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.国際  投稿日:2024/9/11

トランプvsハリスTV討論会 ハプニング起きるか


宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)

宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2024#37

2024年9月9-15日

【まとめ】

・9月10日にトランプ・ハリス両候補のTV討論会が開催。

・討論会は、11月の大統領選に影響を与えるとされるが、筆者は懐疑的。

・7月のバイデン・トランプ討論会に続き、今回もハプニング起きるか?

 

今週の原稿は米国ワシントン行き全日空便の中で書いている。故岡本行夫氏が始めた立命館大学の特別プログラムに参加する学生たちの海外研修に合わせて、今年二回目のワシントン出張を決めた。しかも、偶々だが、本日9月10日はトランプ・ハリス両候補の、恐らくは最初で最後の、TV討論会が行われる日でもある。

TVで見るだけなら東京で見ても同じなのだが、そこは少しでも現地の雰囲気を感じたい、という本能的欲求が今回筆者にはある。今晩は多少睡眠時間を削ってでも、この討論会を見ないと・・・。という訳で、今週はトランプ・ハリスTV討論の前に原稿を書くことにした。結果については来週のカレンダーで詳しく書くことにしたい。

相変わらず米国では、今回の討論会が「歴史的」なもので、11月の大統領選の結果を左右する「重要なイベント」ということになっている。でも、本当にそうなのだろうか。確かに、TV討論会の歴史を振り返ってみれば、各候補者のパーフォーマンスの善し悪しが時々の支持率にある程度影響を与えたことは否定しない。

それでも、少なくとも、これまでは、「大統領選のTV討論」なるものは一種のエンターテインメントではあっても、11月の投票結果を真に左右するような「大イベント」ではなかったような気がする。討論会を主催するテレビ局は視聴率を上げようと大々的に宣伝するのだろうが、筆者の記憶では、結局は「甲乙つけ難い」ものに過ぎない。

ところが、7月のバイデン・トランプ討論会はこうした「常識」を完全に打ち砕いてしまった。バイデン候補のあまりの醜態に、これまで我慢に我慢を重ねてきた民主党主流政治家たちが声を上げるに至った。普通なら考えられないことが起きた、という意味では、今年のバイデン・トランプ対決ほど例外的なTV討論は他に思い付かない。

今回筆者が無理して一日早くワシントンに到着したかった理由はこれである。今年は例年とは違うハプニングがまた起きるのではないか。バイデンの老醜は酷かったが、最近のトランプだって、8年前のような勢いはない。78歳の老人が1時間半も話せば、誰だって大体同じ話の繰り返しが多くなる。今のトランプは正にそれなのだ。

8年前は勿論、4年前だって、こんなトランプを見たことはない。「年齢を笑うものは年齢に泣く」のだろうか。勿論、ハリスだって負けてはいない。「若さ」は往々にして「未経験」を意味する。7月末に「化けた」ハリスの「化けの皮」が今回のTV討論会で「剥がれる」可能性だって十分あるだろう。いやはや、今晩がとても楽しみである。

続いては、先週お休みした、欧米から見た今週の世界の動きを見ていこう。ここでは海外の各種ニュースレターが取り上げる外交内政イベントの中から興味深いものを筆者が勝手に選んでご紹介している。欧米の外交専門家たちの今週の関心イベントは次の通りだ。

9月10日 火曜日 第79期国連総会始まる

ヨルダンで議会選挙

米大統領選、TV討論会

9月12日 木曜日 G7労働・雇用担当大臣会合(イタリア)

G20農業大臣会合(ブラジル、2日間)

北京香山フォーラム始まる(3日間)

9月13日 金曜日 米英首脳会議(ワシントン)

NATO国防大臣会合(プラハ)

ドイツ・ケニヤ首脳会議(ベルリン)

9月15日 日曜日 ニジェールからの米軍撤退期限

最後はいつものガザ・中東情勢だが、先週からイスラエル国内で始まったハマースとの早期停戦による人質解放を求める反政府ゼネストにもかかわらず、ネタニヤフは譲歩しない。ネタニヤフは11月5日まで政策変更する気などさらさらないようだ。何と強かな首相だろうか。という訳で、中東は相変わらずのようだ。だが、相変わらずということは、ハマースはともかく、イランもヒズブッラも、イスラエルとの大規模戦闘は控え続けている、ということでもある。イランとイスラエルの相互抑止が曲がりなりにも続いているだけでも「朗報」なのかもしれないなぁ。

今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きは今週のキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

トップ写真:ペンシルバニアのおける選挙集会でステージに立つトランプ氏 (2024年8月30日ペンシルベニア州ジョンズタウン)出典:Chip Somodevilla/Getty Images




この記事を書いた人
宮家邦彦立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表

1978年東大法卒、外務省入省。カイロ、バグダッド、ワシントン、北京にて大使館勤務。本省では、外務大臣秘書官、中東第二課長、中東第一課長、日米安保条約課長、中東局参事官などを歴任。

2005年退職。株式会社エー、オー、アイ代表取締役社長に就任。同時にAOI外交政策研究所(現・株式会社外交政策研究所)を設立。

2006年立命館大学客員教授。

2006-2007年安倍内閣「公邸連絡調整官」として首相夫人を補佐。

2009年4月よりキヤノングローバル戦略研究所研究主幹(外交安保)

言語:英語、中国語、アラビア語。

特技:サックス、ベースギター。

趣味:バンド活動。

各種メディアで評論活動。

宮家邦彦

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