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.政治  投稿日:2026/4/29

AI『Claude Mythos』は核兵器級、玉木代表が警鐘 サイバー安保を提起 


安倍宏行(Japan In-depth編集長)

【この記事でわかること】

・玉木代表は新型AI「Claude Mythos」登場で安全保障の概念が根本的に変わったと指摘。

・重要インフラへの脆弱性チェックと、政府によるAIアクセス権確保が急務との認識。

・認知戦・分断煽動への悪用リスクも警戒、政党・個人も「丸裸」と懸念を表明。

Japan In-depth編集長・安倍宏行は4月28日の国民民主党・玉木雄一郎代表の定例記者会見で、米Anthropic社が開発した新型AIモデル「Claude Mythos(クロード・ミュトス)」のサイバーリスクと規制のあり方について質問した。玉木代表は「ある意味、一部核兵器と同じぐらいのインパクトがある」との認識を示し、国家による管理監督の必要性を訴えるとともに、日本政府の対応の遅れに警鐘を鳴らした。 

Claude Mythosとは何か——なぜ「核兵器級」と評されるのか?

 Claude Mythos Previewは、Anthropic社が4月7日に発表した未公開のフロンティアAIモデルである。同社の発表によれば、このモデルはコーディング能力において一部の最も熟練した人間を除く全ての人間を上回るレベルに達しており、ソフトウェアの脆弱性を発見・悪用する能力を持つ。発表後の数週間で、主要なオペレーティングシステムやウェブブラウザを含むソフトウェアにおいて、これまで開発者に知られていなかったゼロデイ脆弱性を数千件発見したとされる(Project Glasswing公式発表)。

 Anthropic社は、Claude Mythosの一般公開を見送り、JPモルガン・チェース、Apple、Google、Microsoft、Nvidiaなどの主要パートナー企業に限定して防衛目的で提供する「Project Glasswing」を立ち上げた。技術的詳細は同社Frontier Red Teamのブログで公表されている(Claude Mythos Preview技術評価)。

 玉木代表はこの状況を踏まえ、「Mythosが出て、安全保障も含めたこのAIのあり方は、もう根本的に変わった」と述べ、「あらゆるシステムに侵入して、何十年も発見されなかったようなバグを見つけるみたいな能力を、もう一部のAIが持ち始めている」と現状認識を示した。その上で、「サイバー攻撃、サイバー防御の概念が根本的に変わっている」と述べた。

 金融システムへの影響にどう備えるべきか?

 玉木代表は、米国財務省と日本政府の動きにも言及。米国では4月7日、スコット・ベッセント財務長官とジェローム・パウエルFRB議長が大手銀行のCEOらを召集し、Claude Mythosのサイバーリスクに関する緊急会合を開催。日本でも片山さつき金融担当相が4月24日、日本銀行の植田和男総裁、3メガバンク、全国銀行協会、日本取引所グループ(JPX)の幹部らを集めた会合を開いた。片山大臣は会合後の記者会見で、Mythosのリスクを「今そこにある危機」と表現し、官民共同の作業部会を立ち上げたことを明らかにした(片山財務大臣兼内閣府特命担当大臣ぶら下がり記者会見の概要(令和8年4月24日)/金融庁)。

 玉木代表はこうした動きを評価しつつ、「金融システムへの影響は極めて大きいので、ある種の脆弱性のチェックを速やかにやらないと(いけない)」と述べ、対応を急ぐ必要があるとの考えを示した。具体的には、重要インフラとして指定されている電力や鉄道などの公共交通機関のシステムへの侵入リスクに言及。「そういうところにもいくらでも侵入して、それを止めたり、誤動作をさせたりということはもう可能になってきている」と警鐘を鳴らした。

 玉木代表は問題の本質について、「もうレベルの違う話になってきている。今までのAIがどうだ、著作権にどう影響だということを超えた、もう国家安全保障の問題そのものになってきている」と指摘した。

 なぜ政府によるAIアクセス権の確保が急務なのか?

 玉木代表は、日本政府としてClaude Mythos級のAIへのアクセス権を確保すべきだと主張した。

 「日本政府が早くやらなければいけないのは、Anthropic社など、AIの会社に交渉して、日本政府としてこういったシステムへのアクセスを認めてもらい、我が国の脆弱性のチェックをやらせてもらうということをしていかないといけない」と訴えた。Anthropic社が一般公開を制限している中で、日本政府として防衛目的のアクセスを確保する外交交渉が必要だという考え方だ。

 規制について玉木代表は、「ある意味、一部核兵器と同じぐらいのインパクトがある」のであれば、「一定のその国家による管理・監督・マネジメントということが必要になってくる」と述べた。「単に民間企業で開発したシステムですよ、ということの域を超えた、国家同士の安全保障にも関わる重要事態になってきている」と述べ、従来の枠組みでは対応できない局面に入ったとの考えを強調した。

 なお、英国AI Security Institute(AISI)が4月に公表した評価では、Claude Mythos Previewは過去のフロンティアモデルと比較してサイバー能力で段階的な向上を示し、人間の専門家が数日かかるタスクを自律的に実行できることが確認されている(AISI Mythos Preview評価レポート)。アラン・チューリング研究所の新興技術安全保障センター(CETaS)も、オープンウェイトモデルが追随するシナリオへの警戒を呼びかけている(CETaS分析レポート)。

認知戦・分断煽動への悪用にどう向き合うか?

 本紙は、国家システムへの攻撃のみならず、政党や政治家個人を標的とした分断煽動・認知戦への悪用リスクについて質した。玉木代表は「十分あると思います」と即答し、「私個人もそうだし、政党もそうですけど、多分そういう高度なAIからしたら、もう極めて脆弱な、もう丸裸になっているんだと思う」との認識を示した。

 その上で、「悪用する者が出てきて、認知戦に利用することもあると思うので、もう安全保障そのものの課題として、まずはそういった技術に対して、政府としてのアクセスを認めてもらって、政府としても連携対応が必要になってきている」と述べ、政党・政治活動の保護も含めた包括的な対応の必要性を訴えた。

国民民主党は何を提言しようとしているのか?

 玉木代表は、国民民主党として4月28日午後に安全保障調査会を開催し、金融庁、防衛省、日本銀行を呼び対応をヒアリングする方針を表明した。「重要な機関・インフラを担っているところ、あるいはそれを所管している省庁に来ていただいて、どのような対応をこれからしていくのかということをヒアリングする」と説明。「若しても(しかるべきものを)まとめて出していきたい」と述べ、政策提言につなげる構えを示した。

 玉木代表の発言は、AIの能力向上が「核兵器に匹敵する戦略資産」となりつつあるという国際的な認識を、政治家として明確に表明したものだ。米欧の規制当局が同時並行で動きを加速させる中、日本政府の対応スピードが問われている。

【よくある質問(FAQ)】

Q1. Claude Mythos(クロード・ミュトス)とは何か?

A. 米Anthropic社が2026年4月7日に発表した未公開のフロンティアAIモデル。コーディング能力が極めて高く、ソフトウェアの未知の脆弱性(ゼロデイ脆弱性)を自律的に発見し、悪用コードを生成する能力を持つ。発表後の数週間で主要OS・ウェブブラウザを含むソフトウェアでゼロデイ脆弱性を数千件発見したとされる。一般公開はされず、限定的なパートナー企業のみがアクセスできる。

Q2. Project Glasswingとは何か?

A. AnthropicがClaude Mythosを防衛目的で活用するために立ち上げた業界連携プロジェクト。JPモルガン・チェース、Apple、Google、Microsoft、Nvidiaなどの主要企業と、重要ソフトウェアを構築・維持する40以上の組織がパートナーとして参加し、自社システムの脆弱性発見と修正に同モデルを利用する。

Q3. ゼロデイ脆弱性とは何か?

A. ソフトウェアの開発者やベンダーがまだ把握しておらず、修正パッチが提供されていない未知のセキュリティ上の欠陥を指す。攻撃者がこれを発見・悪用すると、防御側が対策を講じる前に侵入が完了するため、極めて深刻な被害をもたらす可能性がある。

Q4. 金融庁はどのような対応を取っているか?

A. 片山さつき金融担当相は2026年4月24日、日本銀行の植田和男総裁、3メガバンク、全国銀行協会、日本取引所グループ(JPX)の幹部を集めた会合を金融庁で開催。Claude Mythosのリスクを「今そこにある危機」と表現し、官民共同の作業部会を立ち上げたことを記者会見で明らかにした。

Q5. 米国財務省とFRBはどのように動いたか?

A. スコット・ベッセント財務長官とジェローム・パウエルFRB議長は2026年4月7日、米国の主要銀行CEOを財務省本部に召集し、Claude Mythosのサイバーリスクに関する緊急会合を開催した。シティグループ、モルガン・スタンレー、バンク・オブ・アメリカ、ウェルズ・ファーゴ、ゴールドマン・サックスなどのCEOが出席した。

関連リンク

Project Glasswing — Anthropic公式

Claude Mythos Preview — Anthropic Frontier Red Team

片山財務大臣兼内閣府特命担当大臣ぶら下がり記者会見の概要(令和8年4月24日)— 金融庁

Our evaluation of Claude Mythos Preview’s cyber capabilities — UK AI Security Institute

Claude Mythos: What Does Anthropic’s New Model Mean for the Future of Cybersecurity? — CETaS, Alan Turing Institute

国民民主党公式サイト

写真)国民民主党玉木雄一郎代表 2026年4月28日 定例会見にて

ⒸJapan In-depth編集部




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