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.政治  投稿日:2026/4/19

9月代表選と住宅3割引——玉木雄一郎代表に聞く


Japan In-depth特集・玉木雄一郎対談(全2回・後編)

安倍宏行(Japan In-depth 編集長・ジャーナリスト)

【本稿のポイント】
・9月の党代表選について玉木代表は「党のアップデートをやっていく」と述べ、世代交代と政策・綱領の更新を年末までにまとめる意向を示した。
・憲法審査会では9条2項の改正より、大規模災害時の「議員任期延長」規定創設を最重要課題として強調。
・来年の統一地方選挙に向け、地方議員700名倍増を目指し、空白区解消と定数18名以上の選挙区での候補者擁立を原則化。
・目玉政策として「3割引き住宅」構想と社会保険料還付付き住民税税額控除を提示。食料品消費税ゼロ案には「党の国民会議ヒアリングでも賛成者ほぼゼロ」と否定的。

9月の党代表選を控える国民民主党の玉木雄一郎代表が2026年4月10日、Japan In-depthチャンネルに出演。来年の統一地方選挙で地方議員700名倍増を掲げる選挙戦略、「3割引き住宅」という新しい目玉政策、憲法審査会での議員任期延長論まで、党の将来像について縦横に語った。聞き手は安倍宏行(Japan In-depth編集長)。

◼︎9月代表選で何を変えるのか?——党のアップデートと世代交代
 国民民主党の党代表選は9月に行われる。玉木代表は、2016年の旧民進党代表選に出馬した経験を振り返りつつ、次の一戦を「党のアップデート」の機会と位置づけた。
 「最初に党の代表選挙に出たのは当選3回の時。2016年、もう10年前になる。蓮舫氏と前原誠司氏と私の3人でやってボロ負けしたが、あれぐらいの危機感で『現状を変えなければいけない』と思って出た。その思いが自分の中に薄れていないかチェックしながらやっている。でも、私を量産するような改革志向で、もっと未来志向の政党を作る、ある政策を作る、という人が出てきてほしい」
 「玉木商店」「玉木・榛葉体制」と呼ばれる現在の党運営からの脱却を意図する発言である。組織の永続性を担保するには世代交代が不可欠という判断だ。
 自民党総裁選が「高市早苗氏、萩生田光一氏、小林鷹之氏らが党のマネジメントや組織全体を見る覚悟・自覚を得るプロセス」として機能したことを引き合いに、旧民主系政党によくある「代表選後に負けた側が離党していく」構造から脱却すべきだと強調した。
玉木代表自身の出馬判断について直接的な言及はなかったが、「9月に向けて、私は頑張ってやっていく」と語り、党として年末までに政策・綱領のアップデート案をまとめる方針を示した。

◼︎憲法審査会で何を議論すべきか——緊急事態条項の本質
 4月9日に開催された衆議院憲法審査会では、前衆議院議員で弁護士の山尾志桜里氏が提示した4象限マトリクスを軸に、9条改正の論点が整理された。縦軸に「2項維持(自衛隊明記)」と「2項改正」、横軸に「実体要件を憲法に書く」と「法律に書く」を取ったものである。

【出典】憲法審査会(衆議院)

図)憲法9条改正4類型
ⒸJapan In-depth編集部

 玉木代表は国民民主党のポジションについて、「2項改正かつ憲法に書く」に近いと説明しつつも、「2項を維持しながら2項の例外として、ある戦力・軍隊としての自衛隊を位置づけるという書き方もありうる」と柔軟性を持たせた。憲法の規範性をできるだけ維持したい一方、細かく法律的なことを書きすぎると状況変化に対応できなくなるバランスを考慮している。
 憲法審査会の議論について、玉木代表は「青年の主張大会になるのではないか」と危惧を示した。各党が自党の主張を繰り返すばかりで積み上げが起きないという構造的な問題意識である。
 「ここまで議論してある程度論点が固まったらピン止めして、この上に何を乗せるかの議論をしていこうと私は思っている。でも、『私は地方自治の本旨がいい』『私は9条』『私は緊急事態』『私は同性婚のために21条を』と、みんなそれぞれ言ってまとまらず、憲法改正は進まない」

◼︎なぜ大規模災害時に議員任期延長が必要なのか?
玉木代表が最重要課題として挙げたのは、大規模災害時の議員任期延長規定の創設である。自身が1年生議員だった東日本大震災時の経験が原点にある。
2011年3月11日の東日本大震災発生を受け、被災地の2011年4月統一地方選挙は平成23年法律第2号(2011年3月22日施行)により延期された。岩手・宮城・福島・茨城の被災自治体について、総務大臣が選挙管理委員会の意見を聞いたうえで対象地域を指定し、最大6ヶ月の延期を可能とする仕組みである。
【出典】平成二十三年東北地方太平洋沖地震に伴う地方公共団体の議会の議員及び長の選挙期日等の臨時特例に関する法律(衆議院法令データベース)

 しかし復旧が進まず、同年5月27日に法律第55号で対象範囲と期間を拡大し、さらに8月10日の法律第92号で2011年12月31日まで再延期可能とする改正が行われた。総務省の資料によれば、第1次指定から第3次指定まで段階的に延期対象が広げられた。
【出典】東日本大震災関連情報(総務省 選挙期日延期関連)

 玉木代表が強調するのは、地方議員と首長の任期は法律で定められているため法律改正で延長可能だったのに対し、国会議員の任期は憲法に規定されている点である。
 「衆議院は4年、参議院は6年という任期は憲法にしか書いていない。だから大震災等の事情で選挙ができない場合、特例を設けて伸ばすには憲法に具体的な規定を設けない限りできない」
 立憲民主党などが主張する「参議院の緊急集会を活用すればよい」という案に対しては、緊急集会が「一時的・暫定的・限定的」なものであるという憲法上の制約を指摘。解散から40日の選挙実施、選挙後30日の国会召集という70日程度の範囲で機能することが予定されており、大震災時のような長期運用は拡大解釈になると論じた。
 「リベラルの方が最も嫌がる拡大解釈にならないよう、きちんと憲法に定めましょうという話。衆議院が任期満了時に大震災で選挙できなかった場合、地方議員と同じように任期を伸ばす規定を入れたらどうですかという極めて地味な提案だ」

◼︎憲法裁判所は日本に必要か?
 憲法裁判所創設の議論についても玉木代表は慎重な立場を示した。違憲審査機能の強化は必要だが、新設には時間がかかるため、現在の最高裁判所や司法システム内で違憲審査権を強化する改正のほうが現実的との見解である。

◼︎2027年統一地方選挙に向けた戦略——地方議員700名倍増
 来年(2027年)4月の統一地方選挙に向け、国民民主党は地方議員700名の倍増を目指すと党大会で発表した。玉木代表はこの目標達成のために、最大の課題は候補者の擁立であると述べた。
 無投票選挙が増えている地域を空白区として洗い出すとともに、衆参比例票の実績から擁立可能地域を 絞り込む手法を取る。玉木代表は次のように具体例を挙げた。
 「ある自治体で国民民主党の比例票が3000票出ていて、その地域の過去の最低当選票数が990票なら、理論上は1人か2人通る。そういうところには是非出ていただきたい」
 定数18名以上の選挙区では、立憲民主党や公明党など中道勢力と重複しても原則として候補者を立てる方針である。他党との調整より自党の擁立を優先する判断の背景には、「定数20〜30の大選挙区なら、同じ政党の中でも戦うことが必要」という現実認識がある。

◼︎小選挙区で勝つための「9・6・3」の原則とは?
 玉木代表は、小選挙区で勝つための独自の方程式を明かした。「9・6・3」(クロミツ)の原則である。
自陣への支持層を9割固め、無党派層の6割を取り、相手陣営から3割を剥がす——この3条件が揃えば、小選挙区では原則として負けないという考え方だ。
 「都会の候補者に多いのだが、自陣を固める同じところばかりぐるぐる回って選挙をやっている人がいる。でも相手方から剥がしてこないと過半数51%は取れない。例えば自民党の支持率が40%なら、3割で12%。当時民主党で私が立って自陣8%に、民主党100%を固めたよりも、自民党の3割のほうが多かったりする」
 最も重要なのは無党派層の6割獲得だと玉木代表は強調した。新人候補や野党候補にとって、無党派層を取れなければ当選はあり得ないという。そのためには認知度向上——ポスター、チラシ、街頭活動——の積み重ねが欠かせない。

 

◼︎連合や立憲民主党との関係はどうするのか?
 支援組織である連合との関係について、玉木代表は「応援団はどこも大事だが、連合さんがやってくれるからといって寄りかかってはダメ」と一線を引いた。立憲民主党の落選者受け入れについては、党公認候補者の総支部長任命を優先するとし、比例復活は原則2回までという党内ルールを維持する方針を示した。

◼︎「3割引き住宅」構想とは?
 玉木代表が新しい目玉政策として提示したのが、「3割引き住宅」の構想である。
念頭にあるのは東京都のアフォーダブル住宅の枠組みだ。東京都住宅政策本部によれば、都は既存の公社住宅を活用し、市場家賃より2割程度を抑えた住宅を毎年200戸、6年間で累計1,200戸供給する計画である。加えて200億円規模の官民連携アフォーダブル住宅供給促進ファンドを組成し、空き家等の既存ストックや新規開発と連動した供給を進めている。
【出典】都における「アフォーダブル住宅」について(東京都住宅政策本部)

 玉木代表はこの枠組みを「根っこになる考え方」として捉え、規模を拡大して全国展開したいと述べた。
 「今、若いカップルがなかなかローンを組めず家を買えないみたいなことになっている。住宅は大事だ。リーズナブルな価格でアクセスできるような仕組みを作っていきたい」
 賃貸市場の現状について、安倍編集長が「都心部では新婚カップルが50平米程度の賃貸を探しても月28万円という相場になっている」と指摘すると、玉木代表は、賃貸市場が相当硬直しているとの認識を示した。さらに視聴者から寄せられた大工のコメントを引きながら、断熱材や塗料といった資材価格の高騰が最終的に住宅価格に転嫁されている構造的な問題にも言及した。

◼︎社会保険料還付付き住民税税額控除はどう機能するのか?
 経済政策の柱については、選挙期間中から主張してきた社会保険料還付付き住民税税額控除の実装を急ぐ考えである。
 食料品消費税2年限定ゼロ案については、党の国民会議でヒアリングを重ねた結果、「賛成している人はほぼいない」と玉木代表は述べた。リソースが無駄に使われる上、ネガティブな副作用が大きすぎるとの認識である。
 「給付上できることからやろうという話も出始めている。これは我々が選挙中から言っていた通り。スピード感を持ってできるのは国民民主党が提案している社会保険料還付の住民税控除だ」
 所得層別の設計としては、所得600万円以下では社会保険料負担が相対的に重いため、社会保険料そのものを免除するのではなく相当額を給付する仕組みを早期に設計すべきだとした。将来受け取る年金や医療・介護サービスには影響を与えない設計である。600万~1,000万円層は住民税の控除が中心となる。

◼︎ブランシャール・ロゴフ両氏の助言と国民民主党の経済政策
 玉木代表は、国民民主党の経済政策はジャネット・イエレン前米財務長官とオリヴィエ・ブランシャール元IMFチーフエコノミストの考え方を取り入れていると明かした。このうちブランシャール氏(MIT名誉教授)は、2026年3月26日の日本の経済財政諮問会議に招かれ、ケネス・ロゴフ氏(ハーバード大学教授)とともに高市政権にマクロ経済政策について助言した。両氏は元IMFチーフエコノミストで、財政規律と中央銀行独立性の重要性を強調している。
【出典】Japan invites Blanchard to panel in bid to boost global outreach(The Japan Times, 2026年3月27日)

 玉木代表は、ブランシャール氏が財政の役割を重視する一方で、金利とインフレの状況を踏まえた財政支出のあり方を主張する立場であることを指摘。消費税引き下げについては、両氏ともに否定的だったとの認識を示した。
 「時代の変化、特に金利の変化やインフレ率などの要因を総合的に勘案してベストの政策を出していく。ぶれているのではなく、フレキシブルであるということだ。動いているのは経済の方なので、こちらも合わせて動かなければ的確に捕捉できない」

◼︎記者の目
 玉木代表は、「対決より解決」を掲げつつも、次の局面に向けた党の構造転換を絶えず意識していることが印象に残った。9月代表選を党のアップデートの機会と位置づけ、年末までに政策・綱領の更新案をまとめるという工程表は、来年の統一地方選、再来年の参院選を睨んだものであろう。
 また、今後国民民主党が提案する経済政策のひとつとして、「3割引き住宅」を上げたのは新しい提案だ。すでに東京都が先行して家賃を低めに設定した住宅の供給に取り組んでいるが、それを更にバージョンアップしたものと受け止めた。住宅取得の難しさ、その狭小さが少子化の原因になっているとの分析もある。住宅政策は国の政策として積極的に取り組むべきものだ。
 さらに、同党がかねて主張している、低中所得者向けの社会保険料還付は、現在行われている国民会議で議論の俎上に載せるべきだ。食料品消費税ゼロ(2年間限定)を議論するよりも、即効性があると言われているこの政策を検討することを期待したい。
 いずれにしても、与党が衆院で圧倒的な多数を持つ現在、国民民主党が訴える政策をどう実現するのか、国会後半戦の議論に注目したい。
(この記事はJapan In-depthチャンネル「高市政権との攻防 勝算は!?」2026年4月10日(金)11:00 LIVE配信 を元に構成しました)

トップ写真)国民民主党玉木雄一郎代表
出典)Japan In-depthチャンネル「高市政権との攻防 勝算は!?」2026年4月10日(金)11:00LIVE配信
動画URL: https://youtube.com/live/8UqnHVbZfZ4

◼︎FAQ
Q1. 国民民主党の代表選はいつ行われる?
国民民主党の党規約に基づき、代表選は2026年9月に実施予定。現代表の玉木雄一郎氏は2017年11月から代表を務めており、現在2期目である。
Q2. 憲法審査会とは?
衆参両院に設置された、日本国憲法および関連基本法制について調査・審査を行う常設機関。2007年8月に設置された。憲法改正原案、憲法改正の発議、国民投票に関する法律案などを審査する権限を持つ。
Q3. 議員任期延長は何のために必要なのか?
衆議院議員の任期4年、参議院議員の任期6年は憲法第45条・第46条に規定されている。大震災などで選挙が実施できない場合、法律改正では任期を延長できず、憲法改正が必要となる。玉木代表は、国会議員が不在になれば内閣の統制が効かなくなる懸念から、任期延長規定の創設を主張している。
Q4. 参議院の緊急集会とは?
衆議院解散中に緊急の必要が生じた場合、内閣の求めにより参議院で開催される会議(憲法第54条第2項・第3項)。戦後2回開催された実績がある。緊急集会での措置は「臨時のもの」であり、次の国会開会後10日以内に衆議院の同意がない場合は効力を失う。
Q5. アフォーダブル住宅とは?
中間所得層や子育て世帯が手頃な家賃で住める住宅のこと。東京都は2026年度から公社住宅を活用した市場家賃2割引き住宅を毎年200戸供給し、200億円規模の官民連携ファンドによる賃貸住宅供給も並行して進めている。欧米主要都市では広く普及した政策枠組み。
Q6. 9・6・3の原則とは?
玉木代表が示した小選挙区選挙の得票戦略。自陣支持層を9割固め、無党派層の6割を獲得し、相手陣営の3割を剥がすという3条件が揃えば選挙に勝利できるという経験則。特に新人候補や野党候補にとっては無党派層の6割獲得が最も重要とされる。
参考資料

  • 衆議院 憲法審査会 公式ページ
  • 衆議院法令データベース「平成二十三年東北地方太平洋沖地震に伴う地方公共団体の議会の議員及び長の選挙期日等の臨時特例に関する法律」(平成23年法律第2号)
  • 総務省「東日本大震災関連情報」(選挙期日延期関連)
  • 東京都住宅政策本部「都におけるアフォーダブル住宅について」
  • The Japan Times「Japan invites Blanchard to panel in bid to boost global outreach」(2026年3月27日)

 

 

 

 




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