれ。

富山県立高岡高校、早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。


90年時事通信社入社。ニューヨーク特派員などを経て、2001年テレビ朝日入社。経済部で、内閣府や財界などを担当した。その後は、「報道ステーション」や「グッド!モーニング」など報道番組のデスクを務めた。


テレビ朝日に勤務しながら、11年の東日本大震災をきっかけに執筆活動を開始。『清貧と復興 土光敏夫100の言葉』(2011年、文藝春秋)はベストセラーに。


その後も、『母の力 土光敏夫をつくった100の言葉』(2013年、文藝春秋)、『九転十起 事業の鬼・浅野総一郎』(2013年、幻冬舎)、『景気を仕掛けた男 「丸井」創業者・青井忠治』(2015年、幻冬舎)、『日本への遺言 地域再生の神様《豊重哲郎》が起した奇跡』(2017年、幻冬舎)『現場発! ニッポン再興』(2019年、晶文社)などを出版した。


21年1月 故郷高岡の再興を目指して帰郷。

同年7月 高岡市長選に出馬。19,445票の信任を得るも志叶わず。

同年10月 高岡市議会議員選挙に立候補し、候補者29人中2位で当選。8,656票の得票数は、トップ当選の嶋川武秀氏(11,604票)と共に高岡市議会議員選挙の最高得票数を上回った。

出町譲

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