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.社会  投稿日:2026/9/29

ミガキイチゴ1粒1,000円の理由 岩佐大輝氏が語る震災後の挑戦



 

【本稿のポイント】

・岩佐大輝氏は、震災の年までIT企業を経営していたが、津波で壊滅した故郷の山元町に戻り、復興のためにGRAを立ち上げた。

・ミガキイチゴは形、大きさ、甘さ、味の基準で4段階に選別され、最高ランクのプラチナは1粒1,000円とされる。

・岩佐氏は、新規就農を支える学校の運営や、農業を暮らしに取り入れる時代の到来についても語った。

 

「1粒1,000円のイチゴ」と聞いて、驚く人は多いだろう。宮城県山元町で「ミガキイチゴ」を育てる株式会社GRAの岩佐大輝代表取締役CEOは、震災の年までIT企業を経営していた。なぜ故郷でイチゴを選び、「食べる宝石」というブランドを築いたのか。
本稿は、Japan In-depthチャンネルで2026年9月25日に配信した「NEXT Innovators 新世代の革新者たち」第3回、岩佐大輝氏へのインタビューをもとに、主要論点を整理したものです。

なぜIT経営者は、震災後の山元町でイチゴを選んだのか?

震災の年までIT企業を経営していた岩佐氏は、津波で壊滅した故郷の山元町に戻り、復興に取り組もうと株式会社GRAを立ち上げたと語った。その象徴として選んだのがイチゴだった。

山元町は、古くからイチゴの産地だという。岩佐氏によると、震災後にボランティアとして町民にアンケートを取り、「誇りは何か」と尋ねたところ、イチゴと答えた人が参加者の7割にのぼった。岩佐氏は「復興するためには、象徴的なものをもう一度盛り上げるべきだと思っていた」と当時を振り返る。

GRAは、「総合的な復興」を掲げるNPO法人として起業したのが出発点だったと、岩佐氏は説明した。キャッチフレーズの「食べる宝石」は、岩佐氏を中心とするブランドチームで考えたもので、10年前から変わっていないという。

4:01 IT経営者が震災後に山元町へ戻った理由

ミガキイチゴの「1粒1,000円」は、どのように成り立っているのか?

ミガキイチゴは、プラチナ、ゴールド、シルバー、レギュラーの4段階に選別されており、最高ランクのプラチナが1粒1,000円だとされる。

岩佐氏によると、プラチナは形、大きさ、甘さ、味のすべてが最高のものだけを選ぶ。シルバーやレギュラーは、形はやや小さくても味の良いイチゴだという。

品質の確認は、収穫の場所と日ごとにサンプリングして測定したうえで出荷する方式だと岩佐氏は述べた。ミガキイチゴを箱に詰められるのは基準を理解した「認定社員」で、選別も担うという。

栽培は土ではなく、水と肥料を含む液を流すベンチの上で行う。岩佐氏は、床を高くしたこの方式は作業する人の負担が軽く、面積あたりの効率も高いと説明し、品質は「圧倒的に安定しますね」と語った。太陽光を利用する施設で、気温は制御するという。

10:10 1粒1,000円のプラチナと4段階の選別

ミガキイチゴアカデミーは、「10年の修行」をどう変えたのか?

GRAは、新規就農支援の学校「ミガキイチゴアカデミー」を運営している。

イチゴ農家になるには10年、20年の修行が必要だと言われてきたが、2年間で卒業した人は「ほとんど我々と変わりない品質」で育てられるようになるという。岩佐氏はその理由を、工業化とマニュアル化、形式知化だと説明した。

卒業生は全国に散らばっているという。一方で、ハウスが高いため、独立する人は少なくなっているとも述べた。

24:46 イチゴ農家の「10年の修行」を2年に

生産のほかに、GRAはどのような事業を展開しているのか?

岩佐氏は、生産販売を柱に、店舗、観光農園、輸出などへ事業を広げていると説明した。観光農園のミガキファームは山元町にあり、年間4万〜5万人が訪れるイチゴ狩り中心のテーマパークだという。番組では、30分の食べ放題で料金は2,000円台だ。

YouTubeなどを見て海外から訪れる人もいる。輸出は香港やシンガポールなどに広がり、ハイエンドのイチゴとして定着してきたという。

31:05 観光農園ミガキファームと海外輸出

農業を暮らしに取り入れる時代とは、どういうことか?

話は農業と暮らしの関係にも及んだ。岩佐氏は「生活、ライフスタイルの一つとして、農業をみんなが取り入れる時代が、おそらく近く来ると思います」と述べた。イチゴ農家の収入があれば、週末の田んぼづくりは採算を取る必要がない、というのがその理由だ。

岩佐氏は、都会で働く人にも農業を生活に取り入れることを勧めたいと語った。また、食べる側も売られているものの価格が本当にこれでいいのかと意識してほしいと訴え、日本の農産物は全部安いと思う、と述べた。

なぜ岩佐氏は、農業を「暮らしの一部」と考えるのか。価格をめぐる訴えは、生産者の現場とどうつながるのか。番組では、米や肥料の自給率、ハウスのエネルギーやパックの課題、島根・出雲での取り組みにも話が広がった。岩佐氏の言葉は、短い結論よりも、その根拠をたどることで意味が見えてくる。ぜひ本編で確認してほしい。

よくある質問(FAQ)

Q1 ミガキイチゴとは何ですか。

A1 株式会社GRAが手がけるイチゴのブランドです。公式サイトは「食べる宝石」と紹介し、「ミガキイチゴ・プラチナ」「ミガキイチゴ・ゴールド」「ミガキイチゴ・シルバー」「ミガキイチゴR」の等級を掲げています(ミガキイチゴ公式サイト)。

Q2 株式会社GRAはいつ設立されましたか。

A2 公式サイトの会社概要によると、設立は2012年1月17日です。所在地は宮城県亘理郡山元町です(株式会社GRA 会社概要)。

Q3 6次産業化とは何ですか。

A3 北海道庁は、農林漁業(1次産業)と製造業(2次産業)、小売業等(3次産業)の事業を総合的かつ一体的に推進し、農山漁村の豊かな地域資源を活用した新たな付加価値を生み出す取り組み、と説明しています(北海道庁 6次産業化)。本番組の概要は、ミガキイチゴの事業展開をこの言葉で紹介しています。

Q4 岩佐大輝氏の肩書きは何ですか。

A4 株式会社GRAの公式サイトは「代表取締役CEO」と記載しています(株式会社GRA 会社概要)。武蔵野大学アントレプレナーシップ学部の教員紹介ページには、教授として掲載されています(武蔵野大学 教員紹介)。

Q5 山元町は東日本大震災でどのような被害を受けましたか。

A5 山元町の公表によると、津波の浸水面積は約24平方キロメートルで、町の総面積の37.2%にあたります。死者は637人(遺体未発見の死亡届16人と震災関連死20人を含む)です。家屋の全壊は2,217棟です(2013年5月24日現在。山元町 震災被害状況)。

関連リンク

▶ 本編動画で岩佐大輝氏の発言を全編見る

トップ写真:写真)岩佐大輝氏

ⒸJapan In-depth編集部

 




この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。

1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。

1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。

2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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