[宮家邦彦]<戦闘が激化するガザ>ハマースが打ち込む数千発ものロケット弾はイランが供与している[外交・安保カレンダー(2014年7月21-27日)]
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
6月末始まったラマダン月が今週末ようやく終わる。
安倍首相は先週7月16日夜、イスラム諸国・地域の駐日大使らを首相官邸に招きイスラム教のラマダン(断食月)中の日没後に日中の断食を止め食事を摂る「イフタール」を開催したそうだ。 大変良いことだ。
確か小泉内閣時代に始まったと記憶するが、官邸でイスラム教の行事をやるなら、ついでに例えばユダヤ教の「ハヌカー」も官邸内で祝ったらどうか、と筆者は勝手に考えてきた。
ところで皆さんはハヌカーをご存じだろうか。 ハヌカーとは紀元前2世紀マカバイ戦争時のエルサレム神殿奪回を記念するもので、ローマ皇帝と異教徒により汚された神殿を清めるための祭りだそうだ。ユダヤ暦第9月25日から8日間祝うのだが、なぜかクリスマスの時期と重なる。
米国ではユダヤ教徒に対し「ハッピー・ハヌカー!」と言うことは、キリスト教徒に対する「メリー・クリスマス!」と同じ響きがあることをご存じか。但し、最近米国では「ハッピー・ホリデーズ」が主流、やはり「politically correct(政治的に適切)」ということだ。
ハヌカーといえば、今週は恐れていたガザでの戦闘が激化している。多くの一般人が犠牲となり実に痛ましいが、素朴な疑問はハマースの持つロケットの多さだ。なぜ数千発ものロケットを打ち込めるのか。それは簡単、イランが供与しているからだ。
ではなぜハマースは、女性と子供を人の盾にして、イスラエルと戦うのだろう。彼らの命はどうでもよいのか。昔イラクのフセイン大統領は退任直前のサッチャー英国首相に「フセインは女性の人質を取る卑怯な男」と非難された。
湾岸戦争開戦前だったと記憶するが、誇り高いフセインは人質の女性を全員解放した。あの世俗主義者フセインですら、女性と子供には気を使った。なぜ敬虔なイスラム教徒のハマースが身内の女性と子供を犠牲にするのか。筆者にはそこがどうしても理解できない。
今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
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