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.社会  投稿日:2025/4/24

日本科学未来館、量子と宇宙の新常設展オープン!


中川真知子(ライター/インタビュアー)

【まとめ】

・量子コンピュータや宇宙探査は注目分野だが、理解と人材育成が課題となっている。

・来館の新展示では、難しい仕組みを体験で直感的に学べる工夫がされている。

・地球データを扱うジオ・スコープも刷新され、知的好奇心を刺激する内容だった。

 

今、多くの人々が理解したいと思っている最先端の研究のひとつに、量子コンピュータ宇宙があるだろう。

「量子コンピュータ」の理論が提案されたのは80年代。完成には相当な時間がかかるだろうと考えられていたが、2000年代以降になると実用化に向けてIBMやGoogleをはじめとするアメリカ企業や、日本、中国、EUもが研究に本腰を入れ始めた。

そして2020年代の今、産業応用が始まろうとしている。しかし、その仕組みを理解するのは難しいと言われているため、量子コンピュータを使って開発研究する側を目指す人の育成が課題とされている。

宇宙も同じだ。ロケット発射や月面着陸、火星探査といった比較的わかりやすいものから、宇宙の成り立ちをデータから読み解くまで、様々な研究分野が存在するが、それらを身近に感じられる人は多くない。

量子コンピュータや宇宙探査•研究が盛り上がれば、日本が世界をリードする可能性も十分にある。だが、人材育成をどうすればいいのだろう。

そこで、日本科学未来館の出番だ。新たにオープンした2つの常設展が、「難しそう」を「わかったかも! 」に変えてくれるのだ。

オープン前日に開催されたメディア内覧会で一足早く体験してきたので、レポートしたい。

 

見えないものを直感的に理解する

撮影筆者)
写真)エントランスの様子
「エントランスでは量子をテーマにした音楽が奏でられていた」(筆者談)

 

量子コンピュータ・ディスコ」は、量子コンピュータの仕組みや、開発する意味、産業応用が始まった際に起こる私たちの生活変化をわかりやすく解説する体験型展示になっている。

撮影筆者)
写真)展示場の装飾
「展示場はテンションが上がる装飾。ミラーボールが中央で回る」(筆者談)

 

私たちが今現在日常的に使っているコンピューターの仕組みと、量子を使った場合の仕組みの違いを、ディスコの DJになって理解するのだ。

ダンスフロアを模した体験型展示室には、DJブースが置かれていた。モニターとパーツ、ヘッドホンが用意されており、「ゲート」と呼ばれる駒を嵌めながら複数の音楽を奏でていく。

撮影筆者)
写真)体験型展示「量子コンピュータ・ディスコ」
「ディスコを楽しむ筆者。プレイ時間は10分程度だった」「量子コンピュータの仕組みををこんなに簡単に理解できるなんて思わなかった」(筆者談)

 

最初に学ぶのは、1/0で制御されるクラシックコンピューターの仕組み。ゲートを指示通りに並べることで特定の音楽を1曲ずつ奏でることができる。

撮影筆者)
写真)クラシックコンピューターの仕組みを体験
「ゲートをはめることで音楽のパラメーターを調節する」​​(筆者談)

 

次に学ぶのは、量子コンピュータの仕組みだ。

ゲートをはめることで、複数の音楽が同時に奏でられる。同時に何曲も演奏されるため、音源の強弱やヘッドホンの左右の聞こえ方を調節するゲートを使って、聴きたい曲にチャンネルを合わせていく。

これは、量子の性質である「重ね合わせ」や「もつれ」「測定」を意味している。量子コンピュータについて調べ、少しでも知識がある人なら、この手があったか、と膝を打ちたくなるほどスマートな表現方法だと感じるだろう。

事実、筆者は「量子コンピュータ・ディスコ」を体験しながら、漠然とした理解が輪郭を持った理解に変化した気がした。

 

日本科学未来館
写真)館内のギャラリー
「量子コンピュータを身近に感じられる作品が紹介されている」(筆者談)

隣接の部屋には、ディスコで体験したことをさらなる理解へと繋げるショート動画と展示が用意されていた。

正直、ここまでわかりやすいとは思っていなかったので驚いた。

 

未読の宇宙」で研究者の熱意に触れる

撮影筆者)
写真)展示コーナー「未読の宇宙」
「巨大な装置をコンパクトに凝縮させた4つの展示が楽しめる」(筆者談)

研究者たちが巨大な観測/実験装置を使ってどのように宇宙を読み解こうとしているのかを体験できる展示が「未読の宇宙」

撮影筆者)
写真)展示コーナー「未読の宇宙」

360°のスクリーンでぐるっと覆った展示空間に、4つの体験装置が並んでいる。

撮影筆者)
写真)展示コーナー「未読の宇宙」

面白いのは、体験装置にスマートフォンが設置されていて、研究者との擬似通話体験ができること。実験内容を解説してくれたり、体験するのをサポートしてくれたり、苦労話を共有してくれたりするのだ。

撮影筆者)
写真)研究者との擬似通話体験装置

まるで一緒に実験しているような錯覚に陥るだけでなく、難しい研究をしている人たちにも親近感が湧いてくる。

撮影筆者)
写真)研究者との擬似通話体験装置

 

他にも、生成AIと協働で作った7つのキャラクターが登場する「対話型展示」もあった。

撮影筆者)
写真)生成AIキャラクターとの「対話型展示」

宇宙に関する質問を投げかけると、研究者AIやこどもAIといった異なるキャラクターがランダムに3つ登場し、会話を展開させながら疑問に対する答えや、さらなる興味を引き出してくれるのだ。

 

リニューアルしたジオ・スコープのテーマは「変わり続ける地球」

撮影筆者)
写真)ジオ・スコープ
「リニューアルした「ジオ・スコープ」 3Fスロープ横に設置されている」(筆者談)

地球に関する科学データにアクセスできる常設展時の「ジオ・スコープ」も密かにリニューアルした。新たに8つの最新データが追加されただけでなく、端末もアップデートされて存在感が増した。

ビックマック指数や夜間の地球、人類のひろがりなど、地球規模で見ることで得られる気づきに溢れていた。

 

撮影筆者)
写真)ジオ・スコープ「夜の地球」
「一際強い光を放っているのはインドだ」(筆者談)

中でも驚いたのが「夜の地球」だ。夜間に明るい場所といえば、東京やニューヨークといった大都市を思い浮かべたが、表示された画像で国全体が強く光り輝いていたのはインドだった。

調べたところ、これは急速な経済成長と、政府主導のLED照明への切り替えプロジェクトに起因しているらしい。街頭をLEDにしたのと、家庭や事業者に向けてLEDの普及政策をおこなったため、街全体の明るさが向上し、衛星からでもはっきり見えるようになったようだ。

「ジオ・スコープ」は一度触り始めると知的好奇心が刺激された。

 

撮影筆者)
写真)ジオ・スコープ「寿命比較」
「平均寿命と健康寿命の長さを比較したデータの結果も意外だった。日本は特別健康寿命が長いわけではない」(筆者談)

 

どの展示も、関係者の「伝えたい」熱意が伝わる見応えのあるものだった。ぜひ足を運んで欲しい。

 

トップ写真:筆者撮影
写真)日本科学未来館 体験型展示「量子コンピュータ・ディスコ」




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