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.政治  投稿日:2023/12/3

「高岡発ニッポン再興」 その116 「内水氾濫」に新制度、高岡にチャンス


出町譲(高岡市議会議員・作家)

【まとめ】

・高岡市で7月に初めて線状降水帯が発生、「内水氾濫」が起きた。

・自治体の河川などの対策計画を国が認定すれば、優先的に補助金が出る。

・この国土交通省の新制度は、高岡市にとって大きなチャンス。

 

高岡市で7月に初めて線状降水帯が発生し、各地で「内水(ないすい)氾濫」が起きました。小矢部川や千保川などの河川の氾濫は免れましたが、行き場のない水が、用水路やマンホールからあふれ出たのです。そして、床上浸水が相次ぎました。この「内水氾濫」の被害を最小限に食い止めるか。大きな政治課題ですが、私は国土交通省の動きに注目しています。内水氾濫対策に補助金を出してくれる新制度ができるからです。高岡市の動きに期待しています。

 ハザードマップは、災害が起きた場合、どこにどのような危険があるか、また、どこに避難したら良いのかという情報をまとめた地図です。高岡市ではもともと「洪水ハザードマップ」がありましたが、令和4年3月に「内水ハザードマップ」を合わせた「水害ハザードマップ」を作成しました。つまり「内水ハザードマップ」を作成済みなのです。

高岡市の取り組みは、なかなか先進的なんですよ。実は令和5年3月末時点では、全国の自治体で作成したのは、11%にとどまっているのです。国は令和3年に水防法を改正して、内水対策のハザードマップの作成を義務付けているにもかかわらず、9割の自治体は作成していないのです。

ハザードマップ作りがなかなか進まないのです。業を煮やした国土交通省は早ければ来年度から、新たな事業に乗り出します。「内水被害等軽減対策事業」です。概算要求に盛り込む方針です。

私はさっそく、国土交通省の担当者に話を聞きました。なぜマップ作成が進んでいないのか。その理由は、お金です。マップを作成するには、市街地や農地を走る水路など細かなデータが必要となり、測量やシミュレーションに費用がかかるのです。

今回の事業では、内水対策ハザードマップを作成する際、交付金を盛り込んだといいます。私が驚いたのは、ハザードマップを作成した後の補助金です。国土交通省の担当者によれば、自治体が河川、下水道、流域などの対策計画をつくり、国が認定すれば、優先的に自治体に補助金を出すというのです。

つまり、こんな流れです。自治体が内水対策の具体的な計画を策定します。例えば、雨水をためるため、田んぼにダムを作ったり、貯水施設などを整備。さらには、浸水被害の恐れのある地区をかさ上げする計画です。工事費などは巨額になりそうですが、国がその計画を認定すれば、自治体に優先的に補助金を配分するというのです。

高岡市では、すでに内水ハザードマップを作成済みです。いち早く、具体的な対策計画を作れば、国の補助金を手にすることが可能なのです。

 私はこの夏、高岡市内で床上浸水した被災者の家を訪れました。多くの方は想定外だったと話していました。テレビで見る水害のニュースは他人事。高岡市では起こりえないと思っていたのです。

しかし、今回は違いました。大きな川の氾濫こそありませんでしたが、内水被害は至るところで、発生しました。高岡市の被災者の方の言葉が忘れられません。「また起きるかもしれない」。

そうなんです。地球温暖化に伴って、全国至るところで、強烈な雨が降るようになっています。国交省の統計では2018年までの10年間で浸水被害にあった住宅はおよそ33万棟ありますが、そのうち、内水氾濫による被害は21万棟です、洪水被害の12万棟を大幅に上回っているのです。内水被害はいつでも、どこでも、だれにでも起きる可能性があるのです。

こうした中、今回の国土交通省の新制度は、高岡市にとって大きなチャンスです。どこに住んでも、安心できる街にしたいですね。

トップ写真)高岡市二上地区 筆者提供)






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