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.政治  投稿日:2018/10/1

立憲民主党・山尾志桜里衆院議員に聞く【憲法改正論】


Japan In-depth 編集部

 

【まとめ】

・立憲主義的な観点から積極的な憲法議論をすべきだ

・安倍首相提唱の「2項維持・自衛隊明記」案は有毒

・旧3要件を明記し、自衛権の範囲を明文化すべき

 

 

◇立憲主義的観点からの積極的な憲法議論を推進

 

Q.立憲民主党の改憲論議のキーワードは「立憲主義」ということか。

山尾氏:

そうだ。12月7日にまとめた「立憲民主党の憲法に関する当面の考え方」で強調したいのは「権力を制約して国民の人権を保障する」という立憲主義の観点から積極的に憲法を議論するということ。一語一句変えない護憲政党みたいなイメージがついている気がするが、護憲・改憲の二元論を超えて立憲的憲法議論をすると書いてある。仮に9条の自衛権の統制をする場合には、個別的自衛権か、集団的自衛権まで認めるのか、かなり細かく統制をかけなければならないという趣旨も注釈にある。残念ながら、こういうスタンスが党外であまり浸透していない。安保法制は立憲主義違反だということや、安倍首相の自衛隊明記は危険だということは共有されているが、それを踏まえた次の段階としての憲法議論の作法についての立憲の考え方もぜひ国民に知ってもらいたい。

 

Q.立憲主義的改憲とは?

山尾氏:

一番大事なのは個人の尊厳だ。国家の対外的主権と、国内での国民主権が憲法の肝だ。国家による権力行使を国民自らがコントロールしていくという考え方。一方、いくら国民が選挙で選んだ国家を国民が憲法で統制しても、対外的な国家の主権が確立していなければ、絵に描いた餅だ。そう考えると、やはり国家を統制する一番の核心である自衛権を国民の意思でどう統制していくかという9条論になる。それと日米地位協定の問題。国家主権をどこまで正常化するのかという問題だ。また、安倍政権になって憲法を守らない国家に対するサンクション(社会的制裁)はどうあるべきかを考えるようにもなった。国家を統制する憲法の条文をつくっても、それを国家が守らない時にどういう仕組みをどう内在させていくのか。問題提起としては憲法裁判所だ。安保法制が合憲か違憲かを国会で政策論争とごちゃまぜにやっても収拾つかなかった。そして現制度では具体的事件がない限り、それが合憲か違憲かの司法の判断はできない。具体的事件に発展する前に、国家権力のふるまいの憲法適合性を、中立・独立の裁判官で構成される憲法裁判所が判断し、違憲の場合には是正できる仕組みをきっちり内在させていく、そういう3本柱を考えている。

 

 

◇安倍首相案は有毒

 

Q.安倍首相提唱の「2項維持・自衛隊明記」案について。

山尾氏:

安倍首相は「ありがとう!自衛隊」という情緒的な文脈で憲法改正を語るのはやめたほうがいい。

そして我々も、安倍首相の案が「小手先の無害なものだ」との誤解は正したほうがいい。2項をそのままにして3項に自衛隊を書くのは、自衛隊ができることのルールを憲法ではなくて、法律の話に落とし込むという解釈を生む。それは憲法上安保法制をこえるフルスペックの集団的自衛権を行使するフリーハンドを自衛隊の行動に与える根拠になる。そういう意味では、安倍首相案は無害どころか、きちんとした議論もないまま穴を開けるような話で、かなり有害な毒を持っている案だと国民に知ってほしい。

そして2項を残したまま自衛隊の存在だけ書いても、合憲・違憲の議論はそのまま残る。安倍首相が言う「もう自衛隊を違憲とは言わせない」という目的は達成できない。

 

Q.2項は変えるべきだという考えか?

山尾氏:

少なくとも自衛権の範囲に制約をかけることと同時に、その範囲で戦力、交戦権の一部行使なのだということを定めるほうが、それ以上の交戦権や戦力は認めないという意味で9条の2項の精神を蘇らせることができる。いままでみたいに「戦力にあたらない」、「交戦権にあたらない」と言えば、ノーチェックという状況から脱する必要がある。

 

◇旧3要件を明記し、自衛権の範囲を明文化

 

Q.山尾氏の改憲案について。

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【山尾氏の改憲案】

 

憲法9条の2を新設し、自衛権の範囲を限定。

 

具体的には、「旧3要件」をも書き込み、「この要件下での個別的自衛権の行使に限る」趣旨を明文化して歯止めにする。

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山尾氏:

1項2項にそのまま触れなくても、9条の2で、この範囲の個別的自衛権を行使するにあたっては前条の規定にも関わらず、交戦権を行使することができる、あるいはそういった個別的自衛権の行使、そして交戦権の行使のためには、前の規定に関わらず、必要最小限の戦力を保持することができるのだと(規定できる)。

個別的自衛権の範囲において(2項の一部を)解除するというイメージだ。

私は、個別的自衛権と集団的自衛権でラインを引く考え方を取る。どの線引きをしても、何らかの統制をかける以上グレーゾーンは出てくるが、今までの議論の積み重ねの中で、個別的自衛権に限る中で物事を吸収していくのが一番適切だと思う。

 

◇「安倍政権下で改憲論議は進めない」は立憲的思考ではない。

 

Q.党内に「安倍政権下で改憲論議を進めるべきでない」という考えの人が多いのでは?

山尾氏:

気持ちは分かる。私は安倍首相に「憲法を変えたがる前に憲法守れ」と言っている。ただ、「守れ」と言うだけではなく、安倍首相であれ、どの首相であれ、憲法を守らざるを得ないように憲法の力そのものを強めていく知恵を出していかなければいけない。「安倍首相の下ではだめ」というのは、人の支配につながっていってしまう。大切なのは法の支配だ。「この人の下ではだめ」、「この人だったら何でもいい」と。それは本来の立憲的な思考とは違う。

 

(この記事は、2018年3月7日放送のJapan In-depthチャンネルの放送内容を要約したものです。)

トップ画像:©Japan In-depth編集部

 

 


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