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.国際  投稿日:2024/1/24

米大統領選予備選、ニューハンプシャーもトランプ勝利確実


宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)

宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2024#04

2024年1月22-28日

【まとめ】

・ニューハンプシャー州での予備選はヘイリーが善戦するも、トランプ勝利確実。

・トランプと互角の数字を出さなければ、ヘイリーが予備選の流れを変えるのは難しかった。

・今後もトランプ優勢は継続か。

 

(本記事は2024年1月23日米大統領選ニューハンプシャー予備選開票前に執筆されたものです)

今週は内外で注目ニュース満載のため執筆が遅れてしまった。まずは先週お約束したホノルルのシンクタンクPacific Forumが開いたインド太平洋地域の安全保障に関するシンポジウムで考えたこと、から始めよう。詳細は今週の産経新聞World Watchに書いたので、お時間があればそちらもご一読願いたい。

コロナ禍もあってこの種の会議に参加するのは久し振りだ。同イベントにはインド太平洋軍司令官以下同軍幹部や豪元首相を含む関係国軍人・専門家が参加、台湾総統選後の地域安全保障環境について活発な議論が行われた。結論から言えば、インド太平洋軍は「本気」で対中抑止の強化を進めているということだ。

これまでの戦い方を変えない限り「インド太平洋地域での国際的秩序は失われる…」ということ。好むと好まざるとに関わらず、これは日本自身の問題でもある。もう一つ筆者が気になったのは「ガザ紛争拡大がインド太平洋軍の活動に及ぼす財政・作戦上の影響」だが、インド太平洋軍関係者から納得のいく回答はなかった。

今週執筆が遅れた最大の理由は米大統領選のニューハンプシャー(NH)州予備選が気になったからだ。同予備選直前にデサンティス・フロリダ州知事が選挙戦撤退を公表したことは予想より少し早かった。現在NH共和党予備選の焦点は「トランプにヘイリー(元サウスカロライナ州知事)がどこまで追い付けるか」に移りつつある。

本原稿執筆中にも出口調査の結果が出始めている。ヘイリーへの投票率はアイオワ州での党員集会の結果(トランプ51%、ヘイリー19%)よりかなり良くなるはず。直前の調査ではトランプ52%、ヘイリーが34%、現時点でのCNNの出口調査結果はトランプ53.6%に対しヘイリー45.4%だから、ある程度善戦とは言えるだろう。

しかし、これでヘイリーが生き残れると思うのは素人だ。理由は簡単。NH州予備選の仕組みが他の州と異なるからだ。同州では共和党の予備選挙に共和党登録有権者だけでなく、支持政党なし(undeclared)の登録有権者も共和党予備選に参加できるので、ヘイリー支持率は今後の他州予備選よりも高くなる可能性があるのだ。

逆に言えば、現在もトランプの優位は変わらず、ヘイリーがNH予備選で勝利するか、トランプと互角の数字でも出さない限り、共和党予備選の流れを変えることは難しい、ということである。NH予備選については来週詳述したい。

続いては、先週書けなかった、欧米から見た今週の世界の動きを見ていこう。ここでは海外の各種ニュースレターが取り上げる外交内政イベントの中から興味深いものを筆者が勝手に選んでご紹介している。欧米の外交専門家たちの今週の関心イベントは次の通りだ。

・1月23日火曜日 トルコ国会、スウェーデンのNATO加盟につき投票

・欧州委員会大統領とクロアチア首相、ボスニアヘルツェゴビナ訪問

・1月24日水曜日 アルゼンチンの労組連合が全土でストライキ

 スロバキア首相、訪独

・1月25日木曜日 トルコと南アフリカの中央銀行が公定歩合を決定

 仏大統領、インド訪問(26日まで)

 ネパール、上院選挙

・1月26日金曜日 ツバルで総選挙

・1月28日日曜日 フィンランドで大統領選挙

・1月29日月曜日 イラン外相、パキスタン訪問

 コロンビアで国内の反政府麻薬勢力との6カ月休戦が期限に

最後は、いつものパレスチナ情勢だ。筆者の見る現時点での状況は次の通り。

●アメリカはイスラエルに停戦を働き掛けているが、ネタニヤフは戦闘を続けるつもりで、両国間の亀裂は深まっている

●イスラエルが人質解放のため最大二カ月の停戦を提案したと報じられたが、どこまで本気で、どこまでポーズなのか正直分からない

●数週間前筆者は「イスラエルは戦闘を止めないだろう。最悪の場合、これから数週間は徹底的なハマス掃討作戦が続き、パレスチナ非戦闘員の大量犠牲も続くだろう」と書いたが、こうした考えは今も基本的に変わらない

●イランは米軍との直接戦闘は望んでいないだろうが、逆に言えば、直接戦闘の手前まで対米「代理戦争」を続けるだろう

今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きは今週のキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

トップ写真:投票所となっているニューハンプシャー州のロンドンデリー高校を訪れるトランプ氏(1月23日 ニューハンプシャー州・アメリカ)出典:Getty Images North America/Chip Somodevilla




この記事を書いた人
宮家邦彦立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表

1978年東大法卒、外務省入省。カイロ、バグダッド、ワシントン、北京にて大使館勤務。本省では、外務大臣秘書官、中東第二課長、中東第一課長、日米安保条約課長、中東局参事官などを歴任。

2005年退職。株式会社エー、オー、アイ代表取締役社長に就任。同時にAOI外交政策研究所(現・株式会社外交政策研究所)を設立。

2006年立命館大学客員教授。

2006-2007年安倍内閣「公邸連絡調整官」として首相夫人を補佐。

2009年4月よりキヤノングローバル戦略研究所研究主幹(外交安保)

言語:英語、中国語、アラビア語。

特技:サックス、ベースギター。

趣味:バンド活動。

各種メディアで評論活動。

宮家邦彦

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