軽EVの補助金に43万円差 BYD社長が語る参入の壁
執筆者:安倍宏行(Japan In-depth編集長)
【本稿のポイント】
・国の補助金一覧では、RACCOは15万円、日産サクラは58万円で、43万円の差がある。
・車両性能に加えて企業の取り組みを評価する制度が、新規参入企業には高いハードルになると語った。
・東福寺氏は、競合の参入を軽EVの比較検討が広がる機会と捉えている。
2026年末までの登録分に適用される国のEV補助金は、BYDの軽EV「RACCO」が15万円、日産「サクラ」が58万円。同じ軽EVでも43万円の差がある。BYD Auto Japanの東福寺厚樹社長は、10月20日配信のJIDチャンネル「THE EDGE」で、企業の取り組みを重視する評価と新規参入の難しさを語った。「これ、非関税障壁じゃないんですか?」。安倍宏行編集長の問いに、東福寺氏はどう答えたのか。
▶ 本編動画:2026年10月20日(火)15:00〜【THE EDGE】#01「日本の軽に挑む!RACCO開発秘話」ゲスト:BYD Auto Japan 代表取締役社長 東福寺厚樹氏
https://www.youtube.com/watch?v=pkYtzq9fB2Q(補助金をめぐる対談は22:10〜)
◆車の性能より、会社の評価が重くなる
「RACCOに限らず、全部のモデルが15万円になっておりまして」。東福寺氏は、配信時点のBYDに対する国の補助金について、こう話す。安倍編集長が車種による補助金の違いを取り上げ、「不公平な感じがする」と問いかけた場面だ。
東福寺氏によると、2023年に日本で乗用車の販売を始めた当初、バッテリーEVに対する補助金は65万円だった。その後、型式指定の取得で20万円が加算され、BYDのATTO 3やDOLPHINも一時85万円の補助を受けられたという。
ところが、評価の対象は車両性能だけではなくなった。会社として国の施策にどの程度貢献しているかが加わり、車と会社をそれぞれ半分ずつ評価する仕組みになったと振り返る。
「我々、会社の評価が非常に低い評価を受けてしまって」。東福寺氏は、それまで65万円、85万円だった補助金が35万円に減ったと説明した。さらに、会社の評価を重視する方向への変更があったと語り、会社の評価が低いBYDには、その変更が響いたとの認識を示した。
購入者から見れば同じEVへの補助でも、金額を左右するのは車の性能だけではない。日本でのメーカーの事業基盤も問われている。
次世代自動車振興センターが公表した10月30日現在の一覧でも、2026年末までの登録分ではRACCOの各グレードは15万円、サクラは58万円となっている。差額43万円は、購入者の車選びにも関わる。

図:軽EVの国の補助金(JIDチャンネル配信スライド)
出典:次世代自動車振興センター。金額は2026年末までの登録分。
◆「ゼロスタート」の企業には高いハードル
では、「会社の評価」には何が含まれるのか。安倍編集長が具体的な要素を尋ねると、東福寺氏は、販売台数に対して自ら設置した急速充電器の台数や、整備士の養成、学校の経営などを挙げた。
経済産業省の評価基準は、日本でEVなどが持続的に活用される環境をつくる観点から、充電インフラ整備や主要部品・重要鉱物の安定確保など、メーカーの取り組みを総合的に評価するとしている。
そのうえで、長年日本で事業を続けてきた国産メーカーであれば対応できる要件が多く含まれているとの見方を示した。「新規、BYDみたいにゼロスタートで、いろいろやっていく立場からすると、かなりハードルの高い」要件があるという。
充電や整備は、購入後にEVを使い続けるために欠かせない。だが、日本でこれから販売やサービスの網を広げようとする企業にとっては、事業の積み重ねを求められる評価が参入時の負担になる。東福寺氏が訴えたのは、その難しさだった。
そこで安倍編集長は、これは非関税障壁では無いか、との疑問をぶつけた。東福寺氏は「そう取られるところはあるとは思うんですけど」と応じた。新規参入企業にとって高い条件が、競争にどう影響するのかを問うやり取りだった。
◆補助金の差があっても、比較の土俵へ
一方、BYDが目指すのは、軽EVの購入候補として選ばれることだ。番組では競合の参入についても聞いた。東福寺氏は顧客を奪い合う面を認めながらも、軽自動車市場でのEV比率はまだ小さく、これからEVに乗り換える潜在顧客が多くいるとの見方を示した。
選択肢が増えれば、自分の暮らしに合うのはどの車か、使いやすいのはどちらか、実際に乗って比べる機会も増える。「比較検討していただける環境にもっともっとなっていくので、我々にとってもありがたい話」と述べた。
価格についても、東福寺氏は開発当初の考え方を明かした。航続距離200キロの車なら200万円、300キロなら300万円を想定することを、一つの目安にしていたという。実際の価格設定では、ベースのグレードを補助金適用後に200万円を少し下回る水準にできたと説明した。補助金の金額は、メーカーの事業評価であると同時に、購入者が最後にいくら支払うかにも関わる問題なのである。
補助金による支援と、メーカー同士の競争をどう両立させるのか。東福寺氏が示した新規参入企業の視点は、EV普及を支える仕組みを考えるうえで、一つの論点になる。
新規参入企業は、補助金の評価条件をどう受け止めているのか。22分10秒からの説明、そして25分13秒の「非関税障壁では」という問いへの応答を、ぜひ本編で聞いてほしい。補助金額の違いから始まり、日本市場での競争へと議論が広がる安倍編集長と東福寺氏のやり取りに注目していただきたい。
▶ 東福寺社長の説明と安倍編集長の問いを本編で見る:https://www.youtube.com/watch?v=pkYtzq9fB2Q(22:10〜)
【よくある質問(FAQ)】
Q1 RACCOと日産サクラの国の補助金には、どれほど差があるか。
A1 2026年10月30日現在の公式一覧では、2026年末までの登録分はRACCOが15万円、サクラが58万円で、43万円の差がある。
Q2 東福寺氏は、企業の評価項目として何を挙げたか。
A2 自ら設置した急速充電器の台数と販売台数の関係、整備士の養成、学校の経営などを挙げ、新規参入企業には難しい要件があると述べた。
Q3 東福寺氏は「非関税障壁だ」と断定したのか。
A3 断定していない。安倍編集長が質問し、東福寺氏は「そう取られるところはあるとは思うんですけど」と答えた。問答は本編25分13秒から。
本編の主な該当箇所
22:10 国のEV補助金と車種による違い
23:05 東福寺氏が語る補助金評価の変化
24:31 会社の評価に含まれる要件
25:13 「非関税障壁では」という質問
28:05 競合参入と比較検討への期待
関連リンク
本編動画:THE EDGE #01「日本の軽に挑む!RACCO開発秘話」
https://www.youtube.com/watch?v=pkYtzq9fB2Q
次世代自動車振興センター・補助金額一覧(2026年10月30日現在)
https://www.cev-pc.or.jp/hojo/pdf/R7ho/R7ho_meigaragotojougen_3.pdf
BYD Auto Japan・RACCO発売発表
https://byd-pr.jp/press/260727-press/
経済産業省・CEV補助金における評価の基準について(令和8年度)
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/automobile/cev/R7CEV_kijyun.pdf
(本稿のポイント、リード、FAQの文責:Japan In-depth編集部)
トップ写真:BYD Auto Japan 代表取締役社長東福寺厚樹氏©Japan In-depthチャンネル
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この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員
1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。
1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。
1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。
2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。












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