高市・トランプ連隊の中国抑止効果とはその2 議会での超党派の高市支持
執筆:古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)
■本稿のポイント
・米議会では共和党・民主党の対立が激しいが、対日関係や高市政権への期待については超党派で前向きな姿勢が共通している。
・民主党穏健派のマーク・タカノ下院議員も、日本初の女性宰相としての高市首相訪米を「日米友好の象徴」と高く評価。
・日本での報道とは異なり、米国内ではトランプ大統領のイラン攻撃に対し、過半数を超える強い支持がある。
2026年3月、アメリカ連邦議会において高市首相の訪米が注目を集めた。米国内ではトランプ政権への評価をめぐり共和党と民主党の対立が続く中、対日関係では超党派の支持が維持されている。本稿では、議会関係者の反応や文化交流の事例を通じて日米関係の実態を明らかにするとともに、同時に議論の焦点となったイラン問題について、国際ジャーナリストの古森義久氏が分析する。(Japan In-depth編集部)
■米議会は高市政権をどう見ているのか?
高市首相とトランプ大統領の連隊を考えるうえでも、アメリカ側の国政にはトランプ政権だけでなく連邦議会が存在する。その議会はいま上下両院ともトランプ陣営と一体となる共和党が多数の議席を占める。だがトランプ政権の諸策に反対する民主党議員たちの存在も無視はできない。では民主党議員は高市政権をどうみて、首相の訪米をどう受けとめていたのか。
この点では私自身が議会の反応を直接に感知する機会を得た。ここでも結論を先に述べれば、いまのアメリカ議会では共和党と民主党との対立は険しいが、こと対日関係となると、超党派の前向き姿勢が共通しており、高市首相の来訪も両党とも温かく迎えるという状況なのである。
私は3月5日の夕方、連邦議会上院のラッセル議員会館内の大講堂でのパーティーに出席した。超党派の議員たちが加わっての日本酒の生産の各州での広がりを語り、祝うという珍しい集いだった。「日本酒レセプション」と題されたこの集まりは、在米日本大使館と米側生産者の「北米酒造組合」が連邦議会に呼びかけて開かれた。
アメリカでは近年、日本酒への人気が高まり、合計10州で醸造工場が開かれた。この集いでは日本側メーカーからの支援の表明とともに、日本酒工場を抱えた各州の連邦議員からの報告が主体となった。集会ではまず在米日本大使館の山田重夫大使が、高市首相来訪の直前にこの種の日米友好の集いを開催する意義は大きいと挨拶した。
■民主党も高市首相を支持する理由とは?
アメリカ議会側では合計7人の現役議員が参加した。そのなかでカリフォルニア州選出のマーク・タカノ下院議員(民主党)は壇上に立って「日本初の女性総理の高市氏の来米直前の時期に日本酒普及を祝うのはまさに日米友好の象徴だ」と言明した。
タカノ議員は名前が示すように日系米人で、下院では当選7回のベテランである。下院では教育委員会や退役軍人問題委員会で活動してきた。外交政策では民主党穏健派としてトランプ政権の政策に反対することも多いが、こと対日政策では歩調をあわせ、高市首相の訪問を歓迎すると表明したのだった。
いまのアメリカ議会では野党の民主党はトランプ政権のベネズエラ攻撃、イラン攻撃などには激しく反対する。国内政策でも民主党議員たちのトランプ政権への反発は激烈だといえる。だがそんな構図のなかで日本の高市政権の政策や、とくに日米同盟の堅持路線となると、民主党議員の大多数も前向きとなり、トランプ政権の基本姿勢には同調することが多いのだ。タカノ議員の言明はそんな民主党側の状態を反映していた。
■なぜイラン攻撃は米国内で支持されるのか?歴史的背景と世論構造
さてここでトランプ・高市首脳会談でも大きな影を広げたイラン問題にも光をあてておこう。日本の主要メディアでは民主党傾斜のニューヨーク・タイムズなどの論評の影響が大きいためか、トランプ大統領の方針への反対ばかりが拡大されるという傾向が強い。その際に引用される米側の各種世論調査も民主党寄りの機関によって実施される結果の報道が多い。トランプ政策への反対が多いという数字が伝えられる場合が頻繁なのだ。
だが全体を通じて近年のアメリカ側の一連の国政選挙での世論調査で実際の結果として最も正確な数字を発表してきたのはラスムセン社である。同社はいまでも大統領への全米の支持率の世論調査を毎日、実施する唯一の機関なのだ。そのラスムセン社の10日時点での全米調査によると、トランプ大統領のイラン攻撃には賛成が54%、反対が37%だった。
さらにトランプ大統領は3月15日にイラン攻撃の理由として「長年のアメリカに対する多数のテロ行動と核兵器の完成の切迫」をあげる説明を全米向けに伝えた。この説明を国民一般がどう受け取ったかというラスムセン社の世論調査では賛成が65%、反対が24%という結果が出た。
さらにラスムセン社以外の調査機関の調べでも、共和党支持者のなかでのトランプ大統領のイラン攻撃に対しては賛成が90%前後という高い数字ばかりが判明してきたのだ。
■イランへの強硬姿勢を支える「47年の汚辱」とは?
イラン攻撃を支持するアメリカ国民の間では「47年間の汚辱」という言葉がよく使われる。米側は過去47年にもわたってイラン側のイスラム原理主義政権に手ひどい屈辱を受けてきた、という感情の総括なのだ。このイランとアメリカの半世紀に近い敵対関係の歴史は日本では意外と語られない。
パーレビ国王の治世下の帝政イランは長年、親米国家だった。だが同国王の支配への反発が高まり、革命が起きた。1979年、イスラム教原理主義の宗教指導者のホメイニ師を亡命中のパリから本国に戻した勢力がパーレビ政権を完全に打倒した。同国王は癌を病んでいることが判明し、治療のためにアメリカに入国した。イランの宗教政権はアメリカに同国王の国外追放を要求した。
だが時のアメリカのカーター政権はその要求を拒否した。するとイラン側の過激派は首都テヘランのアメリカ大使館を襲撃し、米側の外交官ら50人ほどを人質にとったのだ。米側はもちろんテロ行為だと非難した。だがイラン側は人質のアメリカ外交官たちを後ろ手に縛り、目隠しをして、連日、テレビカメラの前に立たせて、アメリカ政府の悪口を述べさせるという行動に出た。この人質事件がなんと1年以上、正確には444日も続いたのだ。
この間、アメリカ側の一般国民には家庭内のテレビで自国の外交官たちのそんな無惨な情景が連日、放映される結果となった。この種のイラン側のアメリカへの敵対は、世界各地での米側を標的としたテロとしても長年、続いた。「アメリカに死を!」というのがイランの国家標語だった。そんな展開を米側の多数がいま「47年の汚辱」と呼ぶのである。1979年から2026年までの47年である。そのうえのイラン側の核兵器開発だったのだ。だからそんな政権を倒すことを強く支持するというアメリカ国民も多いのである。
トランプ大統領の今回のイラン攻撃にはアメリカ国民のこんな重層の支持もあるのである。このあたりはイランを単なる親日国家とみなす向きさえ少なくない日本側ではなかなか浸透しない認識だともいえよう。(つづく)
#この記事は月刊雑誌の『正論』の2026年5月号に掲載された古森義久氏の論文の転載です。
トップ写真:Iranians Marching Hostages
出典:Bettmann / 寄稿者 / GettyImages




























