サウジ東西パイプライン停止 本当に揺らぐのはサウジの国内情勢か
宮家邦彦(キャノングローバル戦略研究所理事・特別顧問)
宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2026 #37
2026年9月14-20日
【本稿のポイント】
・米同時多発テロから25年。筆者は「国際テロの時代が終わったと考えるのは尚早」だとみる。
・9月13日の沖縄県知事選を受け、筆者は沖縄県政が遂に「本土並み」になったのではないかという仮説を示す。
・サウジアラビアの東西パイプラインが止まり油価が急騰した。筆者の最大の懸念は原油価格ではなくサウジの国内情勢である。
先週~今週の筆者の関心事は9月11日の米同時多発テロ25周年と、13日の沖縄知事選挙だ。前者については先週金曜日のプライムニュースで、後者については今週月曜日の真相ニュースでそれぞれコメントする機会があった。だからという訳ではないが、どちらも実にタイムリーで興味深い内容の番組だったと思う。
まずは同時多発テロから。9.11から四半世紀経つが、あの悲劇的事件についてはキヤノングローバル戦略研究所の辰巳由紀主任研究員が今週の「デュポンサークル便り」で詳しく書いている。彼女の言う通り、当時アメリカには、良くも悪くも、「古き良きアメリカ」が残っていた。今のワシントンとは大違いなのだが・・・。
9.11についてはキヤノングローバル戦略研究所が毎月発行する「ハイライト」の巻頭言で筆者の思いを書いた。発行は10月号になるので、ここではサワリだけご紹介しよう。辰巳主任研究員の言う通り、毎年9月11日になると、多くのアメリカ人は、「君はあの事件が起きた際、どこで何をしていたか」という話題で一日が始まる。
・・・・では、あのとき筆者はどこにいたか。当時は北京の日本大使館で文化広報を担当していた。・・・悲しかったのは、中国人の友人の一言だった。翌日、事件の話をしたらその人物は「ざまぁみろ、当然だ」と言ってのけた・・・・もう一つ外務省時代に思い出がある。1997年秋だったか、・・・筆者は同僚と共にターリバーンの本拠地カンダハールを訪れ・・・・ある大邸宅がオサマビンラーディンの住居だと知らされた。9・11事件が起きたのはその4年後。だが当時、まさか、あのオサマが大事件を起こすとは思いもしなかった・・・
色々書いたが、結論は単純。「国際テロの時代が終わったと考えるのは尚早」だということである。25年なんて人類史の中ではほんの一瞬。人間はそれほど進歩しないのだ。今のままでは、いつか米国で大きなテロ事件が起きるのではないかと、本気で心配している。この予感が外れることを心から祈っている。
続いては、もう一つの関心事項である沖縄県知事選挙について。今週の産経新聞WorldWatchには沖縄県政が遂に「本土並み」になったのでは・・・という内容のコラムを掲載する予定だ。全文は今週木曜日に掲載されるので、これも「サワリだけ」ご紹介することにしよう。ちなみに筆者、沖縄への愛着は人一倍強いと自負する。
・・・私事ではあるが、筆者の岳父は沖縄返還交渉当時の外務省北米一課長、筆者も地位協定課首席事務官、日米安保条約課長として沖縄を担当した。更には、義理の娘も石垣出身・・・、・・・その筆者が今回改めて思うのは沖縄が徐々に変化しつつあるという仮説である・・・。
1990年代以降、日本を含む世界の主要民主主義国内では経済格差が拡大し、「忘れ去られた人々」の不満と怒りが保守的な民族主義ポピュリズムに流れていったが、・・・その唯一の例外が沖縄だった。世界的潮流とは別の政治力学が働く沖縄では、つい最近までいわゆる既存の左派・リベラル・革新陣営を中心とする「オール沖縄」が優勢だったからだ。だが、最近遂にその状況は本土と同じ理由で変わり始めたのではないか・・・
ご関心ある向きは今週木曜日の産経新聞をご一読願いたい。
さて、通常なら次は、吉岡明子主任研究員によるロシア関連コーナーだが、今週はお休みさせて頂く。続いては、いつもの通り、欧米から見た今週の世界の動きを見ていこう。欧米の外交専門家たちの今週の関心イベントは次の通りだ。
9月15日 火曜日 イラク首相の訪独
9月16日 水曜日 欧州委員会委員長、年次欧州情勢演説
ルワンダとコンゴ民主共和国が停戦交渉再開(2日間、7回目)
9月17日 木曜日 カナダ首相、欧州議会で演説
伊首相のノルウェー訪問
欧州理事会議長のアイルランド訪問
9月18日 金曜日 フィリピンがASEAN経済大臣会合を主催
9月20日 日曜日 ロシアで議会選挙
ノルウェー首相のカナダ訪問
最後はガザ・中東情勢だが、今週もホルムズ海峡をめぐる状況は変わらない。それどころか、サウジがペルシャ湾から紅海に抜ける東西パイプラインの運用を停止したことで、先週あたりから再び油価が急騰している。ヤンブーパイプラインが止まるのは、確か2度目だが、今回の方が被害は大きいかもしれない。サウジは東西パイプラインによる原油輸出が難しくなったので、文字通り「泣きっ面に蜂」ではないか。
勿論、原油価格の行方も気になるが、筆者の最大の懸念はサウジの国内情勢である。勿論「お金持ち」の国だからこの程度の被害で直ちに傾くことはないだろう。しかし、こんな状態が長引けば、必ず内政面で問題が生じるはず。そうなれば、背に腹は代えられないサウジが迷走し始める可能性も高まる。中長期的な問題かもしれないが、「サウジの安定を揺るがしているのはトランプ政権」ということになると、事態は深刻である。
いずれにせよ、先週も書いた通り、イランは「少なくとも米中間選挙までは戦い続け、むしろ防戦から攻勢に移行しつつある」だろうから、事態の早期改善は見込めない・・・だろうなぁ・・・。今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きは今週のキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
トップ写真:サウジアラビアのリヤド近郊砂漠におけるパイプライン建設の航空写真の写真素材
出典:Leonid Andronov / GettyImages
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この記事を書いた人
宮家邦彦立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表
1978年東大法卒、外務省入省。カイロ、バグダッド、ワシントン、北京にて大使館勤務。本省では、外務大臣秘書官、中東第二課長、中東第一課長、日米安保条約課長、中東局参事官などを歴任。
2005年退職。株式会社エー、オー、アイ代表取締役社長に就任。同時にAOI外交政策研究所(現・株式会社外交政策研究所)を設立。
2006年立命館大学客員教授。
2006-2007年安倍内閣「公邸連絡調整官」として首相夫人を補佐。
2009年4月よりキヤノングローバル戦略研究所研究主幹(外交安保)
言語:英語、中国語、アラビア語。
特技:サックス、ベースギター。
趣味:バンド活動。
各種メディアで評論活動。

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