公明党公約分析 東京都長期ビジョンを読み解く!その51
西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)
「西村健の地方自治ウォッチング」
【まとめ】
・具体的な内容に踏み込んでいる点は評価。
・障がい者支援など、福祉に踏み込んでいる。
・議会改革は是非実行を期待する。
■具体的な「政策」
今回は公明党。「2017東京都議選に臨む重点政策」として
①「安全・安心」先進都市・東京へ―2020東京大会をめざして
②「誰もが生き生き」希望都市・東京へ―生活者の現場から
③「新たな活力」前進都市・東京へ――被災地とともに
の3本柱から構成され、様々な提案をしている。
特徴は具体性である。「整備」、「創設」、「導入」、「廃止」、「実施」などの言葉が並び、具体的な実行したかどうかが検証できる内容が多い。私がここで批判してきた抽象的な文言、なんだかよくわからない文言は少ない。
また、他の政党と比較して、都政の全政策を網羅しているわけではなく、焦点を絞って公約を組み立てている。全政策を網羅すればするほど、リストが200~300にものぼってしまい、“何でもかんでも感”がでるが、それを防いでいる。そこに政権与党としての優先順位判断があるのだろう。
■支持層に訴えつつの、さすがの提案
それでは中身を見てみよう。
【交通ネットワークの整備】
①羽田空港への鉄道アクセス路線を早期に整備し、利用者の利便性を大幅に改善
【人にやさしいまちづくり】
②鉄道駅のホームドア整備を拡充。特に視覚障がい者の利用が多い都立盲学校の最寄り駅での整備を積極的に促進
⑤バリアフリー改修助成制度を拡充し、高齢者や若者が入居しやすいように家賃補助、公的保証人制度を創設
【高齢者支援】
④入所費用が高い認知症グループホームに誰でも入所できるよう、低所得者に対する家賃助成を実施
【医療・障がい者福祉の充実】
②親亡き後の障がい者支援策として、グループホームの整備を加速
【若者への支援】
②ブラックバイトの根絶に向けた情報提供や相談体制を構築
これはさすがと言えよう。特に、障がい者にとっても、親にとっても、「親亡き後」は大きな問題である。それをここに入れてくるか!と正直感動した。さすが、福祉には強い政党である。
■意外な議会改革
【議会改革】
①都が策定する総合(長期)計画を議会の議決事項に
②1年を通じて本会議や委員会が開ける「通年議会」の導入
③委員会のインターネット中継の導入
④議長、副議長以外の公用車を原則、廃止
⑤議会のペーパーレス化を促進
議会改革は、小池都知事や都民ファーストの会に影響されたのだろうか。意外なほどによいものを提示してきた印象だ。予算に計上している「事務事業」を職員が適切に(現状分析、目的妥当性・有効性・効率性・公平性などの)自己評価し、議員が外部評価を行い、それに基づいた改善」を進めるという「行政経営」の基本についての言及があるとよりよかった。
長年の政権与党の時に少しでも手を付けて欲しかったと皮肉を言いたくなるが、今回ここに掲げたことは評価したい。
公明党に期待する。
【注意】上記あくまで私の意見ですのでご参考に。繰り返しますが、特定団体を応援する目的で記載していませんので悪しからず。
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この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者
経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家
NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。
慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。
専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。