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.政治  投稿日:2025/6/18

【都議選公約分析】⑥公明党


西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)

【まとめ】

・公明党の都議選公約はアフォーダブル住宅など、福祉に重点。

・年収アップは、どう実現するのかわからない。

・一極集中問題への視点は感じられない。

 

▲写真 【出典】公明党HP

家計を圧迫する物価高などから生活に安心と希望を取り戻すことを目的に、4本柱からなる重点政策「家計応援計画」を策定。都議選6回目は公明党である。基本的な費用を所得制限なく無償化する「子どもベーシックサービス」など教材費や修学旅行費の無償化、英語教育の全公立小中学校での実施、就職氷河期世代のセカンドキャリアの後押し、介護DX、不妊治療休暇の促進などを提言している。

◆さすがの福祉政策

特徴の第一に、これまでの実績に基づいた政策を提案している。公明党が提案してきたものの1つに、「アフォーダブル住宅」(市場価格の8割の家賃)がある。官民連携ファンド(基金)を活用して、市場価格より安く入居できるそう。この家賃のレベルを「6割」に引き下げることを主張している。また、都公式アプリを活用した1人7000円分のポイントを付与することに貢献したが公明党は1万円分に増額することも主張している。そのほか、議員報酬の20%削減、政治倫理審査会を都議会に置くための条例検討委員会設置など実績は確かなものである。

第二に、福祉の党としての視点だ。特に働く人たちの立場にたっての政策が並んでいる。働きながら家族の介護を担う「ビジネスケアラー」は全国で360万人、仕事と介護の両立に苦労している実態を強調。煩雑な施設の入所手続きをデジタル化する「介護DX」を導入するそう。中小企業の生産性向上や従業員、就職氷河期世代やミドル世代の学び直しを支援なども提案している。

◆事業評価からの視点

公共政策と事業評価の専門家として2つの視点を問題提起しよう。

第一に、年収アップだ。「5年で平均年収200万円増」として東京に2人以上で暮らす勤労世帯の年収は2018年からの5年間で平均約105万円増加しています(東京都生計分析調査)。この流れを物価高に負けない賃上げにつなげ、特に現役世帯(世帯主が18歳以上65歳未満の世帯)の平均年収を今後5年間で200万円増やせるようめざします」と都議会公明党の重点政策「家計応援計画」で明らかにしている。そして、動画では都議会の重鎮が「政治は結果」だと主張する。非常にそれは素晴らしい目標であるが、具体的にどのように上げていくのか?が見えない。「失われた30年」、国政与党としてやってきて、経済政策も進めてきたが日本国民の平均賃金があがってこなかったわけだ。つまり、かなり厳しい言い方を言えば、結果を出せてこなかった。今更どのような新しいにできるのか?アップするためにはよほどの斬新な政策内容が必要だろうし、どのように実現するのか?なぜ可能なのか?という説明責任が求められるだろう。物価が上がって結果的に増えました・・・なんてことになるかもしれない。

▲写真 【出典】都議会公明党の重点政策「家計応援計画」

第二に、防犯機器の設置補助である。EBPM(Evidenced based Policy Making)の観点から、よくわからない。防犯カメラや防犯フィルム、カメラ付きインターホンなど個人住宅向け防犯機器の購入費を半分支援するということだそう。

そもそも、防犯機器設置で犯罪が抑制されるのだろうか?なぜ二万円か?購入しようか迷っている世帯が「設置しよう」というインセンティブになるのか?防犯機器を設置する余裕のない世帯にはそもそも入らないのでは?周りから見えにくい家については重点的に警察が見回りをすればいいし、防犯カメラの設置促進、町内会と連携して地域での声掛けをするなど、既存の事務事業の改善で対応できないのだろうか?

そのあたりがよくわからない。これらの点は、公明党が公約にて「成果」として誇っている「事業評価」の基本中の基本の検討項目である。

「トクリュウ」や闇バイトなどの強盗が入りやすい家は、過去に何かしらのデータが把握されて、ターゲット化されている。ターゲットになったことにはそれなりの理由があるだろうから、自分たちで防衛すればいいのではないだろうか。つまり、防犯機器を設置したい人が必要を感じるなら、自分たちのお金で設置すればいいだけだと思う人も多いだろう。

◆東京一極集中問題

最後に、一極集中問題への視点は感じられない。オーバーツーリズム、解消されない通勤時の混雑、過剰な都市開発。グランドデザインできるのは行政だけ。都市の開発に規制をかけ、持続的にまちづくりをできる主体は行政なのだ。災害対策も含めて考えてもらいたい。情勢調査では、手堅く票を獲得しそうだ。やはり地域での熱心な活動と強固な基盤があるのだろう。与党としての責任を果たす姿をより鮮明に見せてもらいたい。公明党に期待する。

トップ写真:散歩をする家族(イメージ)出典:StudioYummy/GettyImages




この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者

経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家


NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。


慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。


専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。

西村健

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