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.国際  投稿日:2026/8/10

韓国株式市場暴落が李在明政権を直撃


執筆者:朴斗鎮(コリア国際研究所所長)

 

■本稿のポイント

・韓国世論調査機関「メディアトマト」の8月6日発表の調査で、李在明大統領の国政運営に対する否定評価が48.5%と、肯定評価47.7%を初めて上回った。

・支持率下落の主因は「選挙管理委員会の不正」「不動産の高騰」「株式の暴落」で、特にKOSPIが7月に33%下落したことが中道層の李在明離れを加速させている。

・暴落の主な原因は李在明政権が導入を主導した「単一レバレッジETF」にあり、政策室長・金ヨンボム氏が積極的に販売を推し進めた。李大統領には直接・間接両方の責任がある。

 

韓国の李在明大統領の支持率が急落している。長年、朝鮮半島情勢の分析にあたってきたコリア国際研究所所長の朴斗鎮氏は、8月6日発表の世論調査で否定評価が肯定評価を上回った事実、7月に高値から一時40%暴落したKOSPI、そして政権が主導した「単一レバレッジETF」の危険性を指摘。株式市場活性化を国政基調に掲げて国民に「家を売って株を買え」と受け止められるメッセージを発してきた李大統領の直接・間接の責任を読み解く。(Japan In-depth編集部)

 

◆なぜ李在明大統領の支持率は急落したのか

 韓国・李在明大統領の支持率が急落している。8月6日に韓国世論調査機関「メディアトマト」が発表した世論調査結果(満18歳以上全国成人男女1037人を対象に8月3日から4日まで二日間実施)によると、李在明大統領の国政運営に対して、全回答者の48.5%が否定評価を、47.7%が肯定評価を下した。否定が肯定を上わまったのだ。否定評価は43.6%から48.5%に4.9ポイント上昇し、肯定評価は、先週の51.7%から47.7%に4.0ポイント下落した。リアルメーターが7月27~31日に行った世論調査でも、肯定評価は45.9%で3週連続の下落となり、就任後最低を記録していた。 

 年齢別にみると、20代は肯定33.9%否定59.0%、30代は肯定36.6%否定61.0%と否定が肯定を上回った。一方40代以上では肯定が否定を上回った。40代では肯定53.2%否定45.7%、50代では肯定59.3%否定38.5%、60代は肯定49.1%・否定48.2%、70歳以上肯定は49.5%・否定42.5%だったった。

 下落の主な要因は、「選挙管理委員会の不正(不正選挙)」、「不動産の高騰」、「株式の暴落」にあると分析されている。特に直近の韓国総合株価指数(KOSPI:コスピー)が、高値から一時40%暴落(7月30日)したことで、中道層の李在明離れが加速化している。

◆賭博場と化した韓国株式市場

 韓国株式の暴騰・暴落に対して、外信は、「韓国の株式投資が賭博になった」と報じた。

 ブルームバーグ通信は「コスピー指数が7月に入り市場最大の水準である33%も下落した。韓国の個人投資家の間で、絶望と挫折感が急速に拡散している」

 英国のエコノミストは「韓国の投資家たちには、実に波乱万丈の旅程であった」としながら、投資家たちに対して”衝動的博打打ち“」と表現した。

 暴騰・暴落の主な原因は、李在明政権が主導した「単一レバレッジETF」にあった。

 *韓国の「単一(シングルストック)レバレッジETF」は、特定の個別株1銘柄(サムスン電子やSKハイニックスなど)の日次(1日ごと)の値動きの±2倍に連動するように設計された上場投資信託

 この仕組みは、株価が上昇すればさらに買い増し、下落すれば売り増してポジションを維持する仕組みとなっていたために、株価の変動が通常の2倍極端な動きとなった。

 韓国の投資家たちはこの危険極まりない商品にあまりにも深く溺れた。金融当局が、遅まきながら規制をかけたとしても、すでに「賭博場」に入った韓国投資家たちを外に連れ出すのは困難な状態となっている。

 野党国民の力のある議員は「李在明大統領は国政運営を経済ユーチューブのようにしてきた。その間、大韓民国の国民は、知らずしらずのうちに李在明大統領が運営する巨大な“リーディングバン(株式相場を予想するサイト)”の被害者になっている」と非難した。

◆直接責任は李在明大統領にある

 この事態をもたらした責任は、李在明大統領にある。世界の株価変動を考えた場合、すべてが大統領李在明にあったとは言えないが、株式市場に国民を誘導したり、「単一レバレッジETF」のような「賭博的システム」導入を促したりして被害を極大化させたのは、間違いなく大統領の李在明だった。

 自身を大物個人投資家と自認するほど株式に対する関心が高かった李在明大統領は、大統領選挙当時に、「コリアディスカウント」の解消を通じて「KOSPI5000時代」を公約に掲げていた。

 執権後も李在明大統領は「不動産に溜まっているお金を金融市場に移さなければならない」と幾度も強調し、株式市場活性化を通じて不動産に偏る資金を株式市場に誘導するという国政基調を維持した。これは投資家に「家を売って株を買え」というメッセージと受け止められた。与党「共に民主党」もKOSPIが高値を更新するたびに、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権時代の株価と比較し「李大統領の国政に対する信頼のおかげ」と自画自賛した(中央日報:2026・8・3)。

 昨年の7月就任30日の記者会見では「私の思い通りにはならないが、これからは、(資金を)不動産よりも金融市場に移すのがはるかに良いのではないか、そういう考えをしていいる」と発言し、9月には証券会社リサーチセンター長と昼食懇談会を開いたが(史上初)、これも証券市場に資金を投入せよとの意向を伝えるために設けた場であったと見られる。実際にそこで李在明大統領は「話したでしょ。劇場(株式市場)脱出は知能順だと。これを早く劇場復活は知能順だとの言葉が復活するようにしなければならない」と語っていた。

 今年の5月はじめからは、「譲渡税増加猶予措置が5月9日に終わる」としながら、何度も不動産税の話をし、(資金を)不動産から金融市場に移さねばならないと強調した。

 このいくつかの事実を見ても、韓国株式市場の現況は、李在明大統領が作り出したもので、李大統領に直接的責任があると言える。

◆間接責任も李在明大統領にある

 李在明大統領には直接責任だけでなく間接責任もある。それは大統領の意向を忖度して、大統領の政策室長である金ヨンボムが、韓国証券市場を恐慌状態にした主犯「単一レバレッジETF」を積極的に導入したことだ。政策室長は「単一レバレッジETF」を今年の1月から4月まで絶えることなく求めて積極的に支えた。

 大統領の第一参謀と言える政策室長が、「単一レバレッジETF」という金融商品を強圧するかのごとく求め販売したことで現在のパニックが起こっているのに、いまだに責任を取らずにいる。大統領に同行した南米では、「世界の株価が与えた影響だ」などと弁明していたが、与党勢力からも批判が強まっている。

 一角ではこの証券市場活性化政策は地方選挙用であったのではとの声も聞かれる。政権の危機と指摘する人たちもいる。李在明支持核心層の40代50代が最も被害を受けているからだ。

 韓国株式市場の混乱は、金融当局の規制などによって和らぎつつあるが、しかしこの間に莫大な損失を被った一般投資家は数しれない。「精神健康医学科専門医のパク・ジョンソク院長は、ラジオ番組で「株式投資を理由に訪れる新規患者が非常に増えた。投資依存や損失、株式うつを訴える人が多いと語った(KOREA WAVE:2026・8・5)」。

 

【よくある質問(FAQ)】

Q1. 李在明大統領とはどんな人物か?
A.韓国第14代大統領(2025年6月4日就任)。1963年生まれ、慶尚北道安東市出身。城南市長、京畿道知事を歴任し、共に民主党代表として2022年の大統領選挙に立候補、尹錫悦氏に僅差で敗北した。2024年12月の非常戒厳宣布事件を受けた尹錫悦大統領の弾劾・罷免に伴う繰上げ大統領選挙で当選した。

Q2. 韓国総合株価指数(KOSPI)とは何か?
A.韓国取引所(KoreaExchange,KRX)が算出・公表する韓国株式市場の代表的な株価指数。1980年1月4日の時価総額を100として算出され、韓国株式市場全体の動向を示す。サムスン電子、SKハイニックス、LG化学など、韓国を代表する大企業が構成銘柄に含まれる。

Q3. 「コリアディスカウント」とは何を指すのか?
A.韓国株式市場が同水準の企業業績や指標を持つ他国の株式市場と比べて低く評価される現象を指す。原因としては、企業のガバナンス問題(オーナー一族による支配、少数株主軽視)、南北朝鮮の地政学的リスク、配当性向の低さなどが指摘される。韓国金融委員会は2024年から「企業バリューアップ・プログラム」を通じてコリアディスカウント解消を政策目標として掲げている。

Q4. レバレッジETFの投資リスクとは何か?
A.レバレッジ型ETFは、日々の値動きの一定倍数を目標とする商品設計上、中長期の投資には向かないとされる。具体的には、原資産の価格が上下に変動を繰り返す「レンジ相場」では、レバレッジがかからない場合よりも運用成果が悪化する「減価」現象が発生する。相場が反対方向に大きく動いた場合、投資元本を大きく毀損するリスクがある。

Q5. 韓国大統領の支持率世論調査はどのように実施されているか?
A.韓国では複数の世論調査機関が定期的に大統領の支持率調査を実施している。主要な調査機関には、韓国ギャラップ(Gallup Korea)、リアルメーター、メディアトマトなどがあり、それぞれ独自の方法で週次・月次の調査を発表している。調査方法(電話面接式・ARS式)や質問文により結果に差が出るため、複数の調査結果を比較して傾向を把握することが一般的である。



(本稿のポイント、リード、FAQの文責:Japan In-depth編集部)

 

■シリーズ・アーカイブの紹介

本連載は、朝鮮半島の政治・外交・安全保障を専門とするコリア国際研究所所長・朴斗鎮によるコラムです。北朝鮮の内部構造や権力体制の変遷を独自の視点で読み解くことで、日本のメディアでは見えにくい朝鮮半島の実像に迫ります。

▶︎[朴斗鎮氏による記事バックナンバーはこちら

 

トップ写真)チリ・サンティアゴのラ・モネダ宮殿で、ホセ・アントニオ・カスト大統領との作業会談後に記者会見に臨む韓国・李在明大統領

出典)Photo by Sebastián Vivallo Oñate/Agencia Makro/Getty Images

 








この記事を書いた人
朴斗鎮コリア国際研究所 所長

1941年大阪市生まれ。1966年朝鮮大学校政治経済学部卒業。朝鮮問題研究所所員を経て1968年より1975年まで朝鮮大学校政治経済学部教員。その後(株)ソフトバンクを経て、経営コンサルタントとなり、2006年から現職。デイリーNK顧問。朝鮮半島問題、在日朝鮮人問題を研究。テレビ、新聞、雑誌で言論活動。著書に『揺れる北朝鮮 金正恩のゆくえ』(花伝社)、「金正恩ー恐怖と不条理の統治構造ー」(新潮社)など。

朴斗鎮

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