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.政治  投稿日:2024/5/10

【岸田政権への提言】会社側にも「政治献金」公開の機能を【日本経済をターンアラウンドする!】その25


西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)

【まとめ】

・政治資金規正法の改正は、野党が主張する企業・団体献金の廃止は難しそう。

・政治献金をする企業側のチェックができていないのが問題。

・会社法や関連法の改正なども視野に入れて欲しい。

 

 

政治資金規正法の改正。どうやら、野党が主張する企業・団体献金は廃止されるのは難しそうだ。自民党がかたくなに反対しているのが理由だ。結局、パーティー券購入者名の公開基準額を20万円から引き下げることに落ち着きそうだ。

しかし、政治改革議論、大切な視点が喚起されていない。それは政治献金をする企業側のチェックができていないことだ。いくら政治側で公開しても、企業側との照合・確認・検証ができない。会社においても、政治献金の有効性や意味合いが問われない。

これだけ競争力を失っている日本企業に企業献金と言う余計なお金を支払う余裕はないはずだ。株主はどうだろう?従業員はどうだろう?人的資本投資や従業員の賃上げのほうが圧倒的に優先度が高いだろう。政治献金したり、パーティー券を購入するお金は人的資本投資や従業員の賃上げに回すべきなのだ。

 財界の論理と主張

財界はどう言っているか?そのスタンスを確認しよう。

「企業がそれを負担するのは社会貢献だ」

「民主主義の維持にはコストがかかる。政党に企業の寄付(献金)をすることは一種の社会貢献だ」

とのこと。

いったん1994年、政治改革関連法が成立し、企業・団体献金は廃止したのに、2003年に献金あっせんを再開してしまった。この失われた30年の経済不振、既得権益を固定化させ産業構造改革が進まなかった点など、経済不振の元凶の1つである。この人たちは補助金や助成金をえたり政策的に優遇されてもらってきたのだから、こうしたスタンスになるのは当然だろう。

 企業献金がなぜ「悪いのか」

政策形成過程へ影響力を及ぼす方法は沢山ある。皆さんが企業の経営者・幹部だとしよう。ファンとしてとか、何らかの保険としてか、人間関係の構築としてか、お付き合いとして献金する人はいるかもしれない。しかし、多くの場合、目的は・・・・

・何かあった時に政治家に相談できる

・政治家を媒介にして色々コネクションや紹介をしてもらったりできる

・自分の意向に沿った行動を何かしらとってもらいたい

・行政の規制回避や規制、補助金取得になんらかの影響力をおよぼしたい

・政治家をスポンサーにして意のままに操りたい

などなどの「欲望」「願望」の対価であり、状況によってはその「欲望」「願望」が可能になることもあるかもしれない。献金額が大きいスポンサーの場合、その確率は高くなるだろう。

特に、政治献金の効果は、国の予算の確保や税負担軽減に関わってくるので、社会的にも問題である。フェアなビジネス環境を阻害するのだ。

消費税を払っていないどころか還付金をもらっている企業(還付は1.7兆円)の経営者に「消費増税」「政治献金は社会貢献」だとか言われたくはない。

 会社側の法律整備も必要!

イギリスの1985年会社法では各会計年度における200ポンドを超える慈善的あるいは政治的寄附は、取締役報告書の中で公表することになった。アメリカでは政治献金について株主総会で議論されたりする。

 

企業の政治献金は本当のところどれくらいなのか、経営者、渉外、経理や財務部以外はわからない。その他のステークホルダーは蚊帳の外に置かれたままだ。その費用が経営に資するのか、どこかで検証すべきだろう。

 

・どれくらいの献金をしたのか?

・どのような考えで政治献金をしたのか?

・政治献金が売上や経営にどの程度貢献したのか?

・政治献金がビジネス・市場環境にゆがみをもたらしていないか?

といった議論がステークホルダーに対しても行われるべきだろう。

それこそ「社会的責任」である。社会的責任を追及する企業がこうした説明ができるように、会社法や関連法の改正なども視野に入れて欲しい。岸田政権に期待したい。

トップ写真)自民党本部  2022年7月11日 東京都・千代田区

出典) Takashi Aoyama/Getty Images

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