無料会員募集中
.国際  投稿日:2026/11/4

治安とエルニーニョ対策で成果出ず、支持率低下-ケイコ・フジモリ政権100日


執筆:山崎真二(元時事通信社外信部長)

【本稿のポイント】

・ペルーのケイコ・フジモリ政権への支持が治安対策への批判などから減少。

・経済界ではケイコ支持が多いが、現地主要紙の評価は厳しい。

・外交面では対米接近が目立つ。

ペルーのケイコ・フジモリ大統領が就任から100日を迎えた。支持率は一時の57%から40%程度に低下し、最優先課題の治安対策やエルニーニョ対策への批判が強まっている。一方、経済界の評価は比較的高く、外交では「米州の盾」への正式参加など対米接近が目立つ。元時事通信社外信部長の山崎真二氏が、政権100日の成果と課題を読み解く。

◆57%から40%に低下-ケイコ氏の支持率

ケイコ・フジモリ大統領が7月末に就任してから100日が経過した。ケイコ氏の支持率は政権発足後に一時は57%に上ったこともあるが、最近の大方の世論調査では40%程度に低下している。これはケイコ氏が最大の優先課題としてきた治安対策で目立った成果が出ていないことが最大の要因だ。ケイコ氏は就任早々、リマ首都圏などに60日間の非常事態宣言を発令、街頭や交通機関に軍を配備、軍と警察の連携を強化する治安対策に着手した。

しかし、殺人事件や犯罪組織による企業などへの脅迫・恐喝行為は減っていない。ケイコ氏は当初、最初の100日間をメドに治安回復を目指すとしていたが、今では治安回復には5年間の任期1826日すべてが必要になると述べている。治安問題と並ぶもう一つの緊急課題としているエルニーニョ現象への対策ではケイコ大統領は就任直後に洪水や干ばつの被害軽減のため8億ソル(約400億円)の拠出を決定、各地の被災地を精力的に訪問。エルニーニョ対策のための「リスク国家管理委員会」を設立、各省庁の調整を迅速に行えるよう仕組みを変えた。だが、現地の専門家の間でペルー沿岸部を中心にエルニーヨ現象は年内は続くと予想される中、対策が不十分と批判する声が飛び交う。

◆「十分な統治能力ない」との世論調査も

主要企業や経済界ではケイコ支持が多い。ケイコ氏は財政規律を維持しながら投資を促進、インフラ整備での官民連携、中小企業の支援再開などに力を入れる方針を表明。日本の経団連に相当するペルー民間企業団体全国連盟(CONFIEP))の幹部は最近、現地有力紙とのインタビューで「現政権の経済運営の方向性と安定性は比較的良好である」と評価している。

実際、マクロ面でのペルー経済は順調で、ペルー情報統計局(INEI)の発表によれば、今年8月の経済成長率は前年同月比3.2%となり、29カ月連続のプラス成長を記録した。ただ、ペルー有力紙の現政権への評価は総じて厳しい。

例えば、最大の発行部数を誇る保守系の「コメルシオ」紙は10月下旬、「51%がケイコ氏が十分な統治能力を示していないと回答した」との世論調査結果を報じた。左派系の「レプブリカ」紙は、ケイコ氏の政策が期待外れの結果をもたらしているとし、政治姿勢がより強硬になっていると批判している。

◆「米州の盾」に正式参加

外交面では数々の変化が見られる。ペルーは、カスティジョ元大統領の憲法違反行為に関与したとされるチャベス元首相の亡命をメキシコが認めたことに反発、昨年11月から同国と断交していた。しかし、メキシコとの関係を重視するケイコ大統領は就任直後にメキシコとの外交関係再開を決定。

また、ペルー政府は9月初め、イランの「中東での紛争拡大」などを理由に同国との外交関係を断絶すると発表した。さらにケイコ氏は同月リマを訪問したルビオ米国務長官との会談で米主導の反麻薬組織連合「米州の盾」への参加を正式に表明した。ペルーがイランと断交したのはトランプ政権に配慮したためとの見方が有力で、このところペルーの対米急接近が目立つ。

一方、最大の貿易相手国の中国との関係にも気を遣う必要があり、ケイコ大統領は対米・対中のバランス外交で手腕が問われることになる。今月18、19日中国の広東省深圳市で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議への参加がケイコ大統領にとって本格的な外交デビューの場となりそうだ(了)

【よくある質問(FAQ)】

Q1:「エルニーニョ現象」とはどのような現象ですか?
A:太平洋の赤道付近で海面水温が平年より高い状態が続く現象で、ペルー沿岸部では洪水や干ばつなどの被害をもたらすことがあります。

Q2:「米州の盾」とはどのような枠組みですか?
A:米国が主導する、中南米諸国との治安・安全保障面での連携枠組みです。

Q3:「非常事態宣言」とはどのような措置ですか?
A:治安の悪化や災害などの緊急時に、政府が通常の統治では対応が難しい状況に対処するため、一定期間、特別な措置を取れるようにする宣言です。

Q4:「APEC(アジア太平洋経済協力会議)」とはどのような枠組みですか?
A:アジア太平洋地域の経済協力を目的とした国際的な枠組みで、毎年、首脳会議が開かれます。

(リード、中見出し、FAQの文責:Japan In-depth編集部)

写真:Keiko Fujimori Visits El Salvador
出典:Alex Peña / 特派員 / GettyImages




この記事を書いた人
山崎真二時事通信社元外信部長

 

南米特派員(ペルー駐在)、ニューデリー特派員、ニューヨーク支局長などを歴任。2008年2月から2017年3月まで山形大教授、現在は山形大客員教授。

山崎真二

copyright2014-"ABE,Inc. 2014 All rights reserved.No reproduction or republication without written permission."