【W杯】ブラジル戦を前にイチローらレジェンドがサッカー代表に贈る言葉 「意識して欲しい日本人らしさ」とは…
執筆者:松永裕司(Forbes Official Columnist)
■本稿のポイント
・2026年FIFAワールドカップ北中米大会日本対ブラジル戦について、イチローは勝敗の結果よりも「日本人としての態度と言葉」を世界に示すことの重要性を説き、日本代表としての自覚を強く求めた。
・日本人初のW杯ゴールを決めた中山雅史は、現在の日本代表を「最高に熟成されている」と評し、優勝という目標に臨む選手たちに最大のエールを送った。
・末續慎吾はスポーツ教室で子どもたちの姿に触れ「どこで大人はキラキラをなくしちゃうんだろう」と語った。
2026年FIFAワールドカップ北中米大会のベスト16を懸けたノックアウトステージ開幕を前に、イチロー、中山雅史、末續慎吾の3人が27日、MUFGスタジアムで開催されたキッズ向けスポーツ教室「UNIQLO ICHIRO DREAM FIELD DAY」に参加。30日未明に迫ったブラジル戦に臨む日本代表へのエールと、それぞれの近況について、Forbes Official Columnist・松永裕司が取材した。(Japan In-depth 編集部)
2026年FIFAワールドカップ北中米大会はいよいよベスト16を懸けたノックアウト・ステージへと突入した。サッカー日本代表は30日未明、世界最強王国ブラジル代表と歴史的な一戦を迎える。
これに先立ち、MUFGスタジアムにてキッズ向けスポーツ教室「UNIQLO ICHIRO DREAM FIELD DAY」が27日に開催され、MLB殿堂入りを果たしたイチローさん、日本人としてW杯で初ゴールを決めた中山雅史さん、そして北京五輪銀メダリスト末續慎吾さんが参加。大一番に臨むサッカー日本代表に向け、エールを送った。
この決戦の舞台に向け、日本サッカーの進化に対する揺るぎない確信を語ったのは、1998年フランス大会ジャマイカ戦で、日本人として初のゴールを決めた “ゴン”こと中山さん。
「とにかく上の景色を見せてもらいたいと思います。選手も“優勝を目標にしている”と掲げていますから、そこに少しでも近づいてもらいたいです。そこに向けた戦い、熱い戦いを見せてくれたら嬉しい」
かつて日本がW杯の舞台に立つことすら夢であった時代を知る中山さんだからこそ、自らの口で「優勝」という途方もない目標を堂々と掲げ、世界に挑む現在の選手たちの姿勢に強いリスペクトを抱いている。
「日本のサッカーを世界に知らしめてもらいたいです。いつもW杯出るたびにそうは思っていますが、今回(の日本代表)は最高に熟成されているという思いはあります」
この「最高に熟成されている」という言葉には、幾多の苦難を乗り越え、世界基準の個性を磨き上げてきた現在の日本代表に対する最大の賛辞が込められている。ブラジルという王国を前にしても、決して怯むことなく、自分たちの力を世界に知らしめること。それが、歴史を塗り替えるための最初の一歩となる。中山さんの初ゴールから今大会チュニジア戦における伊東純也のゴールで日本代表30ゴール目。ラウンド32前夜にて32得点まで積み上げたゴールは、どこまで伸びるだろうか。
◆結果の向こう側にある「日本人としての態度」
しかし、そうしたピッチ上での勝敗や技術の誇示のさらに先にある、戦う者としての「真の覚悟」を問いかけたのがイチローさん。その視線は、単にブラジルに勝つか負けるかという結果にとどまらない。世界最高峰の舞台だからこそ、ひとりの人間として、そして日本人としてどうあるべきかという問いを日本代表へと投げかけた。
「サッカーに限らず、日本代表のチームには、もちろん日本の技術、力、それを当然世界に示してほしい。それは当然なんですけど、それが結果として出た時、出なかった時。日本人としてどんな態度を取るか。僕すごく興味があります。いったいどんな言葉を残すか。そういう意識を持ってほしい。普通のレギュラーシーズンのゲームで、なかなか響かない言葉も、世界の大会では、ひとつの言葉が影響を持つ。結果はもちろんそうですが、日本代表としての意識を、言葉、態度に僕は重きを置いている。その自覚持ってほしいです」
この言葉は、ブラジル戦という極限のプレッシャーがかかる舞台に臨む選手たちにとって、極めて重い意味を持つ。勝利を収めた時に傲慢にならず、敗北を喫した時に言い訳をせず、いかに毅然とした態度を貫けるか。試合後のインタビューにおいて、世界に向けどのような言葉を発するのか。
「その言葉がものすごく影響を持つ」と言い切る背景には、大舞台における振る舞いの重みを誰よりも知る、イチローさんとしての経験がある。結果の向こう側にある「日本人としての態度と言葉」において、世界に感銘を与えることの重要性を説き、イチローさんは日本代表という肩書きが持つ真の重みと自覚を強く求めた。
陸上界で世界の強豪と渡り合ってきた末續さんも深く同調し、次のように語った。
「本当おっしゃる通り、競技場に入ってくる時、競技場去る時を、僕も割とこう見てしまう方です。所作が出るというか、日本人の所作がある、何を喋るのか、どういう風に入ってくるのかとか、感じる方だから。日本代表というよりも、日本を見ている感じですよね」
「日本代表というよりも、日本を見ている」という言葉は、イチローさんの言う自覚と美しく共鳴している。ブラジル戦において、世界の人々が目にするのは、単に青いユニフォームを着たプレイヤーではない。日本代表の立ち振る舞い、ピッチへの出入りの際の所作を通じて、世界は「日本という国そのもの」を見つめている。
◆イチローの必殺技“カチョエペペ”
取材の最中、3人には「最近、好きになったこと」というカジュアルな質問も飛んだ。
イチローさんは意外にも「完全に料理ですね」と、日々のキッチンでの習慣を明かした。「これまで僕はいつも家にいたら、もう料理が出てくるの待ってるだけの状態だったんですよ。ある時、僕がまるまる1カ月以上、家にいることが確定し『この状態は良くない。それは何か起きるかもしれない』と感じたんです」という日常の危機感から料理への旅路が始まった。料理が趣味の友人に教えを請い、始めたのが2024年12月の出来事。しかし、その探求心はすさまじい。それがカチョエペペ、チーズのパスタだそうだ。
その極意についてイチローさんは語る。
「茹で加減なんですよ。これさえ間違えなければ大丈夫。10分半超えたら、もうそこから先は感覚。10分半まではカウントします」
茹で加減は何秒というレシピに縛られるものではない。そうイチローさんが語ると、中山さんが「わかりますか。これは天才の感覚なんです」と猛烈なツッコミ。するとイチローさんが「いや、パスタの種類によりますけどね。8分10秒のものももちろんあります」と、切り返した。
イチローさんの料理のインパクトについて質問が飛ぶと、グラウンド上とは異なる満面の笑みで語った。
「まず僕のエプロン姿でみんなびっくりしてくれます。エプロン姿で出迎えるから。僕も最初は、しっくりこなかったんだけど、面白いもんで毎日やっていると、もう制服みたいな気分、今はなかったら気持ち悪いくらいです。最初に覚えたカチョエペペは、これまでダメ出しを食らったことはないです」
今後、挑戦したい料理については「難しいけどイカスミのリゾット。パスタはちょっと(ソースが)飛んじゃうから難しいんだけど、イカスミだったらリゾット作りたいなと思います」との回答だった。
◆忘れたくない「キラキラ」と永遠の伸び代
末續さんはこの日のスポーツ教室で子どもたちの無邪気な姿に触れ、「子供たちは元気。もうあんなキラキラしている姿を見るのは本当に嬉しい。僕はいつ忘れちゃったんだろうと毎回思います。どこで僕たち大人は、キラキラをなくしちゃうんだろう。あのキラキラした感じ、忘れたくないと思いました」と語った。
イチローさんも「大人が学ぶことも多いですよ。全くその通りです」とこれに同調。このイベントの継続について聞かれると、次のように前を向いた。
「それは挑戦ですよね。この日だけに向けて調整できない。やはり毎日やってないと今日走れない。その日々の鍛錬がないとできない。子供にプロってこうなんだって見せてあげないとダメ。しかも彼らの世代は現役のプレーを知らない。今できなきゃダメ。これからまた続けていく、そういう気持ちになりました」
日本スポーツの殿堂MUFGスタジアムから発信されたレジェンド・アスリートのエールは、アメリカの地で戦うサッカー日本代表に届くだろうか。日本サッカーの新たなる夜明けを告げるホイッスルは、まもなく鳴り響く。

写真:キッズ向けスポーツ教室「UNIQLO ICHIRO DREAM FIELD DAY」の様子(筆者提供)
【よくある質問(FAQ)】
Q1:「カチョエペペ」とはどのような料理ですか?
A:イタリア発祥のパスタ料理で、ペコリーノチーズと黒胡椒だけで作るシンプルな一品です。材料は少ないながらも、チーズをなめらかに溶かすための火加減や茹で加減に高い技術が求められることで知られています。
Q2:「ノックアウトステージ」とはどういう意味ですか?
A:FIFAワールドカップにおける決勝トーナメントのことです。グループステージを勝ち抜いたチームが一発勝負で対戦し、負けたチームはその時点で大会から敗退します。
(本稿のポイント、リード、FAQの文責:Japan In-depth編集部)
■ シリーズ・アーカイブの紹介
本連載は、スポーツを切り口に、ビジネスやテクノロジー、社会構造の変化を読み解く松永裕司によるコラムです。個別の競技やイベントを超えて読み進めることで、現代社会におけるスポーツの意味と役割を立体的に理解することができます。
トップ写真:写真:キッズ向けスポーツ教室「UNIQLO ICHIRO DREAM FIELD DAY」の様子(筆者提供)
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この記事を書いた人
松永裕司Forbes Official Columnist
NTTドコモ ビジネス戦略担当部長/ 電通スポーツ 企画開発部長/ 「あらたにす」担当/東京マラソン事務局初代広報ディレクター/「MSN毎日インタラクティブ」プロデューサー/ CNN Chief Directorなどを歴任。
出版社、テレビ、新聞、デジタルメディア、広告代理店、通信会社での勤務経験から幅広いソリューションに精通。1990年代をニューヨークで、2000年代初頭までアトランタで過ごし帰国。

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