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.政治  投稿日:2026/4/29

「立憲的改憲」とは何か?階猛幹事長が語る中道改革連合の憲法改正路線


安倍宏行(Japan In-depth編集長)

【この記事でわかること】

・中道改革連合・階猛幹事長が示した「立憲的改憲」3点セットの内容

・山尾志桜里氏が提唱する「憲法9条改正4類型」と階氏の応答

・自民党主導の改憲議論に対する「権力統制型」改憲の対抗軸

・高市政権の「2027年党大会までに改憲発議」表明への階氏の評価

高市首相の「時は来ました」発言下で何が起きているのか?

高市早苗首相が4月12日の自民党大会で「時は来ました」と述べ、来年の党大会までに憲法改正の発議のめどをつけたいとの意欲を示してから2週間余り(日本経済新聞 2026年4月12日)。永田町では憲法審査会の動きが加速している。

4月23日午前の衆議院憲法審査会では、緊急事態条項に関する集中討議が行われ、自民・新藤義孝氏、中道・國重徹氏、維新・阿部圭史氏、国民民主・玉木雄一郎代表らが論戦を交わした(衆議院憲法審査会)。

同日午後、Japan In-depthチャンネルの憲法改正シリーズ「2026・改憲の分水嶺」第5回に登壇したのは、中道改革連合の階猛幹事長である。聞き手は編集長・安倍宏行と、共同MCを務める弁護士・元衆議院議員の山尾志桜里氏。

90分の議論で浮かび上がったのは、改憲論議の構図そのものを組み替える可能性を秘めた一つの提案だった。それが、本記事の主題である「立憲的改憲」3点セットである。

「立憲的改憲」3点セットとは何か?

階氏は、緊急事態条項の議論について次のように語った。

「議員任期延長というのは、極めて異例な事態であっても国会機能を維持するためにある。レアケースの場合でも国会を機能させるための手立てを議論するなら、セットでレアケースじゃない通常のケースでも国会を機能させるための手立てが必要だ。それは衆議院の解散権の制約とか、臨時国会の召集を速やかにするとか、そういうのもセットで議論すべきだ」

これに対し山尾氏は応じた。

「常にアジェンダセッティングが自民党や維新といった与党の側からされるよりも、野党の側から、内閣を歯止め、国会を強くする──緊急時には任期延長の緊急事態条項であり、平時には解散権と臨時国会だと。立憲的改憲というかたちで中道がパッケージで打ち出したら、私は憲法の議論が様変わりすると思います」

階氏は、山尾氏の言う「立憲的改憲」という枠組みについて、「立憲主義的な改憲の議論の進化──深める方の進化──を積極的にやっていくべきだ」と応答した。

「立憲的改憲」とは、山尾氏が2018年の著書『立憲的改憲──憲法をリベラルに考える7つの対論』(ちくま新書)で提唱した概念である(筑摩書房『立憲的改憲』)。「自民党による『お試し改憲』を阻止し、真に権力を縛り立憲主義を取り戻す」ことを掲げ、自衛権、安全保障、統治機構、違憲審査などを多方面から検討する立場である。

番組内で階氏が示した「立憲的改憲」3点セットは以下の通りである。

・緊急時の手立て:                     議員任期延長の緊急事態条項

・平時の手立てその1:    衆議院解散権の制約

・平時の手立てその2:    臨時国会召集の速やかな実施

(図)参議院の緊急集会(憲法54条)と緊急事態条項(改憲案)の比較

ⒸJapan In-depth編集部

解散権制約は法律で足りるのか、憲法改正が必要か?

3点セットのうち、解散権制約については旧立憲民主党が2025年6月10日、「衆議院の解散に係る手続等に関する法律案」(解散権濫用防止法案)を衆議院に提出している(立憲民主党 2025年6月10日)。同法案は、内閣が衆議院の解散の予定日と理由を10日前までに衆議院に通知することなどを義務付けるもので、戦後27回の衆院選挙のうち26回が解散による選挙であった現状を踏まえた立法措置である。

階氏は番組内でこの法案に言及した上で、解散権制約が法律で十分なのか憲法に書き込むべきなのかという問いには立ち入らなかった。だが議論の流れから示されたのは、現行の解釈と運用の硬直化への懸念である。

階猛氏は9条2項改正をどう考えているのか?

番組では、シリーズの軸である山尾氏の「憲法9条改正4類型」が階氏に提示された。大きく①二項維持・自衛隊明記と、②二項改正(削除含む)に分け、それぞれを「実体要件を憲法に書く(ア)」と「実体要件は法律に書く(イ)」に分類する2×2のマトリクスである。

・①-ア:二項維持・自衛隊明記、実体要件を憲法に書く

・①-イ:二項維持・自衛隊明記、実体要件は法律に書く

・②-ア:二項改正(削除含む)、実体要件を憲法に書く

・②-イ:二項改正(削除含む)、実体要件は法律に書く

(図)山尾志桜里氏が提示している「憲法9条改正4類型」

ⒸJapan In-depth編集部

階氏の立場は、これまで衆院選候補者アンケート等で表明してきた通り、自衛隊を9条に明記する改憲には反対である。

「国民の多くはもう自衛隊はあって然るべきだと。むしろ皆さんに信頼されている中で活動しているわけだから、必要性はないと思う。明記しないといけないと言っている人たちは、それぐらい自衛隊を世の中に認めてもらう必要があると今でも考えているのか、という感じだ」

注目されたのは、9条の意義について階氏が示した独自の論理である。

「政府の一存で自衛隊がいろんなことができるようになったら危険だ。自衛隊に対する縛りをちゃんとできるようにするために9条は非常に大事だ。日米首脳会談みたいに、アメリカに何か言われた時に、『国際法違反だから自衛権発動できません』と言ったら、トランプとの間で軋轢が生じる。そういう時にやっぱり9条という憲法上の縛りがあるからできないんですと言うと、日米関係にもヒビが入らないし、ちゃんと日本の平和主義も守れる。そういう9条の意味もある」

4類型②-アに階氏はどう応答したのか?

これに対し山尾氏は、自身の立場である類型②-ア──9条2項を改正したうえで、新三要件など実体要件を憲法に書き込み、これ以上枠が外れないように縛る──を提示した。

「中道として今の新三要件自体を認めているのだとしたら、新三要件を憲法に書いて、これ以上さらに枠が外れないように縛っておくという選択肢はどうか」

階氏は、立憲系議員としては踏み込んだ。

「そういう考えは理屈の上でもありうると思う。山尾さんのおっしゃる立憲主義的な歯止めをかけるという立場から9条をどう考えていくのかというのも、ちゃんと耳を傾けて議論していかなくちゃいけないなと思います」

階氏は同時に、現行9条が日米関係における憲法上の縛りとして機能する側面を強調しており、類型②-アに同意したわけではない。だが、立憲主義的な観点から9条改正を検討する余地を否定しなかった点は、立憲・公明合流以前の旧立憲民主党の伝統的な立場とは異なる響きを持つ。

起草委員会は誰が、どのように運営するのか?

3点セットの議論の場をめぐっては、両者から条文起草委員会(以下、起草委員会)の運営に関して懸念が示された。山尾氏は、起草委員会が憲法審査会と別枠で設置されると、オープンな議論が置き去りになるとの懸念を示した。

階氏は、起草委員会についても「公開であるべき」で、「テーマの合意、メンバーの参加、すべて少数政党も含めて行われるべきだ」と応じ、衆院憲法審査会の伝統である(初代会長の)中山太郎方式──少数意見の尊重と合意による議論進行──の維持を主張した。

写真)左から編集長安倍宏行、山尾志桜里氏、階猛氏

ⒸJapan In-depth編集部

階氏は今の憲法審査会の議論をどう評価しているのか?

高市首相の改憲意欲については、前日(4月22日)に同チャンネルに出演した中道改革連合・小西洋之参議院議員が「全然、熟していない」と評していた。これに対し階氏は次のように評価した。

「本当にだんだん議論がピンポイントになってきた。今まで拡散発散する方向の議論だったのが、テーマが絞られてきて、その中で深い議論が行われるようになってきた」

中道改革連合内の小西氏と階氏で、現状の憲法審査会への評価には濃淡がある。階氏は野党第一党幹事長として、議論の進化を肯定的に位置づけた。

【記者の目】

階氏が示した3点セットは、自民党主導の「権力強化型改憲」の枠組みに対し、「権力統制型改憲」という対抗軸を提示する可能性を持つ。

中道改革連合の基本政策(2026年1月19日発表)は、第4の柱として「現実的な外交・防衛政策と憲法改正論議の深化」を掲げる(日本経済新聞「中道改革連合 基本政策の全文」)。立憲・公明という9条観の異なる2党の合流によって生まれた新党にとって、9条論議そのものは時間を要する。だが、立憲的改憲の3点セットであれば、両党の伝統的な立場とも齟齬が小さく、党としての旗を立てやすい領域である。

(図)憲法改正に関する公明党・中道改革連合・立憲民主党の立場比

ⒸJapan In-depth編集部

 

階氏は番組終盤、「中道になって、立憲と公明から議員が集まってできているが、考えは近い。考えは近いけど表現は全く逆、みたいなところを今、合わせていきましょうという作業中だ」と述べた。

高市政権が2027年党大会までの発議を目指す中、野党第一党が「立憲的改憲」3点セットを党の旗として打ち出すかどうか。いずれにしても憲法審査会の議論が深化していくことを期待したい。Japan In-depthは引き続き、このテーマを取り上げていく。

【よくある質問(FAQ)】

Q1. 「立憲的改憲」とは何ですか?

山尾志桜里氏が2018年の著書『立憲的改憲──憲法をリベラルに考える7つの対論』(ちくま新書)で提唱した概念です。「真に権力を縛り立憲主義を取り戻す」ことを目的に、自衛権の範囲明示や憲法裁判所の設置などを通じて、権力統制を強化する改憲の方向性を指します(筑摩書房『立憲的改憲』)。

Q2. 中道改革連合とは?

立憲民主党と公明党の衆議院議員が結集して2026年1月16日に結党された政党。略称は「中道」。代表は小川淳也氏、共同代表に斉藤鉄夫氏、幹事長兼選挙対策委員長に階猛氏が就任。基本政策は「①持続的な経済成長への政策転換②現役世代も安心できる新たな社会保障モデル③包摂社会④現実的な外交・防衛政策と憲法改正論議の深化⑤政治改革と選挙制度改革」の5本柱(日本経済新聞「中道改革連合 基本政策の全文」)。

Q3. 解散権濫用防止法案とは?

立憲民主党が2025年6月10日に衆議院に提出した議員立法「衆議院の解散に係る手続等に関する法律案」のこと。内閣が衆議院解散の予定日と理由を10日前までに衆議院に通知することなどを義務付け、首相による恣意的な解散を抑制することを目的とする(立憲民主党 2025年6月10日)。提出者は武正公一、谷田川元、青柳陽一郎、山花郁夫、吉川元、落合貴之の各衆議院議員。

Q4. 衆議院憲法審査会の中山方式とは?

故・中山太郎元衆議院憲法調査会初代会長が確立した憲法審査会の運営原則。少数意見を尊重し、多数決ではなく合意によって議論を進めることを基本とする。これにより与党単独で結論を出すことが事実上避けられてきた。

関連リンク

Japan In-depthチャンネル「2026・改憲の分水嶺」シリーズ

・第1回 国民民主党・浅野哲衆議院議員:YouTubeで視聴

・第2回 日本維新の会・馬場伸幸衆議院議員:YouTubeで視聴

・第3回 自由民主党・細野豪志衆議院議員:YouTubeで視聴

・第4回 参政党・松田学参議院議員:YouTubeで視聴

・第5回 中道改革連合・階猛衆議院議員(本記事の対象動画):Japan In-depthチャンネル

一次情報・参考資料

衆議院憲法審査会 公式サイト

立憲民主党「『解散権濫用防止法案』を衆院に提出」(2025年6月10日)

日本経済新聞「立民・公明の新党『中道改革連合』基本政策の全文」(2026年1月19日)

山尾志桜里『立憲的改憲──憲法をリベラルに考える7つの対論』(ちくま新書、筑摩書房)




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