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.政治  投稿日:2025/6/2

パトリア、NEMOコンテナを陸自に提案


清谷信一(防衛ジャーナリスト)

【まとめ】

・フィンランドの防衛産業大手パトリア社は、陸上自衛隊へ、南西諸島防衛に向けたNEMO Containerを提案。

・陸上自衛隊は既に新型自走120ミリ迫撃砲を採用し、NEMOとは弾薬の共用性もないため、採用される可能性は極めて小さい。

・2022年に採用された同社8輪装甲車AMV XPは、2025年9月より国内生産が開始する予定。

 

フィンランドのパトリア社は日本のビジネス拡大を画策している。

同社は5月14~16日に幕張メッセで行われた軍事見本市、DSEIジャパンでコンテナに搭載した、120ミリ迫撃砲砲塔システム、NEMO Container を展示した。

陸上自衛隊は既に共通戦術装輪車の派生型である24式機動120mm迫撃砲を2024年度から開始している。24式はフランス、タレス社の半自動装填式120ミリ迫撃砲2R2M迫撃砲システムを採用している。これは陸上自衛隊が既に運用している牽引式のライフル砲身の120ミリ迫撃砲、120mmRTと弾薬が共通である。

陸上自衛隊が既に新型自走120ミリ迫撃砲を採用し、NEMOは滑腔砲を採用しているために120mmRTと弾薬の共用性もないために車載型の迫撃砲システムとして採用される可能性は極めて小さい。だが同社はNEMO Container を南西諸島防衛向けに陸上自衛隊に提案していく。

防衛省は本年4月に陸自と海自の合同部隊である海上輸送群を新設した。2027年度まで中型輸送艦(LSV基準排水量3500トン)2隻、にほんばれ級小型輸送艦LCU基準排水量2,400トン)4隻、より小型の機動舟艇4隻を整備する予定だ。

パトリア社はこれらの艦艇に火力支援の手段としてNEMO Containerを搭載、揚陸後は拠点防衛の火力として活用することを提案している。

NEMO(New Mortar)は後装填式の120ミリ砲塔システムで、砲塔は360度旋回が可能であり、仰俯角は-3~+85度、最大射程は10キロ以上で、射程距離1~6.5キロにおいては複数同時発射同時着弾(MRSI)が可能である。フィンランド製のユルモ型上陸用舟艇やスウェーデン製のCB 90などの小型艇にも搭載可能である。

▲写真 機動舟艇(筆者提供)

NEMO ContainerはNEMOを標準的な20フィートコンテナに搭載したもので、システム重量は11400キロとなっている。

対して2R2M迫撃砲システムは車内に搭載されており、射撃時には24式装甲車の上部を観音開き式に開閉する。他の同様なシステムは後部装填式が多いが、半自動式で、牽引型と同じく砲口から装填を行う。

この方式はNEMOのような後部装填で砲塔式のシステムよりも、射撃・撤収に時間がかかり即応性も低い。また射撃は停止して行う。対してNEMOは走行間射撃が可能であり、また直接照準で水平射撃も可能であり、近接火力支援や自衛能力が高い。クルーが装甲で守られた砲塔内で操作するので上部を開閉して射撃する2R2Mより生存性が高いといえる。米陸軍の120mm迫撃砲「M120」を採用しているが、これは滑腔砲であるので。陸自の120ミリ迫撃砲は米軍と相互互換性がない。

陸幕の既存の牽引型の120mmRTとの弾薬の共用性を勘案してほぼはじめから2R2Mを本命で検討していたが、120mmRTは普通科(歩兵)から特科(砲兵)に移行されており、120ミリ迫撃砲は120mmRTは退役させてすべて自走化すべきだったのではないか。それは生存性だけではなく、省力化の面でもメリットがあったはずだ。そうであればより広い候補から自走式迫撃砲を選択できたはずだ。

同社の8輪装甲車AMV XPは2022年12月に陸上自衛隊の次期装輪装甲車として採用され、2025年度までに82両の調達が決まっている。これは指揮通信車、野戦装甲救急車など多くの派生型が調達される。初期ロットは輸入されるが、ライセンス生産は日本製鋼所が担当し、2025年9月から国内生産が開始される予定だ。生産に際して同社は装甲車から撤退したコマツの関係者とベンダーを採用した。当初は組み立てから始めて、その後日本製部品の構成比率を上げていく計画である。

▲写真 機動舟艇(筆者提供)

トップ写真:パトリアのブースに展示されたNEMO(筆者提供)




この記事を書いた人
清谷信一防衛ジャーナリスト

1962年生 防衛ジャーナリスト 作家。日本ペンクラブ会員。

2003~08年まで英国の軍事専門誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』日本特派員を務める。ドイツの防衛専門誌、「European Security and Defence」(英字誌)日本特派員。 東洋経済オンライン、Japan indepthなどのオンラインメディアにも寄稿。

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