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スポーツ  投稿日:2026/7/12

森保ジャパンが示した組織の「団結力」の正体~日本経済をターンアラウンドする!36


執筆:西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)

 

【本稿のポイント】

・森保監督のマネジメントスタイルは組織マネジメント論の観点から示唆に富む。

・組織力は「ビジョン・ミッション・経営戦略」「構造・役割」「マネジメント」「組織・人事」「風土・文化」の5領域に構造化でき、そのチェックリストに照らすと森保ジャパンは組織力として高い水準を満たしていた。

・「誇り」「責任」「礼節」「団結」「覚悟」という理念に基づく団結力こそが森保ジャパンの源泉だったが、戦術面での「合理性」に課題を残した。

 

W杯北中米大会でブラジルに敗れた森保ジャパン。しかし、その後も続投が決まった森保一監督のマネジメントスタイルは、組織マネジメントの観点から示唆に富む。本稿では、組織力の5領域(ビジョン、構造、マネジメント、組織・人事、風土・文化)の視点から森保ジャパンを診断するとともに、「誇り・責任・礼節・団結・覚悟」の理念に基づく組織の団結力の正体を、経営コンサルタント・人材育成コンサルタントであり、NPO法人日本公共利益研究所代表の西村健氏が経営学的に読み解く。(Japan In-depth編集部)

 

ワールドカップの日本サッカー代表、ブラジルに敗戦。欧米の強豪チームで活躍していた選手が多くなった「史上最強」のチームとして、かなり期待されたが、残念ながらベスト36で終わり、目標は達成できなかった。しかし、森保一監督は「そこそこよくやった」という評価であろうか、続投についても歓迎ムードである。

 

組織マネジメントの専門家からすると、森保さんのマネジメントスタイルは非常に興味深い点が多い。

・各戦術はコーチ陣に任せ、役割分担、意思決定と全体の雰囲気づくりに徹する

・礼節を尽くし、寄り添う「誠実さ」重視の人間力マネジメント

・コーチにしても世代がまんべんなく、ボス的な名波浩さん、知的な斎藤俊秀さん、知的な前田遼一さん、圧倒的な経験と分析力を持つ中村俊輔さん、欧州での経験とリーダーシップが評価の高い長谷部誠さんら多彩なメンバー

・経験者や過去を知るメンバーを兄貴分的な役割(メンターなど)として引き入れて、監督・コーチ陣と選手の間の距離・コミュニケーションをとるルートを確保

といった点だ。森保一監督はテレビでこう発言した。「組織は個から成り立っている。個を尊重して、そこで選手が力を発揮、成長できるように、目標をはっきりすることが一体感になるかと思っている」(news zeroでの発言)という点も注目すべき点であった。その個の尊重による団結とその「組織力」。その正体と意味を探る。

 

組織力とは?

日本社会、企業・団体の組織の「組織力」は日本の「奇跡的」な近代化と戦後復興を支えたと言っても過言ではない。同質的なメンバーが「空気」を読み、「和をもって」「滅私奉公」をするモデルであった。新卒一括採用と終身雇用が生んだ家族的チームワーク志向など日本の組織力は昭和時代は非常に評価をされ、特に、日本企業における「隠れた組織能力」として、危機時の結束力、現場の改善力、他部門との協調のしやすさなどが企業価値の飛躍につながったと言われていた。しかし、欧米に追い付け追い越してしまって以降は、その組織にも疑問の目が向けられている。特に、平成になってからの「失われた30年」、組織に言うと、部分最適化、縦割りによる硬直性、個の裁量性や自由を認めない組織風土などゆえに、企業の競争力が落ち、イノベーションが進まない、新陳代謝が進まないなどの問題が指摘されている。

 

しかし、国際比較すると「組織力の弱体化」と「依然として相対的に強い側面」が併存しているというのがより実態に近い評価のようだ。特に日本企業の濃密な人間関係に基づくチームワークや、阿吽の呼吸・根回しによる協働のしやすさは依然として強みだという評価もある。

 

森保ジャパンの組織力を診断!

長年、組織のために個人が滅私奉公するスタイルは「日本の強み」とされてきたが、現代社会では個人の尊重と全体の利益をどう両立させるかが大きなテーマとなっているのが現代の特徴でもある。その意味で、「個の尊重」を掲げる組織と言うのは新たな時代に即している。

 

経営学的にまとめていこう。組織力の基本的な定義としては「従業員の団結や連携によって発揮される「実行力」「推進力」ということになる。つまり、組織が共通の目標に向かって効率的かつ協調的に活動する能力で、それが一定程度満たされるかどうか、その状態のことである。

 

組織力は

◆ビジョン・ミッション・経営戦略

◆構造・役割

◆マネジメント

◆組織・人事

◆風土・文化

という領域に構造的に分類できる。

【出典】筆者作成

 

さらに、上記のような構造的な領域で構成され、それぞれの領域における条件としては、

 

◆ビジョン・ミッション・経営戦略

□明確なビジョンやミッション、経営戦略が共有され、浸透している

□長期的な方向性が明確で、戦略に基づいた意思決定が実行されている

◆構造・役割

□権限や責任、意思決定プロセスが整理され、現場が動きやすい構造になっている

□役割分担が適切で、最適な体制・組織配置がされ、機能している

◆マネジメント

□目標達成に向けてリソースを配分し、柔軟に改善

□環境変化への柔軟な対応力と意思決定のスピーディーに行われ、軌道修正

□経営層から現場までの強いリーダーシップの指示命令とボトムアップの情報提供・提案

□活発なコミュニケーションと良好な人間関係が保たれて、相互の協力が行われている

◆組織・人事

□人間関係が良く、意見・提案・失敗が許容される環境

□必要な能力を持つ人材が適材適所に配置され、育成が機能

□個々の能力・適性を活かす人事配置・育成や制度・仕組みが定着

◆風土・文化

□信頼、協力、挑戦を促す価値観が浸透している

□価値観と行動が結びつき組織と個人の未来が調和している

 

このようにチェックリストが出来上がる。よく見てみよう。これで見ると、森保ジャパンはほとんどチェックがつくだろう。組織力としては完璧であったわけだ。

 

森保ジャパンのほんとの凄さ

森保さんの組織としての一体感を動かした根底にあるのは、その理念である。日本代表のアイデンティティは「誇り」「責任」「礼節」「団結」「覚悟」。

 

定義を考えてみると・・・

誇り:自分の能力や実績、あり方に対して自信を持つこと

責任:自分の行為や引き受けた任務の結果について責めを負うこと、または特定の義務や役割

礼節:相手への敬意や思いやりの心に基づき、状況や相手に応じて適切な言動をとる「礼儀」と「節度」

団結:多くの人が同じ目的を達成するために、心を一つにして力を合わせる

覚悟:困難や危険、悪い結果をあらかじめ予測し、それを受け入れて心構え

 

こうした理念に基づく「団結力」こそ森保ジャパンのチカラの源泉だったと思う。一つ足りなかったのは、戦術面での「合理性」だったのかもしれない。この点、修羅場における対応能力、つまり、戦術変更の徹底やその指示のあたりは私の周りのサッカーのコーチング経験者からは課題と指摘がされていた。

 

さて、森保さんが続投とのことであるが、戦術面にたけたコーチが入閣してもらえるとさらに強くなると思われる。森保ジャパンと日本サッカー協会やサッカーにかかわる人たちに期待する。

 

【よくある質問(FAQ)】

Q1. 森保一監督とは誰か?

A1. サッカー日本代表監督。1968年生まれ、静岡県出身。現役時代はマツダSC・サンフレッチェ広島などでMFとして活躍し、1992年アジアカップ優勝メンバー。指導者としてはサンフレッチェ広島でJ1リーグ3度の優勝を果たし、2018年に日本代表監督に就任。2022年カタール大会、2026年北中米大会と2大会連続でW杯本大会を指揮した。

 

Q2. 森保ジャパンの2026年W杯北中米大会の成績は?

A2. 日本代表は、グループFでオランダ、スウェーデン、チュニジアと同組となり2位で通過。2026年6月30日、決勝トーナメント1回戦(ラウンド32)でブラジル代表と対戦し、佐野海舟のゴールで先制したものの、後半アディショナルタイムに勝ち越しゴールを許して1-2で敗戦。3大会連続で決勝トーナメントに進出したが、悲願のベスト16進出には届かなかった。

 

Q3. 「日本代表アイデンティティ」(誇り・責任・礼節・団結・覚悟)とは何か?

A3. 日本サッカー協会が2018年12月に策定した、日本代表が大切にすべき共通の価値観。キーワードは「誇り・責任・礼節・団結・覚悟」の5つで、ステイトメントは「日本代表、それは夢の舞台で躍動する集団 日本の代表として戦う誇りを心に刻み 勝利を目指してひとつに団結する すべての関わりに対して感謝し 日本中の応援を力に変えて、世界に挑み続ける」。日本代表選手、ナショナルコーチングスタッフ、チームスタッフなど、日本代表に関わる全ての人が共有すべき価値観として位置付けられている。

 

Q4. 森保一監督はなぜW杯敗退後も続投することになったのか?

A4. 日本サッカー協会が非公式に打診し、森保監督が受諾したことで続投の見通しとなった。契約期間は2027年1〜2月に開催されるアジアカップサウジアラビア大会終了までの半年程度の異例の短期契約で、来年3月以降は新監督に交代する方針とされる。宮本恒靖JFA会長は取材に対し「そのための準備を進めていくことになる」と述べたと報じられている(読売新聞、日刊スポーツ等)。

 

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(本稿のポイント、リード、FAQの文責:Japan In-depth編集部)

 

トップ写真:ブラジル対日本の試合で敗れた後の森保一監督と佐野海舟選手 2026年6月29日・アメリカテキサス州ヒューストン

出典:Photo by Pablo Morano/BSR Agency/Getty Images




この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者

経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家


NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。


慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。


専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。

西村健

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