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.国際  投稿日:2025/12/24

戦後秩序の終わりが見えた2025年 オフレコ発言と社説が映すジャーナリズムの歪み


宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)

宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2025 #50

2025年12月22-31日

【まとめ】

・2025年は、日本内政の保守化や国際秩序の揺らぎが重なり、戦後の安定期が終わり始めた年。

 

・官邸高官の核武装オフレコ発言を巡る報道は、日本メディアの立場の違いとジャーナリズムの矛盾を浮き彫りにした。

 

・年末の世界情勢は一見静かだが、2026年は既存のルールが崩れ新しい時代が始まる転換点となる。

 

 本稿が事実上今年最後の原稿となる。一年間ご愛読賜った読者の皆様に対し、心から感謝申し上げたい。後世の歴史家は2025年を「どんな年だったか」と振り返るのだろうか。筆者なら、「日本内政の保守化」「トランプ現象の陰り」「中国内政混乱の兆し」「欧州の凋落」「中東の地殻変動」といったヘッドラインを用いるかもしれない。

 

いずれにせよ、来る2026年が、1945年から80年間の「幸せで、安定し、予測可能性の高かった」戦間期の「終わりの始まり」となることだけは間違いなさそうだ。今までの「ルーティーン」が突然否定され、全く新しい「ルール」が始まるかもしれない。勿論、来年のことを言えば「鬼が笑う」のだろうが・・・。

 

先週最も注目されたニュースの一つが、いわゆる官邸安保担当高官によるオフレコ核武装」発言だった。あまりに興味深いので、本件に関する主要日刊紙の社説を読み比べてみたが、各紙の主張は大きく分かれている。例えば、最も進歩的(?)な東京新聞の社説の書き出しはこうだ。

 

  • 〈東京社説〉核持つべき発言 軽率のそしりを免れぬ(2025年12月20日)

首相官邸で安全保障政策を担当する政府高官が、日本は核兵器を保有すべきだと記者団に話した。個人的見解としているが、高市早苗政権が非核三原則の見直しを検討する中で核保有に言及すれば、日本政府に核武装の野心ありとの誤解を内外で招く。発言は軽率のそしりを免れない。・・・

 

続いては同じくリベラルの朝日、毎日両新聞はこう書いている。

  • (朝日社説)核兵器保有論 首相自ら明確に否定を(12月23日)

 ・・・個人の見解と断ってはいるが、安保政策について高市首相に助言する立場にある。日本が将来的な核武装の意図を秘めているのではないかと、内外で受け取られかねない。首相自らが明確に核保有を否定する発信をすべきだ。

 

  • (毎日社説)官邸内から核保有発言 問われる首相の任命責任(12月20日)

 ・・・唯一の戦争被爆国として「核なき世界」を目指す国家理念を否定する発言だ。首相は直ちに撤回させ、更迭すべきだ。・・・

 

要するに、以上三紙の論旨は、「発言は軽率」だから、高市首相は「発言を否定」し、同「高官を更迭」すべし、というのだろう。ふーーん、では保守系各紙はどうかというと、これが実に面白いことに非リベラル系3紙はこの問題を、23日現在、社説で一切取り上げていないのだ。うーん、これって、一体どう解釈すべきなのだろうか。

 

東京新聞の社説でも、「同高官は・・・核兵器は『すぐ手に入るものではない』とも述べ、米国による核抑止体制を維持する方が現実的との見方も示した」とはフォローしている。それでも、彼らは記者と発言者との信頼関係で成り立っている「オフレコ」発言を堂々と記事にしてしまうのだから、誠に恐れ入る話ではないか。

 

「オフレコ発言」であっても、内容が重大なら、平気で「オフレコ破り」も辞さない記者がいると思えば、「オンレコ発言」でない以上、記事や社説には取り上げない記者もいる。一体どちらが本当のジャーナリズムなのだろうか。この点につき筆者には「苦い」個人的な教訓がある。

 

詳細は言えないが、現役時代、ある問題で記者たちと「オフレコ」である発言をしたら、某新聞の一人の記者に「オフレコ扱い」はできないと急に言われた挙句、他の記者の多くもそれに同調しそうになったため、文字通り「進退」が極まりそうになった辛い経験がある。

しかも、その時の理由も、今回と同様、単に「内容が問題」だから、と言うものだったと記憶する。この問題については今週のJapanTimesに筆者の見立てを書くつもりなので、ご関心のある向きは御一読をお願いしたい。

 

さて続いては、いつもの通り、欧米から見た今週の世界の動きを見ていこう。ここでは海外の各種ニュースレターが取り上げる外交内政イベントの中から興味深いものを筆者が勝手に選んでご紹介している。今週はクリスマスもあり、あまり大きな行事はないようだが、欧米の外交専門家たちの今週の関心イベントは次の通りだ。

 

12月23日 火曜日 仏議会、2026年予算成立の期限

 印内相、スリランカ訪問

 

12月27日 土曜日 象牙海岸、議会選挙

 

12月28日 日曜日 ミャンマー、議会選挙始まる

 中央アフリカ共和国、総選挙

 コソヴォ、繰り上げ議会選挙

 

12月29日 月曜日 米イスラエル首脳会談(マララーゴ)

 

最後は、ガザ・中東情勢だが、上記の通り、年末にフロリダでトランプがネタニヤフと会うので、ガザ問題もそれまでは何も動かないだろう。今週はこのくらいにしておこう。皆さま、良いお年を。いつものとおり、この続きは今週のキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

 

トップ写真)首相官邸の外観

出典)首相官邸




この記事を書いた人
宮家邦彦立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表

1978年東大法卒、外務省入省。カイロ、バグダッド、ワシントン、北京にて大使館勤務。本省では、外務大臣秘書官、中東第二課長、中東第一課長、日米安保条約課長、中東局参事官などを歴任。

2005年退職。株式会社エー、オー、アイ代表取締役社長に就任。同時にAOI外交政策研究所(現・株式会社外交政策研究所)を設立。

2006年立命館大学客員教授。

2006-2007年安倍内閣「公邸連絡調整官」として首相夫人を補佐。

2009年4月よりキヤノングローバル戦略研究所研究主幹(外交安保)

言語:英語、中国語、アラビア語。

特技:サックス、ベースギター。

趣味:バンド活動。

各種メディアで評論活動。

宮家邦彦

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