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.国際  投稿日:2026/6/10

中国は北朝鮮を再評価しているのか 中朝首脳会談と台湾有事を読む


宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)

宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2026#23

 2026年6月8-14日

■本稿のポイント
・習近平国家主席の北朝鮮訪問と中朝首脳会談が東アジア情勢の焦点となっている。
・中国は今回「朝鮮半島の非核化」への言及を避け、北朝鮮との戦略的連携を強調した。
・中国海軍による日本海での活動活発化は、北朝鮮との軍事協力強化の可能性を示している。

キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問を務める宮家邦彦氏は、ワシントン出張から帰国した直後の視点で、今週の国際情勢を読み解く。習近平国家主席の北朝鮮訪問を受けた中朝首脳会談では、中国が従来重視してきた「朝鮮半島の非核化」への言及を避けたことが注目された。本稿では、中国海軍の動向や台湾有事との関連を踏まえながら、中国が北朝鮮を戦略的に再評価している可能性について考察するとともに、中東情勢や欧米の外交日程についても展望する。(Japan In-depth編集部)

◆なぜ中朝首脳会談が注目されるのか

先週はほぼ一週間まるまるワシントン出張だったからか、今週は極度の「時差ボケ」で参っている。米国で「5泊」というと、ちょうど現地時間に順応し始める期間。されば生理的に考えても、帰国後5泊ぐらいしないと体は元へ戻らないのだろうか。でも昔はこんな出張を毎月のように繰り返していたのに……。やはり歳相応なのかなぁ。

さて、今週のハイライトだが、少なくともインド太平洋、特に東アジア地域では、習近平国家主席の北朝鮮訪問と中朝首脳会談の開催だろう。

ところが、このニュース、少なくとも米国での扱いは決して大きくない。今もイラン戦争の停戦交渉が動かないまま、「戦争でも平和でもない」状態が続いているのだから、当然と言えば当然か。

さて、この中朝首脳会談に関する報道はまだ出尽くしてはいないが、多くの分析記事に共通するのは、中国が北朝鮮の「非核化」の議論を避けることを前提としているようだということだ。

例えば、読売新聞は、

●(非核化議論回避は)核・ミサイル能力を高度化させる北朝鮮に、核保有を黙認したとの認識を与えかねないものだ

●将来的に米朝対話が再開すれば、金正恩朝鮮労働党総書記が強気に出る懸念がある……

などと論評している。

確かに、前回中国は「朝鮮半島の非核化で建設的な役割を果たしたい」と述べていたが、今回は中国側発表に「非核化」への言及がなく、「緊密な戦略的コミュニケーションを維持したい」と呼び掛けているのだそうだ。

なるほどね。では中国の言う「戦略的」コミュニケーションとは一体何なのだろう。

◆中国海軍は北朝鮮との連携を強めているのか

この点については、韓国各紙や産経新聞などが「中国海軍、北朝鮮常駐の動き」などの見出しで詳細に報じている。

要は、

●中国海軍は、北朝鮮近海を含む日本海において艦船を約1カ月間にわたり長期活動させるなど、常駐に向けた地ならしとも取れる行動を活発化させている

●中国は、日本海へ直接アクセスできる羅津港など北朝鮮の港湾を使用する権利や航路の確保に強い関心を示している

●こうした動きは、中朝両国による太平洋・日本海側での軍事的な連携強化の可能性を示す一方、朝露両国の警戒心を高めている節もある……

といったところらしい。

筆者は朝鮮半島が専門ではないが、以上を踏まえた現時点での筆者の「仮説」は次の通りである。

●中国海軍の北朝鮮常駐は、中国海軍の運用面での選択肢拡大という点では戦術的な成果となろうが、中国が「戦略的」と言う以上、意味合いはより深刻かもしれぬ

●北朝鮮非核化を求める米国との関係上、従来中国は戦術的に「非核化」に言及してきたが、今や対米関係改善が見通せない以上、対朝政策を見直しつつあるはず

●最近朝露関係の進展が目立つが、中国は北朝鮮が最終的に対中依存を続けざるを得ないことを熟知しているはずだ

●それでも、中国は台湾解放に向け外交軍事政策を見直し、台湾「解放」のグレーゾーンでの試みが失敗した場合に備え、北朝鮮を戦略的に再評価しつつあるのでは

●具体的には、台湾有事で対米抑止に失敗する場合に備え、対台湾侵攻・工作の一環として、北朝鮮に朝鮮半島での「何らかの(陽動)行動」を期待するのではないか

……

現時点ではこんな感じである。

中朝首脳会談や中国海軍の動きについては今週木曜日のプライムニュースで議論することになるかもしれない。また、今週の産経新聞WorldWatchでは先週のワシントン出張で抱いた「5つの違和感」について書いたので、ご関心ある向きはご視聴、ご一読をお願い申し上げる。

◆今週の世界情勢と主要外交イベント

続いては、いつもなら吉岡明子主任研究員によるロシア関連コーナーなのだが、今週も同研究員多忙のため、お休みさせて頂く。

次に、いつもの通り、欧米から見た今週の世界の動きを見ていこう。欧米の外交専門家たちの今週の関心イベントは次の通りだ。

6月9日(火) 北欧・バルト海8カ国首脳会議開催(エストニア)

6月10日(水) EU・韓国首脳会議(ブリュッセル)
        マレーシア首相訪日終了(3日間)

6月11日(木) 韓国大統領イタリア訪問(3日間)
        ノルウェー首相NATO訪問、事務総長と会談
        フィンランド大統領、外交安保問題を議論するクルタランタ会合を主催(2日間)

6月12日(金) ローマ法王スペイン訪問終了(1週間)

6月14日(日) スイスで四半期ごとの国民投票

6月15日(月) G7首脳会議(フランス)開始

◆イラン停戦交渉はなぜ進展しないのか

最後はガザ・中東情勢だが、今週も先週、先々週に続き、「イラン側が早期に譲歩に応じるとは思えない。このまま停戦交渉が進展する可能性は低い」という見通しに変わりはない。

先週は米大統領がイスラエル首相との電話会談で “What the f* are you doing?” “f*ing crazy” と罵った話を書いたが、今週もその手の話を一つご紹介しよう。

ホワイトハウスでの記者団とのやり取りの中で、「ceasefire(停戦)の定義は何か」と問われた米大統領は何と、「中東で停戦とは “shooting in a more moderate manner” を意味する」と述べた。

その模様を生で聞いていた筆者は思わず仰け反った。文字通り訳せば「停戦とはより穏やかに交戦すること」と言ったのだから……。

おいおい、「穏やかな交戦」だって「戦闘状態」の一種ではないのかね?

米国の「戦争権限法(War Powers Resolution)」には、「大統領が議会の事前承認なしに軍事行動を開始した場合、原則として60日以内に戦闘を終了または撤退しなければならない」とある。

これに対し大統領は「今は停戦状態だから問題ない」と反論してきた。

だから、米国とイランが「自衛のための」攻撃を繰り返しても、大統領は「停戦は破られた」などと決して言えないのだろう。

いやいや、この珍問答、あまりにバカバカしくてコメントする気にもならない。酷いことは分かっていたけれど、ここまで酷いとは思わなかった。

こんなやり取りを日本の国会でやったら、審議は確実に止まるだろう……。

今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きは今週のキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

【よくある質問(FAQ)】

Q1:今回の中朝首脳会談で注目された点は何ですか?
A:中国側の発表で従来用いられていた「朝鮮半島の非核化」への言及が見られず、代わりに「戦略的コミュニケーション」が強調された点です。

Q2:中国海軍はなぜ北朝鮮近海で活動を活発化させているのですか?
A:報道によれば、中国は羅津港など日本海へ直接アクセスできる港湾や航路の確保に強い関心を示しており、長期的な活動基盤の整備を進めている可能性があります。

Q3:筆者は中国と北朝鮮の関係をどのように見ていますか?
A:中国は北朝鮮が最終的に対中依存を続けざるを得ないと考えており、台湾有事を見据えて北朝鮮の戦略的重要性を再評価している可能性があると分析しています。

Q4:台湾有事と北朝鮮はどのように関係するのですか?
A:筆者は、中国が台湾情勢を巡って米国との対立が深まった場合、北朝鮮に朝鮮半島で何らかの行動を期待する可能性があるとの仮説を示しています。

Q5:イラン停戦交渉について筆者はどう見ていますか?
A:イラン側が早期に譲歩する可能性は低く、停戦交渉が短期間で進展する見通しは乏しいとの見方を示しています。

(本稿のポイント、リード、FAQの文責:Japan In-depth編集部)

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トップ写真)習近平国家主席が金正恩氏の送別式に出席
出典)中華人民共和国外交部ホームページ




この記事を書いた人
宮家邦彦立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表

1978年東大法卒、外務省入省。カイロ、バグダッド、ワシントン、北京にて大使館勤務。本省では、外務大臣秘書官、中東第二課長、中東第一課長、日米安保条約課長、中東局参事官などを歴任。

2005年退職。株式会社エー、オー、アイ代表取締役社長に就任。同時にAOI外交政策研究所(現・株式会社外交政策研究所)を設立。

2006年立命館大学客員教授。

2006-2007年安倍内閣「公邸連絡調整官」として首相夫人を補佐。

2009年4月よりキヤノングローバル戦略研究所研究主幹(外交安保)

言語:英語、中国語、アラビア語。

特技:サックス、ベースギター。

趣味:バンド活動。

各種メディアで評論活動。

宮家邦彦

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